第10話 告白(告白るとは言ってない)
1/28 構成変更のため、第9話に番外編を挿入しております。(第15話→第9話へ移行)
未読の方はよろしければそちらもご覧下さい。
――――――
「ちょっと話があって……二人きりになって欲しいんやけど……」
歯医者での治療から帰ってきた僕は、帰って早々主のいないリジュの部屋に誘われた。クールビューティーというか普段無表情なサクヤさんが、恥ずかしがっているのか少し顔を赤くして。え? なにこれもしかして、青春フラグ入っちゃった?
とまぁ、あまり期待していたら損するどころか黒歴史になると、冷静に考えながら用件を予想する。なんだ? リジュのことか? それとも欠けた歯のことか?
ちゃんと歯は凄腕歯医者さんがきゅいーんって治してくれたよ?
あ、特製アル印おにぎり勧められちゃってサクヤさんも歯が欠けちゃったとか? なるほど女の子だと恥ずかしいよね、うんうんわかるぅ。
まぁ聞くほうが早いか。多分歯のことだろう、恥ずかしくなんてないさ。ハハハ。
「どうしたの何か珍しくもじもじして。なんか僕悪いことしちゃった? それとも歯が欠けちゃったとかならモグリだけど良い歯医者さん紹介するけど」
「いやそうじゃない。悪くないんよ。って、歯? なんで歯なん? いや違うんそうじゃない、無免許の時点で駄目やと思うけどそうじゃない」
「うん? 違った?」
「う、うん。でもね、あのね、その、ずっと伝えたいって思ってたんやけど今まで勇気出やんくて……」
……っ⁉ 何これこの雰囲気。歯じゃないってことはもうこれはあれですかほんとに青春モードですか? でもあれ、僕達家族だからあれだよ? その、あれ? 別に問題なくない? 歯じゃないなら問題なくない?(錯乱)
「でも、早めにはっきり言う方が良いと思ったんよ。だから、頑張って、言うね」
「お、おう」
「えっと……」
来ちゃいますか? 来ちゃうんでしょうか? え? まさかのサクヤさんが? マジっすかパねえっすよ? どどどどどどうしよう。僕には大きくなったら結婚してあげるねって言ってくれたリジュさんがうあああああ。
「……」
「……」
「……っ! えっと、今朝もやけどね、ゲームとか漫画とかじゃない所でクエストとかキャストとかって言葉使ってカッコつけるの、見ててちょっとだけ恥ずかしくなる……かも。……だからやめた方がいいと思う……よ?」
「……え?」
「…………」
「え?」
「ご、ごめんね。でも早く言わんとって思ってて……」
「え」
……痛恨の一撃。その告白は僕のセブンティーンハートに効果は抜群だった。……歯じゃないの? いや、歯なんでしょ、実は。やだなあサクヤさん。ハハハ……ハハ……。
そして僕の記憶はそこから途切れ、何を考え、何をしたのか覚えがないままマイベッドに寝転んでいた。気付いたら天井のしみを数えていた。
「う、う、うごごごごごご、うごごごごごごごご」
その晩、変な期待をした僕は全く寝られなかった。
ひらがな二音のみ発生するマンに変身し、サクヤさんの優しく純粋で健気な自己犠牲精神的告白を思い出す度に、恥ずか死しかけながらベッドをジタバタし続けた。そして隣の部屋のリッツせんせーから壁ドンされまくった。
「う……ご……」
それでも僕はこの傷付いたメンタルの苦しみから少しでも逃れるべく、小さくうごうごするのを辞められなかった。うごうご。
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