第11話 デートの極意

『デートに行く志勢ゆきなりのために、俺が心音ここねから教わった「デートの極意」を教えてやる!』


 駅に向かう最中、ヒロの言った言葉を思い出しながら歩いていた。


『デートの極意、そのいち

「集合場所には十分前に着いておく」


 集合時間は朝の十時。俺は無事、九時五十分に駅前に着いた。

 あとはここで先輩を待とう。俺が駅前のベンチに腰掛けた──そのときだ。


「お待たせ、志勢くん!!」

「先輩!?」


 なんと先輩がすぐに駅前にやって来たのだ。

 女の子は基本遅れて来るらしくて、それには理由があるんだけど……。まぁ、先輩と早く会えたからいいや。


「ごめん、待った?」

「いや、今来たところです!」


 デートの極意、その──待たされたとしても、嫌な顔一つ見せない。


 だがしかし今回は全く待っていないので、不快な感情なんて微塵も湧かなかった。


『デートの極意、そのさん──相手の服装、髪型など、容姿を褒める』


「あっ、あの……、似合ってますね」

「ん? 何が?」

「えっと、その肩より前に出た三つ編みとか、白いTシャツに青いデニムのスカート。よく似合ってます!」


 これで合ってるのか?そう思い、不安になったが──。


「あ、ありがとう」


 先輩は照れくさそうに笑ってくれた。これで大丈夫だよな?


「ゆ、志勢くんも、似合ってるよ!」


 あれ? 俺も褒められたんですが??


「その、シンプルな髪型にシンプルな無地の白Tシャツ、シンプルな青ジーパン、よく似合ってるよ!!」


 あれ? もしかして遠回しに「地味な奴」って言われてる!?

 でも先輩なりに俺を褒めてくれてるのかな。と、俺は都合よく飲み込んだ。


「あと、えーっと……」


 必死に俺をフォローする先輩。


「かっ、カッコイイよ」


 だけどその後に言われた言葉に、俺は大きく心を動かされた。


「あっ、あざっす!」


 俺は嬉しくなって、つい頭を下げた。


「うっ、うん」


 頭を上げてみると、先輩は赤面して目を逸らしていた。やべぇ、超可愛い。



 〇



『デートの極意、そのよん


「満員電車から……先輩を守るべし……」


 人混みの中、俺は先輩をでんしの隅にやって、それに覆い被さるように俺が立った。

 電車が揺れる度に背中を押されて、先輩との距離が近くなるし、その度に顔が真っ赤な先輩がいて直視できないし──もう、俺は先輩から目を背けるより他なかった。



『その、道路沿いを歩くときは──』

(先輩を道路から離れた位置に歩いてもらう。これはいつもやってることだ)


 その後も、デートの極意をしっかりこなした俺。極意を一つ一つこなす度に頭の中でガッツポーズをしている。


 あとは黙ることなく、話題を振れたら100点満点なのだが──。


「あのさ、志勢くん」

「はっ、はい!」


 と思ったが、今日は珍しく先輩から話を振ってくれた。

 何を話すのだろう。そう思っていると、先輩は俺の腕に目をやって、こう聞いてきた。


「志勢くんって腕、思ったより白いね?」

「えっ、そうですか?」

「うん。でも、なんかガッチリしててカッコイイ」

「あっ、あざっす」


 先輩から『カッコイイ』と言われる度、身体に熱が走る。

 あまり聞き慣れた言葉ではないから、どうしても恥ずかしく感じてしまう。しかも相手が先輩だから、尚更だ。


「中学のときは、何やってたの?」


 いつかは聞かれるだろうとは思っていた質問。だけどいざ聞かれると、どうも答えるのが恥ずかしい。

 それでも俺は……。


「……バスケ、やってました」


 と、頬を掻きながら答えた。


「へぇー、バスケかぁ」

「あっ、でも、俺みたいなやつ、大したことないですよ!」


 先輩が少し興味津々そうに食いつくと、咄嗟に俺は逃げるように言った。


「それにバスケをやってる俺なんて、先輩が思うほどかっこよくないですし」


 更にはこんなことまで。


「えっ、でも」


 だけど先輩は──


「私、見てみたいな。志勢くんがバスケしてるとこ」


 ニッコリ笑って、俺への期待感を見せてくれた。


「ほら? そろそろ球技大会あるでしょ? そのときに見られたら……って思うんだけど?」

「……そうですね」

「いや、無理にやらなくていいよ! 他のスポーツ選択しても私、見に行くから!」


 なんと、俺の姿を見に行く前提になっているとは!?


「心音ちゃんと一緒に!」


 あっ、やっぱりか。でもまぁ、先輩らしいからいいや。

 でも、先輩が俺の姿を見に来るのか。


「わかりました」


 だったら、カッコイイ姿を見せたいよな。そう思い、俺は決心した。


「俺、バスケやります」


 そう言うと、先輩は「楽しみにしてるね」と輝かしい笑顔を向けてくれた。


「それじゃ、俺も見に行こうかなぁ」

「いや、いいよ! 私のことは!!」


 少しニヤリとしながら言ってみると、先輩は必死に両手を振って、頬を紅潮させた。


「いいじゃないですかぁ。で? 先輩はどの競技に参加するつもりなんですか?」


 そう聞くと先輩はモジモジしながら「卓球……」と、小さな声で答えた。後から「心音ちゃんが卓球やるから」と付け加えて──実に先輩らしい選択だ。


「あっ、そろそろ着きますよ?」


 話が盛り上がったところで、目の前にショッピングモールが見えてきた。

 ここからが、本番である。



【後書き】


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