第86話 30代・詐欺全容1

父の話を大雑把にまとめる。


まず、最初は、今はもう倒産したH不動産と言う会社の粉飾決算に巻き込まれたところから始まった。


父は、この会社の仕事を何度か請け負っていた。

バブル期で、大きなマンションがどんどん売れていたので、新築マンション一棟分の登記の仕事はその都度、数人の司法書士を雇って行われていた。



父は、無愛想で、腰高で、接待もうまくなかったが、腕を買われて、川口あたりで数人雇う場合はよく、メンバーに入ったようだ。

当時は今とは違い、オンラインでもないし、しかも登記手続きは今よりも煩雑で難しかった。

普通の司法書士が数回に分けて行う仕事をいちどで済ませる腕があり、さらに、大勢の登記を、通常なら2日3日かかるところ、1日で済ませたらしい。

他の司法書士が、自分の手に余る件を、紹介して寄越したこともある。


そういうわけで、1人だけ選ぶならおそらくもっと愛想の良い人が選ばれたのだろうけれど、複数雇うなら、何かあった時のためにメンバーに入れておこうと思われるような司法書士だったのだ。





そして、詐欺師Yは、この会社で、父の担当をしていた。

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