第3話 下町の娼家

嗚呼、今生きてるんだ。幸せだ。


そう思えるようなギャラントな生の頌歌こそが、


放蕩でなくてなんであろう。


観念的なセカンド童貞が、ふとたずねた風俗店で、


久しぶりに女の肌に触れ目が潤んだとしても、


そのはかない快楽は、つかの間の射精に帰結するのみであった。


聖テレジアの恍惚は、聖化された愛欲だったんだろうか。


経済的な理由で縁が切れたカップルは、ともに過ごした時間は無駄だったといえるだろうか。


私は、愛の迷宮に入り込んでしまった。


重犯罪者が切り刻んだ死体は、ひとつのうめきも発さずにしんだんだろうか。


問いは続いていく。


砂漠に捨てていかれた一人の気品あふれる女は、たとえそこでしんだとしても、


永遠に男のこころにのこりつづけるだろう。


俗世を捨てて僧侶となった男の目に光があったなら、それは彼女のおかげだろう。



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