青春の人
彩希 文香
プロローグ
第1話
卒業してから、もう十数年も経つというのに、今でもあの頃の日々をはっきりと思い出せる。校門に続く並木道、古びた校舎、日が差し込む渡り廊下、生徒たちの息使いが詰まった教室、幾度も書き消された黒板。そして…………。
恋とは呼べない感情を自分自身も、きっとあの人も抱いていた、何も根拠もないけれど、私は今でも本気でそう思っている。出会った時期が遅すぎた、あるいは、早過ぎただけで、いずれにしても互いの存在を知ってしまった二人は何かしらのテレパシーを感じ取ったに違いない。
瞼を閉じ、あの人の姿を思い浮かべてみる。鼓動は激しくなり、呼吸すら出来なくなってしまう。今頃、あの人は、どこで何をしているのだろう。叶わなかった想いは、どこまでも広がる夜空を駆け巡る流星のように彷徨い続ける。
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