第105話 30代・弁護士からの連絡

私がレイキヒーリング や、一時期は気功治療やらを受けながら、なんとか少しでも回復しようとジタバタしている間、弁護士とYのやり取りは、酷くゆっくり進んでいった。


向こうが返済計画を送ってきて、何度か少額、振り込まれ、またしばらくして振り込みが途絶え、連絡がつかなくなり、・・・


冬になる頃、ようやく、弁護士が、


「もう支払いの意思はないと見ていいと思います。刑事告訴に移りましょう」


と言った。



弁護士は知人の検事に事前に相談して、私がそれまでに作った、詐欺の過程をまとめた書類を、もう少し細かく推移を記すようにと指示した。


私は、もう記憶もあやふやになっている父に、もう一度最初から、Yがどのような理由で振り込ませたか、できるだけ思い出すように、何度も繰り返し話を聞き、書類にして行った。


このときはもう、まともにパソコンを使えなくなっていたから、以前作った書類に手書きで書き加えていった。





年が明け。


これが仕上がったら、やっと刑事告訴できる、と。


そう思いながら最後の書類を作って、弁護士に送った。




やっと。ようやく。


父が元気なうちに、父に成果がわかるうちに、終わる。


良かった。







だが、数週間後、弁護士から入った連絡は。




「Yが、亡くなりました」



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