VRMMOで職業が死霊術師しか選べませんでした
マグロの叩き
第一章 死霊術師誕生
第1話
昨日届いたヘルメットの様なVRMMO専用のヘッドギアを装着しベットに横たわると、サービス開始までまだ時間があるというのに起動ボタンを連打し続ける。
まだかまだかと遠足を待ち望む子供のように興奮していた。
興奮のあまり、先程まで同封されていた取扱説明書を何百回と読んだ程だ。
そんな少々変わった青年。
ヘッドギアを装着する全ての者達がサービス開始を待ち望むこのゲームこそ、人類初の試みとなるVRMMOゲーム。アナザーディメンションオンライン。略してADO。
『無限に広がる王道ファンタジーの世界を思う存分堪能せよ!』がキャッチコピーの本作。
魔物あり、魔法あり、職業あり、スキルありのファンタジーな世界が彼ら彼女らを待っているのだ。
そして遂に、サービス開始まで残り5、4……とカウントダウンが始まる。
連打する指の速度も加速していく。いち早くやりたい。そう願っていた。
――次の瞬間、視界が暗転し無数の光が眼前を過ぎる。そして――
――ピコン
何も無い真っ暗な空間に、機械音と共に一つのウィンドウが現れる。
『名前を入力してください』
遂に待ちに待ったVRMMOの設定画面を拝むことが出来た。プレイするのももう近いだろう。
名前はいつも使っているユーザーネーム、
『次に、職業を選択してください』
勿論既に何になるかは決めてある。近接主体の
が、ウィンドウに映し出されていたのは、初めの職業を示す五つのマークに全て赤い斜線が引かれているという、前情報では聞いたことも無い謎のバグが起きていた。
その代わりに、六つ目の職業のみ選択可能となっている。
その六つ目の職業は
説明文としては。上級者向け職業。アイテム【魂】を消費することで死霊兵と呼ばれる軍勢を召喚出来る他、NPCを作り仲間にできる。
仮にコレしか選べなかったとしても後々他の職業は手に入るから大した問題じゃない。スタートダッシュが少し遅れるだけだ。
よし、次はキャラクター作成だな。
種族は……なんだこれ。文字化けしている……? いや……読めるが……人という文字の前に何かモヤがかかっている……。
なんだか顔色もバグっているのか赤みがない。
まるで死人だ。
まあ、サービス開始して間もないし、別にバグの1つや2つ、これから巻き起こる波乱万丈な冒険にこれと言って大きく関係することもないだろう。
気にせず迅速に作りたかったアバターを作成し、ゲームスタートのボタンに意識を向ける。
『それではADOをお楽しみください』
キャラクター作成も、何もかもが完了した。
さあ、待っていろ! アナザーディメンションオンライン! 思う存分楽しんでやる!
□
エレベーターが上から下に行く時のようなズドンとした圧のある感覚に戸惑いながらも、地面に足をつける。
遂に――降り立ったのだ。
「……よし! ログイン成功!」
やはり紹介映像の通り、美しい中世の街並みが眼前に広がっていた。
空は青く澄み切っていて、それでいて程よく暖かい。現実世界では0時丁度だと言うのに、こっちでは昼の12時位だろうか。
NPCが店を経営している。
凄い世の中になったんだとしみじみ思う。
VRMMOなんて常識で言えば架空の世界の話。それが今、一般人である俺でさえこうやって遊べてしまう世の中になった訳だ。
感動に打ちひしがれている間に、もう既に街中にはプレイヤーと思わしき人達が跋扈しだしていた。
歓喜の声があちらこちらから響き渡る。既にレベル上げに行った人達もいるようだ。
『死霊術師のチュートリアルを受けますか?』
YES、NOの二択が出てくるが、答えは……NOだ。
周りは既にVRMMOゲームを堪能している。俺も負けていられない。
『ヘルプの項目から何時でも受けれますので、是非ご利用ください』
そう伝えるだけ伝えて勝手に閉じる。
確か初めに武器が貰えるとかなんとかって話だったな。
紹介映像では人差し指を親指で弾いてメニュー画面を開いていた。
――ピコン
機械音とともにウィンドウが出てくる。これがメニュー画面だ。運営からのお知らせや、プレゼント、アイテム、スキル、ステータス、フレンド、ログアウト、掲示板と言った動作ができる。またヘルプといった行き詰まった人の為に設けられた項目もある。主に最初の進め方だとか、手に入れた職業の詳細や自分が耳聞きした用語の内容を見たり、チュートリアルを受けられるものだ。
さて、まずは初期配布の装備を――って装備の欄が無い?
話によればメニュー画面にあるはずなのだがこれもバグだろうか?
意外とバグが多いんだな。
他のプレイヤーを見ると平気で鎧などの初期装備を身に付けている事からも、俺だけにこのバグが起きていると考えられる。
仕方がないので諦めてステータス画面に移行する。
「……これはどういうことなんだ」
そこには死霊術師 白魔黒 Lv1 まあこれはいいとする。
だが、そこから下のHPやMP、STRと言った各ステータス値全てが1になっていたのだ。
更によく見ると種族が人ではなく、死人となっている。
「まさか……仕様?」
焦りを覚え、急いでヘルプ画面に移行し、用語集から死霊術師の詳細について調べる。
「嘘だろ――」
読み進めて俺は絶望した――
――今までの不可解なバグにみせたモノは実はバグ等では無く、仕様だという事が判明してしまったからだ。
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