第5話 2020年3月2日(月)
彼は珍しく早く起きた。といっても10時だから一般的に考えると遅いのかもしれない。窓越しに向かいの建物を見ると、隣人がバルコニーで本を読んでいた。スタイリッシュな風貌と、独特な雰囲気のある隣人。カーテン越しから想像していた以上の姿にうっとりを通り越して卒倒する気持ちであった。3ヶ月以上観察していたが実際に姿を見たことは一度もなかった。彼は水をかけられたかのように飛び起きると、目を見開いて読んでいる本のタイトルを確かめた。端が赤色で中央が白い本が特徴的な本だった。彼は即座にその本に見覚えがあることに気づいた。確かタイトルは「What I Wish I Knew When I Was 20」だったはずだ。日本語にすると「20歳のときに知っておきたかったこと 」。普段批判的な彼もこればかりは読みたい気持ちになっていた。もしかしたらこの本を読むことで隣人のことを少しでもわかるかもしれないと思ったからだ。そして10分後、彼は3ヶ月ぶりに寮の外に出ていた。目的は一つ、大学に本を借りにいくためだった。
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