「香坂潤」
「潤君、ちょっと状況を説明してくれない?もし良ければ、スピーカーにして、今、ここにいる、もう1人の『異世界人と出会った』女性にも、話を聞かせてあげてもいいかしら?」
春日部遥は、少し動揺しながら、電話の向こうの相手に言った。恐らく、同意が得られたのだろう。うんうん、と
そのまま、スピーカーのボタンを押す。
「こんばんは。もう1人の『異世界人と出会った』人。僕の名前は
「こんばんは。私の名前は羽生美咲です。都内に住む、会社員です」
「ねえ、潤君!突然、アメリアと別れるかも知れないって、どう言う事?」
私が香坂潤との自己紹介を済ませると、早速、春日部遥は香坂潤に尋ねた。
「遥さん、落ち着いてぇな。その前に、羽生さんに、今の僕とアメリアの状況を説明しないと、分からへんと思うんやけど」
「そうね……確かに、その通りだわ」
「羽生さん、少し
「ええ。お願いします」
香坂潤は、咳払いをして、話を始めた。
僕とアメリアが出会ったんは、2年前です。当時の僕は、恋人と別れて、毎晩寂しくて、酒に溺れる毎日でした。大学にも、殆ど行かなくなって、友人から心配される程でした。当時、『イチゴイチエ』はリリースされた所で、僕は、僕の事を心配してくれた友人に勧められて、始めました。
初めは面白くなかったです。なんか、顔だけで選んでる感じとか、学歴だけ見て、メッセージ送ってきてるな、とか感じてしもて。直ぐに止めようと思ったんですけど、月額3000円強したんで、1ヶ月は続けてみよかな、と思って、続けてみたんですよ。そして、アメリアと出会いました。
まさか異世界人と出会うとは、思ってませんでした。騙されてるんか?と思ったんですけど、それならそれで、面白いやん、と思ってメッセージのやり取りを続けました。途中で、あ、これは本当の事なんや、と気付きました。その頃には、僕はアメリアの繊細な性格や、お人好しとまで言われそうな、優しい性格に惚れて、毎日、アメリアと通話してました。ゾッコンでした。
アメリアも異世界で、学生してました。錬金術師になる為の学校です。お互いにレポート頑張ろな!とか、面白いエピソードあったで!とか、話題は尽きませんでした。
そんな時、大手掲示板で『おむらいす』……遥さんの事を知って、直ぐに連絡しました。僕のレベルは15になった所で、アメリアと、限られた時間ですけど、実際に会える様になってて、アドバイスが欲しかったんです。どんな風に、異世界から現れるのか、帰る時は、どういう風に、こっちの世界から消えてしまうのか。それが分からへんかったら、容易に呼べないなあ、と思って。
遥さんに、色々と聞いて、僕はアメリアと会う事にしました。めっちゃ緊張しましたけど、それ以上に楽しかったです。確か、アメリアとやり取りを始めて、1年弱が経った頃やったと思います。
そんで、お互いに色々と話して、僕が卒業したら、一緒になろう、って話になったんです。今、僕のレベルは30です。恐らく、これ以上、レベルが上がる事はないと思います。使えるスキルが、『永遠に、どちらかの世界への移動』なんで。
アメリアは、僕と結婚したい、と言ってくれました。そんで、今年、僕の就職が決まったんで、プロポーズしたんです。答えは、はい、でした。
2週間前くらいに、アメリアを、こっちの世界に呼んだんです。毎日、楽しくて、アメリアと一緒に居られるんが、信じられへんくて、幸せでした。
昨日の事です。アメリアが泣きながら、僕に、「アルトリアに帰りたい。家族に会いたい」って言ってきたんです。アメリアは優しい子です。多分、僕との事と家族や友人の事を考えて、ずっと苦しんでたんやと思います。
今、アメリアを市内のホテルに1人で宿泊させてます。僕はアメリアの事が好きやけど、アメリアの意志を尊重してあげたい。
「香坂さんは、それで良いんですか?」
私は、思わず苦しくなって、香坂潤に尋ねた。それは、未来のハロルドと私を、重ねたからなのかも知れなかった。
「アメリアが幸せになるんが、僕の1番の望みです。アメリアを異世界に戻してあげたい。協力してくれませんか?」
「協力とは?」
「羽生さんのマッチング相手の居る国も、アルトリアですか?」
「そうです」
「僕も遥さんも、出会ったマッチング相手の居る国は、アルトリアでした。現在、アルトリアの人間とコンタクトが取れるのは、羽生さんだけです。羽生さんのマッチング相手に、異世界へ戻る方法を探して欲しい。僕も、こっちの世界で、何とか方法を探してみます」
「分かりました。協力します」
「ありがとうございます。その代わりと言っては何ですけど、僕の経験から、早くレベルアップする方法とか教えますね。遥さん、羽生さんと連絡先交換させて貰ってもええかなあ?」
香坂潤が、春日部遥に尋ねた。
「ええ、勿論よ。元々、そのつもりだったし!」
「ありがとう、遥さん。今度、2人で大阪に来てえな。めっちゃ美味しいもん奢るわ」
「潤君、無理しないでね」
「うーん。正直、無理してるわ。ちょっと辛い」
「また何かあったら、連絡してきて。3人のメッセージのグループ作るから、悩み事とか、相談したい事、どんどんメッセージで送ってよ」
「すいません、助かります」
じゃあ、と言って、通話が切れた。
「課長、すいません。本当は課長の力になりに来たのに、2人して逆に課長に力をお借りする結果になってしまって……」
「いいのよ、春日部さん。それに、貴方達2人の情報は、とても有益だったわ。ハロルドに会える様になる、って知れただけでも充分よ」
腕時計を見た。時刻は20:30。ハロルドと会話が出来るまで、まだ時間はある。
「ねえ、春日部さん。カイルとの思い出話を聞かせてよ。ハロルドと話せるようになるまで、まだ時間があるの」
「この店、深夜までやってるので、良いですよ。私の惚気話を聞いて下さい!」
春日部遥は、ウキウキとして、想い人の話を始めた。
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