第132話 宿命

 「創造と破壊。」


小さいながらもしっかりとつぶやかれたその言葉は重い衝撃となってリュースティアの鼓膜へ届く。

ルナの伝えるという意思を砕くことのできなかったリュースティアはただその小さな口から紡がれる言葉を聞くしかなかった。

そしてその口から語られた魔法名はリュースティア自身もよく知っているものだった。


「創造、、、、。」


そう、創造だ。

リュースティアが持つスキルの1つ。

この地に転生した時から与えられていた天性のもの。

飢えを癒し、住処を与え、魔法をくれたもの。

分からないことも多いスキルだったが助けられたことは間違いはない。

それがまさかそれほど貴重なものだったなんて考えたこともなかった。


「そう、だからあなたは自分が思っている以上にこの世界にとっては特別な存在なのよ。神様の生まれ変わりと言ってもこの世界の人間なら信じるかもしれないわ。」


うわー、それ詐欺できちゃうね。

神様詐欺。

たくさん貢がせて人生ウハウハってか?

貢がせたらどうすっかな。

何でも買えるよな。

とりあえず借金は返すだろ?

あとは店の改装とかもいいな。


予想以上の壮大な話しだったためリュースティアは思考を放棄した。

妄想に精を出すことで一切を締め出そうとしたのだ。

俺には関係ない、そう心の奥で願いながら。

だがそんな現実逃避を目の前の小さな精霊が許すはずもなく、、、。


「どうやったって運命からは逃れられないわよ。別にあなたがここでの話を聞かなかったことにして普通に過ごしたところで何も問題はないわ。けどいずれその時はくる。あなたがそのスキルを持ってこの世界に来たことの意味が分かる時が。その時に後悔しない方を選びなさい。運命はたぶんあなたを放ってはおかないから。」


とくに向き合うように説得するでもなくただ淡々と事実だけを述べる様子は説得されるよりもくるものがあった。

無視しようとしてもできない何かがそこにはあった。

何よりも後悔しない方を選べという言葉が胸に大きな意味を持って残る。


「そんなの、そんなの知らねぇよ。運命とかなんか適当なこと言ったって俺が望んだことじゃない。このスキルがほしいなんて頼んでもない。勝手にスキル押し付けてそれらしい理由つければはいそうですか、ってなるとでも思ってんの?」


だからか、つい子供じみた反論をしてしまった。

これじゃあ聞き分けのない子供と同じだ。

ルナに当たったところでなにもならないことも分かっている。

当事者は俺と神様くそじじいなのだから。


「私に文句を言うのは筋違いよ。あくまで私は事実を伝えただけなんだから。」


冷静に正論をぶつけられた。

自分自身でも八つ当たりをしてしまった自覚があるだけにここは素直に謝っておく。


「悪い。けどその運命ってさ、俺が何かするってことなのか?」


「、、、、、、、さぁ。」


微妙な間が気になるけどここでいくら聞いてもたぶん答えてはくれないだろう。

俺の加護とか称号に関係があるのかもしれない。

後で調べてみよう。

というかこれはもう一度神様にコンタクト取った方がよくないか?

どうやったらとれんのかは知らないけどさ。

もう一回死にかけるとか?

いやいやいや!

それだけは無理!


「私自身もわかっていないことが多すぎるから何かを伝えてあげることはできないわ。ただ、ただ1つ言えることは創造と破壊、この2つは切っても切れない存在にある。だからどういう形であれあなたは大きな決断を迫られるかもしれないわね。」


意味深すぎんだろ、その発言。

むしろフラグくさいからやめてくんないかな。

けどこれはある意味チャンスだ。

ルナが話し役に回っているうちに聞きたいことは聞いておこう。


「過去にこういうスキル持ってたやつはいないの?てかその2柱の神様はどうなったわけ?」


「ある日神代は唐突に何の前触れもなく終わりを迎えたの。それはその2柱の神様の亀裂が原因と言われているわ。創造の神と破壊の神が7日間争い、お互いの言い分を主張し、世界が割れた。そして決裂した結果、天界とこの地が再び交わることはなかった。私もその時代に生きていたけどそこにいた私ですら何があったのかはわからない、ただ天と地が分かれたということをかろうじて感じられただけ。」


「なぁ、それはさすがに難易度高くないか?というより仮に俺の運命ってやつがそれに関係してるとしたら俺の人生ハーすぎ。」



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