13日目「私の願い」
トントン
ノックが聞こえる。
みいは、狭い廊下を走って扉をそろそろと開ける。
「......どなたですか?」
みいは扉の外に出てあたりを見渡したが人の気配はない。
もう行ってしまったのかと思って急いで探しに行こうとすると、
バタンッ
みいは派手に転ぶ。
「いったたぁ、誰ですかこんなところに物をおいたのは!」
みいは膝をすりむいて少し涙ぐんでいる。
「あれ? これって箱?」
目の前には白くて四角いアンティークな感じの箱が転がっている。
「不思議な箱......」
みいが箱に手で触れるとたちまちあたりが強い光に包まれる。
目が覚めるとぼんやりと女の人の姿がみえる。それに少しだけ光っているようにもみえた。
「女神様みたい......」
みいはふと、昔お母さんに読んでもらった絵本に、金髪の美しい女神様が出てきたのを思い出した。
「女神様みたい。じゃなくて、私は正真正銘の女神よ。自己紹介が遅れたわね、私は幸福の女神。以後お見知りおきを」
みいは呆然としている。
女神は優しく手を振っている。
「大丈夫?意識がはっきりしない?」
ハッと我にかえる。
「ねえ、女神様? 私は死んだのですか?」
みいはおずおずと尋ねる。
「いいえ、死んでなんかいないわ。むしろあなたは今日から生まれ変わるのよ! 私の役目は民に幸福を与えることなんですから」
そう言ってその女神はみいに優しく微笑みかける。
「私が幸せに......? 一体何をしていただけるのでしょう?」
「そうね......私が適当に能力を付与しても構わないのだけれど、せっかくならあなたの望むようにしてあげたいわね。みい、あなたは何を望むの?」
突然のことにみいはみみをぴくぴくさせながらじっと考え込んでいる。
すると女神様は、
「そんな深く考えなくてもいいのよ? あなたの率直な願いが聞きたいの」
みいはふと口を開く。
「お母さま! お母さまにもっといい働き口が見つかってお給料ももらえるようにしてください!」
「人のために願わないで自分の好きなようにしていいのよ? これは、あなたの幸せなんだから」
女神がそういうと、みいはきっぱりとこう言い放った。
「私は何も望みません。家計が潤って普通の生活さえできればそれで幸せなんです」
女神は沈黙し、暫く静寂な時間が流れた。
それを打ち壊すかのように女神は口を開く。
「みい、悪いけどあなたの考えは甘いと思うわ。我が主が作り賜うたこの世界。人々は幸せになるために努力すべきなの。平穏を求めるだけではやがて......」
女神の姿が再びぼんやりとし始める。
「もう時間みたいね。私は貴方に一つ力を与えたわ。でもね、その力が何かは教えることができないの。あなた自身がこの力に気づいた時、本当の幸せがつかめるはずだわ」
「待ってください! 力ってなんですか、私の願いはどうなったんですか??」
女神はただ静かに微笑むだけだった。
「貴方が幸せとともにあらんことを......」
みいの意識は再びぼんやりと闇に溶けてゆくのだった。
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