第14章
「これから実験を開始します。実験第1、熱エネルギー。注入開始。」
その声を合図に、手足を拘束しているベルトが熱くなってきた。
次の瞬間身体中が燃えるように熱くなった。
「なっ……!苦し…」
溶けてしまいそうなくらい熱い。
拘束ベルトから熱が流れ込んできている。
呼吸も苦しくなり、意識が朦朧としてきた。
「適合失敗。実験第1を終了します。対象の生存を確認。実験を続行します。」
今のはなんだ?
体内に熱湯を流されたような気分だった。
意識も朦朧として、このまま死んでしまうような気さえ感じた。
そんな僕のことはお構い無しに、実験は次のものへと進んでいく。
「実験第2、水エネルギー。注入開始。」
先程と同様に、開始の合図で今度はベルトがひんやりとしてきた。
カプセル内に水が流れ込み、すぐにいっぱいになった。
僕の体はあっという間に水の中に落ちた。
さっきの今で、身体がついていかない。
「…かっ……。」
息が続かなくなり、溺れる形になった。
体内に大量の水が流れ込んでいるように感じた。
このまま死ぬのか?
入口で出会った少女もこんな体験をして、耐えきれずに死んでしまったのだろうか。
こんな実験無くすべきだ。
僕みたいに自ら受けに来た者は仕方ないが、彼女たちは違う。もっと生きられたはずだ。
父さん、母さん、何も言わずにごめん。
エリー、フィン、本当のこと言えずにごめん。
僕もここで死ぬのだと思った。
朦朧とした意識の中、
「ナイを信じてる」
脳内にエリアの声が聞こえた。
ドクンッ
心臓が跳ねる音がした。
バリンッ
身体の中で何かが割れるような音がした。
僕はまだ何も出来ていない。
これから僕にできることを見つけたい。
僕はまだ死にたくない……!
そう強く思った瞬間、カプセル内の水がさらに冷たくなるのを感じ、僕は意識を失った。
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気がつくと僕はベットの上で眠っていた。
とりあえず死んでいないようだ。
「あ、気がついたかい?」
「…ヴェン?」
「そうだよ〜。まずは、成功おめでとう。やっぱり思った通りだったね。」
成功…
「僕は成功したのか?ネージュをつかえるようになったのか…?」
「そうさ、君は氷系のネージュみたいだ。系統の近い水エネルギーを注入されたことによって解放されたみたいだね。覚えてないかもしれないけど、カプセル内の水が全て凍って、君は氷漬けになっていたんだよ。」
「氷……」
最後に水が更に冷たくなったように感じたのは、凍ったからということか。
「凍ったカプセルはそのまま粉々に。君が意識を失ったことで、氷は溶けたけれどね。」
その後僕は眠っていたということだ。
「今日のところはゆっくり休むといい。まだ、万全じゃないだろう?」
「……他のジャムを受けた人達は?」
「彼らは成功者にはなれなかったよ」
彼の言葉を聞いてどうしても喜びきれなかった。
僕は合格した。
嬉しいはずなのに、気づくと涙が流れていた。
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