第60話 今・不動産屋さんからの電話

不動産屋のOさんから電話があった。

やはり今は非常事態宣言で、テレワーク中らしい。


この方は私がこの家を買うときにお世話になった方なので、売買のほうの部署らしい。

賃貸部はやっているそうで、むしろ私にコロナ感染させてしまう危険性を考えて、もう少し後にしたほうがいいと言われた。



「もし、何かあったときにすぐに動けるように、いちど賃貸部に見せて、いくら位で貸せそうか聞いておくのはいいと思うんですよ。

ゴールデンウィーク明けにでも、どうでしょう?」


「はあ…」


腹をくくったと言いながら、私はまだこの家から去りがたい。

話がどんどん進んでいくようで、戸惑ってしまう。


「もちろん、まだお隣は入居していないんですよね?

もしかしたら、今、不安になっているよりも大丈夫かしれませんよね。

そうなら、すぐご連絡いただければ良いですし」


「そうですね。ただ、いろいろな方にご相談して、無料弁護士相談とか紹介していただいたので、やるだけやってみてからにしたいんです」


「もちろんタイミングはミユキさんの都合の良いようにしてください。

ミユキさんの家、とても素敵だから、すぐかどうかはわかりませんけど、借り手はつくと思うんです。

ただ、不便なところなので、あまり賃料は高くならないかもしれません。

それよりも、ミユキさんが住めるおうちを探す方が時間がかかると思うんです。

ですからよければ、条件などを伺っておいて、ちょっとそういう物件が出るかどうか、今探しても、そのものを借りるのは難しいと思うんですけど、どんなようなのが出るか見ておきますよ」

「ありがとうございます」


私はひと通り希望を告げた。 

希望の地域と、不便でも静かな所と言うことと、予算。

でも、予算はこの家をいくらで貸せるかにもよってくる。


「そこを売りに出す事は考えていないですよね?

多分、向かいの家にエコキュートを止めてもらうのは無理だと思いますし、ミユキさんが具合が良くなって戻ると言う事は難しいのではないかと思うんですが」


Oさんは、ご自分の経験からの話をしてくださった。


以前にOさんが仲介した物件でやはりエコキュートだったことがあって、購入者はエコキュートを変えたがっていたのだが、普通に給湯器を変えるよりもかなり高額な値段がかかることがわかり、仕方なく諦めたと言う。


また、別の売買物件では、こちらは売却側がエコキュートで、助成金をもらっていたので、何年間か使わなければならないと言う縛りがあり、その年数に達していなかったので、助成金を返済しなければならなかったと言う。


そういったいろいろな経験から、いちどエコキュートにしてしまうと他のものに変えることがなかなか難しく、もしも今の持ち主が家を売り、いなくなったとしても、次の持ち主もエコキュートを変えると言うのは難しいのではないかと言う。


つまり、いくら待ってもエコキュートはなくならないだろうと言うのだ。



「・・・買い替えなら、売りに出すことを考えてもいいんですけど、私、また同じようなことになると嫌だから、しばらくは賃貸にしたいんです。

だから、ここを貸した収入でどこか借りようと思いますし、この家とても気にいっているので、できれば手放したくないです」


「気に入ってくださって、気持ちよく暮らしてくださって、ありがたいですけれども、今大事なのはミユキさんの体調が良くなることだと思いますよ」




この方自身も難しい持病があり、その持病を抱えて働いていらっしゃる。

だからか、この家を買う時もとても心配してくださった。



怖い、怖いと怖がっているより、実際の音は確かに、想定よりもマシかもしれない。

妹が言うように、昔の機種よりはマシになっているだろうし、設置方法も問題なく見える。


むしろ、あまりに酷くて、とうてい住み続けられない方が、話は簡単かもしれない。




もし、なんとか工夫して、我慢できそうな程度だったら?

いつまで我慢してしまうのか。

それが自分にとって、いいことなのかどうか。


分からない。

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