第109話 今・紫陽花
庭の紫陽花が咲き始めた。
何と言う種類か知らないけれど、青白い星のような花の咲く紫陽花だ。
まだ小さな星が、ちらちらと淡い光で瞬き始めたところだ。
自分の家を持ったら紫陽花を植えようと思っていた。
私が植えようと思っていた種類ではないけれど、これも綺麗で好きだ。
自分の家に住んだら椿も植えようと思っていた。
川口の家にあった昔ながらの赤い侘助と、ピンクの八重咲きの椿を。
でも椿もあった。
こちらも種類は少し違って、玄関前に赤い八重咲きの椿が咲く。
少しがっかりしたところで、赤の侘助も裏のほうに発見した。
こちらは日当たりが悪いせいか、あまりたくさんは咲かない。
八重咲きがピンクでなくて残念だけれど、まあいいか。
桜も植えたいなと思っていた。
ソメイヨシノは大きくなりすぎるので、園芸用の小さめの種類を。
梅が植わっていたので、それもなし。
桜は毛虫が多いし、かえってよかったかもしれない。
他にもさつきが何本か植わっている。
さつきはあんまり好きではないけれど、ツツジよりは好き。
葉山はツツジやさつきが多いので、これは仕方がない。
土地に合っているんだろう。
ここのもともとの持ち主とは結構趣味が合うのかな、と思った。
バッチリぴったり合うとまではいかなかったけれど。


今日、ヘルパーさんにまた、
「あなたって面白い人ね」
と言われた。
このヘルパーさんはよくそんなふうに言うのだけれど、そのたびに首をかしげてしまう。
だって、そう言われる時、私は特に面白いことなど言ってないのだ。
面白い人、というのは多分褒め言葉なのだろうし、別に言われるのが嫌だと言うわけでは無いのだけれど、全然面白いことを言っていないときに面白い人と言われるのは不思議な気分だ。
例えば今日は、こう言った。
「昨日、紫陽花に直径5センチもありそうな大きなカタツムリがついていて、それで、紫陽花の根元に毒餌をまいたんですよ。
うまく退治できたといいんだけど。
凍結(ジェット)で凍結しちゃおうかとも思ったんだけど、目の前に死体があるよりどこかでひっそり死んでくれたほうがいいと思って。
でもそうすると、確実に仕留めたかどうか分からないんですよねえ。
仕方ないけど」
なにか面白いところがあるだろうか。
さっぱり分からない。
今は紫陽花の絵を描いている。
庭の紫陽花ではなく、去年撮っておいた写真から描き始めた。
庭の紫陽花がもっと大きく花開いて、その絵を描き始め、仕上がるまで、のんびり暮らせるだろうか。
今日も向かいはまだ入居していない。
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