その殺し屋は初心

あめ かなた

プロローグ(飛ばしても可。たぶんわかる)

 命の重み

 おかしい。スマホを何度も見つめては、疑惑と不安が入り混じる。

 送ったメッセージを見返しても、残っているのはわたしが送った文。それに対して、既読すら付いていない。


 クリヤマは、優しい人だ。サンタさんみたいな、プレゼントをくれそうな。

 けれど、殺しの世界に足を踏み入れてしまっている彼は、裏側の住人。


 わたしもまた、足を踏み入れつつある。



 踏み入れつつある、というのは、まだ完全には入っていないから。人が死にゆくのを見てはいても、実際に殺したことはない。


「わたしなら、良いのに」


 わたしは裏側で生きること覚悟ならとっくに出来ているし、死ぬ準備すら、できている。

 それを止めるのが……クリヤマ。全く、優しい人。


「……やっぱりおかしい!」


 そんな彼がメッセージを返してくれないこと自体、あり得ないのだ。

 何かがあったんだ。すぐに悟れる。


 半信半疑で最寄りの駅まで来てしまったが、今日は学校に行くことは出来そうにないらしい。


「学校に通うのは、学生だけに許された特権」


 だから学校には休まず通え、とクリヤマが言っていたことを思い出す。



 でも。学業と命の重さ。どちらが大事かなど、幼稚園児でもわかる。


 わたしは通学と反対方面、東京行きに乗り込んだ。

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