6・ルドルフ
「なんでお前、それに気になるんだ? 骸骨騎士団に対抗できねえだろ! そんな華奢なものじゃ! それに伝記が記述されていねえから、ページの水増し用に創作したんじゃないんか? なんで気になるんだ?」
娘の王太子は、どうやらゼンタイとかという魔道具が気になるようだった。それにしてもゼンタイってなんだよ! この世界で話題になったことないというのにである。ガイル3世は頭をかしげていた。まあ骸骨騎士団を目の前にして対抗できる救世主なんて召喚できるとは思ってもいないので、この際なんでもいいから召喚さえできればいいんじゃないかと開き直ってしまえばいいと思っていた。
「それは、その魔道具なら私も戦えるんじゃないかと思ったのよ! だって王城にあった装備品や魔道具はあいつらに略奪されたじゃないのよ! そんなら甲冑よりもカッコいいモノの方がいいでしょ!」
「恰好いいかあ、それって?」
少し呆れ気味であったが、いまはそれどころではなかった。先頭を行く馬車に乗っている王国宰相代理のルドルフ・ジャビル、この男によって親子で王に祀り上げられたが、本当に魔導士の元に向っているのか心配だった。骸骨騎士団によって略奪された王宮に残されていた救世主を召喚するために備蓄されていた銀貨を持って逃げ出すのではないか心配だった。さらに銀貨を独占するために殺害されないかとも憂慮していた。
なぜなら高級官僚や貴族が抹殺されるか逃亡するかしているのに、残ったルドルフに隠された意図があるのか疑っていた。いくらなんでも農民の親子を王にするぐらいなら自分が革命暫定政権を樹立すればいいんだから! そう思っていると馬車が急に止まって馬車の扉をノックして開けたのがルドルフだった。
ルドルフは背が低い男で、なんでも帝国法科学院を最下位の成績で卒業した凡人で、地獄門が出現するまでは宰相府でうだつの上がらない管理職をしていたという。しかも頼りなさそうな容姿なのに宰相代理になったのは、彼よりも上位の役人がみんないなくなったためという、幸運なのか不運なのかわからない状態であった。
「国王陛下、王太子殿下、魔道士様のところに到着しました。まだ嵐が収まっていなのですが、召喚のための準備はされているようです」
ルドルフの肩越しには、深い山の中にある盆地のようなモノが見えていた。そこには召喚の儀式を行うための祭場があって、激しい雨に対抗するかのような激しい炎が高く天へと伸びているのが見えた。その炎の傍には背が低いボロを纏った人物のシルエットが浮かんでいた。
魔道士ウェルズビル 救世主はロートル魔道士!? ジャン・幸田 @JeanKouda0
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