第11話
私は銃を突きつけて、最後の乗客を降ろしていた。
「望ぃ、こっちは終わったよぉー!」
同じく乗客に銃を突きつけ、外に追い出していた茜が言った。
「ああ。これで全員だ」
私と茜は仁たちとは別行動で、新幹線をジャックしている最中だった。私たちはこれを利用して、関東のメインであるアイの塔へ向かう。
私は車窓から外を眺めた。駅へ向かう道中を襲ったので、周りには木々と、遠くには海が見えるのみだ。しかしその方が良い。駅に止めてしまったら、周りの客達が邪魔だ。
「あ、来た」
茜が言う。茜の視線の先を追うと、一台の車がこちらに向かってきていた。やがて私たちの近くに停車すると、エメラルドファイアの面々と、仁の妹が降りてきた。
「いたた……ああ、糞っ!」
仁は何故か悪態をつきながら、右肩をグルグルと回していた。
「望、茜。お待たせしました」
遅れて降りてきた瑛里華も、もの凄く顔色が悪い。その上で笑顔を取り繕っているものだから、気味も悪かった。ここまで弱っている瑛里華を見たのは初めてだ。
「仁に瑛里華。どうかしたのか」
私は素直に尋ねる。
「いえ。ちょっと抱き合ったら、肩が外れまして」
瑛里華が言った。意味が分からず、私は反応に困った。
「何それ。流石の私でも、そんな事態にならないけど」
茜が言った。当たり前だ。抱き合う度に肩が外れてたまるか。
「ええ。まさか仁が、これほど下手だったとは」
瑛里華はより一層げっそりして言った。
「えっ。嘘。抱き合うってまさか、セックスのこと!? セックスしたら、肩を外したの!?」
「そんなわけあるか、バカ!」
滅茶苦茶に言っている茜に、仁が怒った。
そして私は、仁のそばにいる女性を見た。
「君が葵だな。私は司波望」
「私が宍戸茜ね。こうして話すのは初めてだよね」
葵は気まずそうに、不器用に微笑む。
「私は椎名葵。私も改めて、エメラルドファイアに協力することになりました。宜しくお願いします」
そう言うと彼女は、丁寧にお辞儀をした。
「いやあ、良い子だねえ。仁とは大違いだ」
茜の言うとおりだった。兄とは正反対だ。近親交配について色々言っていたから、血は繋がっているのだろうが。
「ともかく。葵がここにいるってことは順調ってことだな、仁」
「ああ、その通りだ望。後はアイの塔へ向い、葵にセキュリティを解いてもらう」
そして、私たちの理想を実現させる。
「行くぞ。お前たち」
仁の号令によって、私たちは新幹線に乗った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます