第6話 スキル

辺りの草原を星々の輝きが照らし、夜の静寂がそこで横になる少女の寝息すらも飲み込んでいる。

そんな中、少女たちの寝顔を見ながらため息をつく青年が一人。

それはあれから二人に質問攻めにされ、食事どころか睡眠すらも許してもらえなかったリュースティアである。

だがそのおかげでこのスキルらしきものについていくつかわかったこともある。


一つは元となる素材があればそこから別の物を作りだせるらしい、こと。

ただし、造り出せる物は元となる物次第で、ある程度構成されている物質が同じでないといけないらしい。

試しに石から果物を創ろうとしたが何も起こらなかったことからしてもこの考えは正しいはずだ。

二つ目が創り出せるものは元の質量と同じ質量のものだけという事。

元の質量を超える物は当然創り出すことができなかった。

後は創り出すのに一番重要なのがリュースティア自身の想像力と知識であった事。

これらが昨晩二人に詰め寄られて真夜中すぎまであれやこれやと試していた結果、わかったことである。


「はぁ、自分の能力についてわかったのはいいがここまで熱くなれるか?」


二人の寝顔を見ながらため息をつく。

二人の質問するときの目は狂気すらも孕んでいてわずかにしろトラウマを抱えるレベルだったりする。

トラウマになりそうなほどの狂気を向けてくるのは主にリズの方だが、、、。

どうやらシズいわく魔法の事になるとどうも見境がなくなるらしい。


「だけどこの発見はでかいよな。このスキルって使い方によっては充分チートだし。それよりも問題なのはあいつらの狂気にさらされていたせいで全く眠れそうにない事だよな、、、、、。」


再び盛大にため息をつきながらもどうせならこのスキルで遊んでいようと思い何かないか周囲に目を配らせる。

すると全員に忘れられていたウサギが目に留まる。

双子の狩りからようやく逃れた挙句、男の頭に顔面ダイブを決め込み捕獲され、あわや食料となるところでその存在すらも忘れられた残念なウサギだ。

どうやら捌かれる直前に放置されたらしく何とも哀れな状態でこちらを見つめている。

残念なウサギだ。

だが地球にいたころの自分を見ているようで何となく悲しくなったリュースティアはウサギを解放してやる。


「ほら、いっていいぞ。強く生きろよ。」


そんな同情じみた言葉をかけウサギを解放してやったのだがウサギは逃げようとせずリュースティアに近づいてきて目の前で止まる。

すると後ろ脚で立ち上がり、前足をリュースティアの肩にかける。

その様子はまさに友を慰めるそれだった。


「、、、お前。わかってくれるのか?」

「キューン。」


リュースティアのつぶやきに鳴き声を返すウサギ。

二人の間になぜそうなったかはわからないが友情が生まれた?らしい。


ともあれリュースティアは新しく得た友人?と共にあたりにあるものから様々なものを創造していく。

主に作っているのは道具類だ。

石や砂、木などはいくらでもあるのでそれらを材料にするとなると必然的に作れるものは限られてる。


「んー。これ分割とかできんのかな? てか二つの材料合わせたらどうなんだ?」


地球で言うところの三時頃だろうか、深夜テンションで思いついたそれらを試してみたところ自分でも驚いたがうまくいった。

元の質量は越えられないので縮小版だが一つの材料から二つのものをつくることができたのである。

それは二つの材料を掛け合わせた時も同じだったのである。


「うっひょー。」


時々そんな奇声を上げながらも深夜テンションのまま一人と一匹は様々なものを創造しまくる。

そして朝日が昇ろうかというころついにリュースティアの意識はブラックアウトした。



「、、、さい。」

「ん~?」

「、、、、、なさい!」

「ん~ん。」

「起きなさいって言ってるでしょうが!!!」


そんな怒声と共にリュースティアの意識は一気に覚醒する。

目を覚ますと目の前にはにっこりとほほ笑む美少女が二人。

普通ならこのシチュエーションに歓喜するところなのだろうが彼女たちの目を見て背中に冷や汗が流れる。

そう、目が笑っていないのだ!


「えっと、シ、シズさんにリズさん。お、おはようございます。」


恐怖に冷や汗をかきながらもなんとか通常通りふるまおうとするリュースティア。

内心では大量の冷や汗をかきつつも自分が何をしてしまったのか必死に考える。


「おはよう。昨日はずいぶんとお楽しみだったみたいね?」


そう言い、笑顔を向けるシズだが先ほどと同様目がわらっていない。

(だから怖い!怖いって!)

内心、恐怖を訴えるがそ逆らわないほうがいいと判断し、素直に何のことかわからないと告げる。


「これを見ても心当たりがないっていうの⁉」


そういってシズが指さす方向にはいつの間にできたのか昨晩にはなかった小さな山のようなものが出現している。

そしてその麓にはトレードマークともいえるウサミミを垂らしてしばりつけられているウサギの姿が!


「ぴょん吉!」


思わず昨夜できた友の名前を叫ぶリュースティア。

自体が飲み込めずまさか殺したのか?という非難の目をシズに向ける。

するとその意味を察したのかシズが答える。


「別に殺してないわよ。ただ縛っただけ。あのウサギもあなたと同罪みたいだから。」


ますますわけがわからない。


「同罪?それじゃあ俺が何か罪を犯した見たいいじゃないか。俺は何もしてないぞ。」

「えっと、リュースティアさん、、、、。あたりを見ても同じことが言えますか?」


リズの言葉に周囲を見るリュースティア。

そして気が付く。

辺りの不自然さと、自分が何をしてしまったのか。

リュースティア達が野営にと選んだ場所は見るも無残な姿に変わり果てていた。

あちこちの地面がえぐり取られ木々は倒壊していたり途中がえぐられたりとそれはもう無残な状態だった。

そして先ほど小さな山だと思っていたものはよくよく目を凝らすとガラクタの山だった。

そのガラクタというのはもちろんリュースティアが作ったものだ。


そう、彼は深夜テンションのなすが儘に手当たり次第に創造した結果、地形すらも変えてしまうという異常事態を起こしててしまったのである。

彼女たちが怒るのも無理はない。


「うっす。すんませんでした!」

潔い謝罪と共に日本での最終奥義、土下座をする。

それはもう地面にのめりこむ勢いで。


正座したまま二人からの説教を素直に受け入れるリュースティア。

永遠かと思われる時の中ですでに足は限界を超え痺れを通り越し何も感じない。


リュースティアがようやく二人から解放されたときにはすでに輝く太陽が真上を照らしていた。






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