問題編・第3話 容疑者たちへの質問

早緑弥生の部屋。

四条、宗助、煙山、的場と容疑者4人板付き。


森田「(うつむいてブツブツ何かを喋っている)」

四条「みなさん、夜分遅くにすみません。というかもうほとんど朝ですが」

麻木「前置きはいいから、用件だけお願いします。早く帰りたいんですよ。仕事が朝早いので」

四条「おや、あなた……以前どこかでお会いしませんでしたか?」

麻木「……さあ、人違いじゃないですか?」

戸川「あのー、もしかして僕たちって疑われてたりします?」

多胡「恋人が殺されたんですよ。俺たちだって被害者じゃないですか」

四条「まあまあ、すぐに終わりますから」

麻木「……ていうか誰ですかあなたは?警察ですか?ってそんなわけないか」

四条「失礼しました。私は警察に捜査協力しているものでして、私立探偵の四条というものです」

多胡「探偵!?そんな派手な格好で!?尾行とかできんのそれで?ねぶた祭りみたいじゃん!」

四条「派手…ねぶたみたい……(ショックを受ける)」

煙山「おい!余計なこと言うんじゃない」

多胡「……すいません」

宗助「先生!先生しっかりしてください!」

四条「あ、ああ。すまない。少し夢を見ていた。ティラミスのお風呂に入る夢を」

麻木「とんでもない現実逃避だなあ」

的場「(煙山に)四条さんって、めんどくさいですよね」

煙山「シッ!」

四条「失礼。これからみなさんにいくつか質問をしますので、正直に答えてください。特に答えづらい質問をするつもりもありませんので。まず多胡さん」

多胡「なんですか?」

四条「貴方が被害者の早緑さんにプレゼントしたこの車の模型、帰るときにどこに置いて帰りましたか?」

多胡「え?えーと、そのテーブルに置いて帰ったと思うけど……」

四条「では麻木さん、この車の模型には見覚えがありますか?」

麻木「いやあ、あったと言われればあったような気はしますが……。どうだったかなぁ」

四条「戸川さんはこの車、見覚えはありますか?」

戸川「ええ。それ、さっきもそこの刑事さん(的場)と話してて、床に置いてあったと思いますよ。その辺かな。(テーブルの近くを指さす)」

四条「なるほど、ありがとうございます。もう一ついいですか戸川さん」

戸川「はい」

四条「この灰皿、使いましたか?」

戸川「ええ、使いましたけど」

四条「帰る時、この灰皿はどこにありましたか?」

戸川「ああ、それもさっき話したけど最初に弥生ちゃんが置いた場所から動かしてないから、この辺です。間違いない。弥生ちゃんも吸うけど、いつもこの辺で吸ってるし」

四条「なるほど、ありがとうございます。……今度はみなさん全員に質問します。早緑さんからストーカーについての話を聞いたことはありますか?」

多胡「ああー、俺聞いたことある。最近ストーカーみたいな奴がいて困る、監視されてるみたいで気持ち悪いって」

麻木「私もあります。内容は同じ感じですね」

戸川「僕も聞きました」

森田「……」

四条「森田さんはどうですか?」

森田「森田は……森田はまだそんなにしゃべったことないし……知らない」

四条「そうですか。ありがとうございます。なるほどなるほど。(体を反る)」

宗助「先生!体が反ってきてます!」

四条「おおっと、まだ早い。もう少しだけ。森田さん!」

森田「何?」

四条「21時頃、早緑さんの部屋を訪れたとき、ドアに鍵はかかってましたか?」

森田「……分かんない。ノブには触ってないし」

四条「なるほど……それはそれは……(一人言で)じゃあ運が良かったのか。

ちなみに、他の皆さんは早緑さんにプレゼントを用意してきたみたいですけど、森田さんも何か用意しましたか?」

森田「うん。何もいらないって言われたんだけどさ。森田やっぱりサミーにブライちゃんの格好してほしかったから一式で持ってきたんだよね」

四条「ブライちゃん?」

森田「知らない?『必死で奉仕!馬メイド』の成田ブライちゃん」

宗助「あーーーーーーーーー!!!そうだ!そうだよ!思い出した!」

煙山「どうした?落ち着け」

宗助「分かりましたよ!あーーーーそうかーーー!そうだったんだー!」

四条「宗助くん。説明してくれませんかね」

宗助「あっ、すいません先生。僕、殺された早緑さんの写真見て見たことがあるような……って言ってたじゃないですか。あれ、『必死で奉仕!馬メイド』っていう4,5年くらい前のアニメのキャラクターに似てたんですよ。そういえば、主人公のメイドが成田ブライって名前でした」

森田「知ってるんだー!」

宗助「ええ、毎回ご主人様がピンチになると、主人公が馬に変身して助けるんですよね?」

森田「そうそうそう!もうねーそれがすごいんだよなぁ。カッコカワイイ感じ?惚れたね!当時24歳の森田は惚れたね!初めて惚れた馬だね!」

煙山「まあ馬に惚れる機会があんまないからな」

四条「話を整理させてください。森田さんは、早緑さんにその馬メイドの格好一式をプレゼントとして持って来たということで間違いないですか?」

森田「そうだよ。渡せなかったけどね。大体さ、サミー好きになったのもブライちゃんに似てるからだから」

四条「じゃあプレゼントは馬のお面と、メイド服ですか?」

森田「うん、あと日本刀ね」

煙山・四条「日本刀!?」

森田「そうだよ。ブライちゃんと言えば日本刀じゃん。日本刀でバッサバッサと敵をやっつけるんだよ。知らないの?」

四条「なるほど……なるほど……そうですか、そうですか…」

煙山「おお、四条……もしかして橋が……橋が架かるのか?」


つぶやきながら突如ウィンドミルを始める四条。

やがて動きは激しくなり、ブリッジでキメる!


四条「(ブリッジで)架かったーーーーーーー!」

煙山「でたーーーこれが真・四条大橋!」

的場「……なんすかこれ」

四条「(立ち上がって)全ての情報に橋が架かりました。事件はすでに明快です。ありがとうございました。……森田さん、最後に一つだけ質問よろしいですか?」

森田「何?」

四条「成田ブライちゃんって、ミニクーパー乗ってるんじゃないですか?(模型持って)ちょうどこんな感じの……」

森田「そうだよ。なんだ、知ってんじゃん。納車が間に合わなかったんだけど、ほんとは森田ミニクーパーもあげる予定だったよ」

四条「なるほどなるほど……そうですか、ありがとうございます。宗助君!」

宗助「はい先生!」

四条「(耳打ち)、頼んだよ」

宗助「分かりました!(ハケる)」

四条「竹下さん!いますか!」

竹下「(登場)どうした四条さん」

四条「(耳打ち)、お願いします」

竹下「分かった。探してみよう。(ハケる)」

四条「煙山君、ちょっといいかな?」

煙山「相変わらず勿体付けるなあお前は」

四条「(耳打ち)、頼めるかな?」

煙山「任せとけ。すぐ戻る。(ハケる)」

四条「的場さん!」

的場「はい。(耳出す)」

四条「あ、それじゃないです」

的場「はずかし!!じゃあなんですか?」

四条「……今から被害者の死によって失われた空白の時間……『ミッシング・タイム』を取り戻します。立ちあっていただけますね?」

的場「……分かりました。しかと見届けます」

四条「では始めましょう。答え合わせの時間です!」

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