宵の帳に謡う蝶

@himagari

宵の帳に謡う蝶

「愛しています」

 

あなたがそう言ってくれてどれほど嬉しかった事か。それでも私は夜の蝶。この遊郭の籠に囚われた毒の花。


花弁で誘い、蜜で誘い、舞で誘い、儚さで誘う。

高嶺の花。空を舞う蝶。

私が望んだものでなくても私の値は高くなっていく。あなた以外人に触れられないよう、高く有らねばと思うほどあなたの手から離れていく。


今宵も落ちるは宵帷。


窓から姿を見せれば鮮やかに、艶やかに彩られた私を一目見ようと多くの人が集まって来る。その中に貴方を見つけた私の心の切なさを貴方は分かってくれますか。


私の後ろで戸が開き禿が客を連れて現れる。


貴方から離れなければならない私の涙を貴方はその目で見てくれますか。


望まぬ高嶺に明媚な体。貴方と共にはいられない。


それでも私は夜の華。


さて、今宵も私に釣られて現れた愚かな虫を誂ってあげましょう。

誰も私に触れられないよう。


いつかあなたが迎えに来てくれるその日まで。




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