とある恋愛モノガタリ

秘密咲 

第1話

「好きです。付き合ってください。」

俺の人生の初恋は美しくも儚い、甘酸っぱいいちごのような恋だった。




———————————————————————




ぴろん。不意にスマートフォンから着信音がなった。普段はあまり連絡をとらない俺は「誰だ?」と思いながら、その後メールを見た。


「やっほ。今何してる?」


同級生の有彩からのメールだった。あまり来ないメールに戸惑いながらもスマホに手を動かした。


「暇してるよ。」


我ながらそっけない返事だと思った。まあ仕方ない。あまり連絡をとらないのだ。


「そかそか。ならちょっと話さない?」


「何を?」


「私たちも入学して1年経つじゃん?だからそろそろ悠にも好きな人できたかなーっとおもってさ。」


「全然できない。ていうか、なぜお前が俺の好きな人を知りたがるんだよ。」


「まー、同級生として知っていたほうがいいかなーって思ってさ。」


「すまんがいない。用はそれだけか?」


「なんだよつれないなー。まあしゃーない。また暇な時くるわーw」


俺はそれに既読だけを返した。恋愛など興味がない。学生の俺達にはそれ以上にしなければならない事がある。とは思ったものの、何もする気にはなれず早々と布団へ身を寝かせるのだった。


次の日の朝。スマホのアラームと共に目を覚ました俺は大きなあくびをした。今日は土曜日。かといって何もする事はなく、ただ家でごろごろするだけである。いつものように朝食をとり、一通りの身支度をすませたあと、ソファに腰をかけた。リモコンを手に取り、チャンネルを回したところ、 ぴろん

とまだ着信音がなった。まさかと思い、スマホを見た。有彩だった。


「おはよー。今日はなんか予定あるの?」


「おはよ。なんもねーよ。」


「お!じゃ、私と一緒に買い物行かない?」


「だるい。無理。」


「えー。お昼奢るから!」


「しゃーねー行くか。」


「ちょろwじゃあ11時に駅前集合ね!


「わかった。」


そりゃあお昼ご飯がタダなら誰でも行くであろう。母と父は働きに行っている。休日なのに出勤とは。なんとも大変そうな会社だ。とはいえ、母父がいないと行動も自由なのである。いつもは昼食を自分に用意しなければならないのだが今日は昼食がタダです食べられる。初めて休日出勤に感謝した。そうこう思っているうちに集合時間の10分前になった。俺は財布とスマホをポケットに入れ誰もいない家に向かって


「いってきまーす。」


とだけいって駅前に向かうのだった。


家から駅前までは5分ぐらいで着く。おれが駅前に着く頃には有彩はもう待っていた。そして、有彩は俺を見つけるなり小走りでこちらに来て


「おっそいよ!女性を待たせてどーする!」


「まだ集合5分前だぞ。なぜ俺が怒られる。」


「普通男は女性より前に来て待ってるでしょ!」


「お前の常識を俺に押し付けるな。」


「へー。そういう事言うんだ。じゃーいーですよーだ。お昼ご飯は自腹ですからねーだ。」


「帰る。」


「あー!うそうそ!ごめんごめん!払うから行かないでー!」


そう言って俺の腕の裾を掴んでくる有彩。俺はその光景に少し微笑んでしまった。どうしてかは分からない。ただ少し、心がふわついた感じになった。


「ほらはよ行くぞ。腹減った。」


「その前に買い物ねー。」


あの感情をごまかすように俺は有彩が指差すお店に足早に向かうのだった。

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とある恋愛モノガタリ 秘密咲  @Kabikira

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