第4話 草原での出会い
リュースティアがオークもどきに襲われてから三日が過ぎた。
あれから魔物に襲われることもなく快適とまではいかないが順調に旅を進めている。
最初はどこに行くべきか悩んだのだが無難に町を目指すことにした。
町に行けば情報も仕入れられるし、もしかしたらステータスのバグも直してもらえるかもしれない。
そして何より町に行けばきっとこの草原なんかよりも普通に暮らせるはずだ。
異世界転生することになり掲げた目標、それは冒険などではない、普通に生きることだ。
その為には町で定職に就くのがベストだと判断したわけなのだが、まさかここまで遠いとは思っていなかった。
「おいおい、これで三日は歩きっぱなしだぞ。なのに何で一向に距離が縮まらないいんだ、、、。」
もう限界、とばかりにその場に倒れこむリュースティア。
二日目あたりから町らしきものの外壁は見えているのだがその大きさが一向に変わらないのだ。
これは絶対に何かある。
そう思ってはいてもどうすればいいのか見当もつかないリュースティアは町に向かって歩いていくしかない。
「くっそー。これって完全に無理ゲーじゃんか。」
若干不貞腐れながら簡易リュックから食料を取り出す。
所持品が金貨しかなかったはずの彼がなぜリュックと食料を所持しているかというとオークもどきのおかげである。
オークもどきが溶け去ったあと付近を捜索しているとオークもどきの巣穴のような物を発見した。
恐る恐る中に入るとそこは動物の巣穴のように暗く、血や獣の匂いが充満していた。
異臭に襲われ吐きそうになりながらも何かないかと巣穴の奥に進みそこで戦利品のようなものが集められている部屋を見つけた。
おそらくはオークもどきに敗れた冒険者類の者だろう。
中には白骨らしきものや血まみれの剣や防具などもあったが極力見ないようにして散策を続ける。
そうして巣穴にあった使えそうなものを片っ端から盗、、、、もらってきたのだ。
この簡易リュックはというと巣穴で見つけた布でリュースティア自身が作ったものだ。
作ったというと少し語弊があるが、、、。
この布で鞄みたいなものが作れないかな、と思案していると勝手にリュースティアの手の中で布が簡易リュックになったというわけだ。
作りは雑だし、ところどころほつれたりしてはいるが穴が開いてない以上高望みはするまい。
この現象に関してはリュースティア自身にもよくわかっていないが布に何か特別な力があったんだと勝手に解釈している。
「さすが異世界だよなー。理解できないことがここまで続くとなんかそういうもんだと思っちゃうもんな。」
そう言いながら手元の赤い果実をまじまじと見つめる。
この果実もリュースティアが作った?ものだ。
空腹感は一日目からあったが極力意識しないで旅をしていたリュースティアだったがさすがに空腹に耐えられず近くの木に実のっていた赤い果実?のようなものを口に入れた。
見た目はザクロのようなものだ。
毒があるかもしれないし迂闊に何かを口に入れるのは避けたかったが所々鳥のようなものに食べられた跡があるので毒はないだろうと判断する。
それに、この飢餓感はさすがにこれ以上耐えられしうもない。
「うっわ! まっず、、、。」
口に入れた瞬間に広がる酸味と苦味。
そして口に残る青臭さ。
なんとも言い難いレベルの不味さである!
あまりの不味さに飢餓感すらも一瞬忘れる。
食べられないとはわかっていても名残惜しそうにするリュースティア。
「はぁ、これがまんまザクロならいいのに、、、。」
その呟きと共にザクロもどきを持っている手が眩い光を放つ。
そして光が収まると手にはザクロもどきがある。
しかし先程とは違う点が1つ。
何故か、とても甘く美味しそうな臭いがするのである。
おそるおそる再び口にいれたリュースティアは余りの衝撃に一瞬呆けてしまった。
なぜならそれは地球のザクロの味そのままだったのである。
「うそん。」
これにはさすがに驚愕したのだが空腹感には耐えられず考えるのは後!とでも言うようにザクロもどしにかじりつく。
まるまる一個のザクロを平らげ空腹感が少し落ち着くと、改めてこの現象について考える。
が、もともと地球にいた時からこの手のゲームやラノベ、アニメ等に詳しくない彼が考えたところで何もわかるはずがない。
「うーん。まっいっか。とりあえずこれで空腹で死ぬことはないだろうし。」
実は、これが創造神に与えられた加護【創造特権】によるスキルであることなど露程も思わず、、、。
なんとも疎いリュースティアである。
それから旅を再開し今に至るわけなのだが。
あれからわかったことと言えばあの木の実があれば望むだけでいくらでも甘い地球版ザクロに変えられる、というくらいだ。
「さすがにそろそろ肉が食べたいよなー。」
などとつぶやきながらも食料があるだけましか、そう思いなおしリンゴを食べようとするとどこからか女の子の声が聞こえる。
「お姉ちゃん!いまだよ!」
「えっ、シズそんな急には無理よ。」
なんだか騒々しいな、そう思いながらも異世界にきて初めて人に会えるかもしれないと思い声のする方を振り返る。
すると目の前に飛び込んできたのは真っ白で地球のものより二回りは確実に大きなウサギだった。
急なウサギの飛び出しに反応できず顔面でウサギを迎える。
ウサギの方も草むらから飛びだした直後に人とぶつかることなど想像していなかったらしくそのまま顔面ダイブを決め込んでくる。
ゴツン!!!!!
かなりの衝撃音があたりに響き渡る。
音の発生源の彼らはというとウサギは気絶し、リュースティアは額を抑えながら地面をのた打ちまわっていた。
リュースティアが地面をのたうちまわっているとウサギが飛び出してきたほうから話声がとともに二人の少女が現れる。
「もう、お姉ちゃんのせいで逃げちゃったじゃん。」
「そんなこと言ったってあんなに急に魔法なんてできないよ。それにもっと確実に行くべきだと私は思うけど。」
「お姉ちゃんはいつも慎重すぎるんだって、だいたい・・・・・。」
そのあとの言葉をつづけようとしたがそれは叶わなかった。
なぜなら二人とも目の前の状況に唖然とし言葉を失ってしまったからである。
そんな彼女たちの目の前には涙目になりながら額を抑え地面を転がりまわる男の姿があった。
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