第139話 今・揉めごと

内容証明郵便をようやく出した。


直前で、使ってはいけない文字を使っていたことに気がついたり、バタバタしてしまったけれど、何とか出した。

結構形式と言うものはめんどくさい。

一仕事終わった…と、出した直後は肩の荷下ろした気分だったけれど、今は少し気が重い。


他人と揉めるのは嫌なものだ。

本当に、一体、どうしてこんな嫌なことを好きでやっていると思うのか、不思議でならない。

そう、誤解でもしていなければ、あんな風に怒りはしないだろう。




他にどうすることもできない。

他人に頭を下げて、申し訳ないと謝って、頼むからそれを何とかしてくれと、言わなければならなかった。

本当に体がつらくて、家にいることもできない。

やっと買った家を、あきらめなければならないくらい、苦しくて苦しくて、他に方法がなかった。




そうじゃなければ誰がそんなことしたいものか。

ただの嫌がらせ、軽い気持ちで、あれをしてくれこれをしてくれと振り回している・・・そんなふうにどうして思えるの。

本当に本当に、心の底から、切羽詰まってなければ誰が人の家の機械を動かしてくれなんて頼みたいか。





想像力が少しでもあったらそんなことは思わないはず。

向かいの家の人は、悪人というわけじゃない。

それでも、想像力が足りないと思う。

目の前で、首でもつって見せないと、どれだけ切羽詰まっているか、わからないのだろうか。



本当に、心底、言いたくないことを、それでもそれでも、死ぬわけにもいかない、簡単に家を諦めるわけにもいかない、だから苦しんで、仕方なく言ったのだと、わからないんだろうか。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る