第48話 迷宮探索2日目
夕べの痴態を反省しつつ、だがしかし、迷宮はこの先も楽しそうだと思ってしまう。数を倒すと、段々興奮してしまうんだよね。仕方ないんだけど。アドレナリンが分泌されて興奮状態になるのはどうにもならないなぁ。まあ、近寄って誘惑されたりしなければ何もないのだけどね。
うちの嫁ズは、優しい女ばかりの様だ。甘やかし放題だのだから。昔、レーシングカートをしていた時代を思い出す。高校生だった。バイトして、カートにつぎ込みレースをしては、自分で車を弄る。剣術もやっていたが、こんな事もしていた。
週末にレースがあると、レース後は興奮が治まらなかったんだよなぁ。今がそんな状態なのだ。よく冒険者はパーティに女性がいると、野営の時に襲われたとか、結婚したとか聞かされるけど、吊り橋効果であったり、こう言った興奮状態になってやってしまったりとか、やっぱりあるんだろうと思う。
依頼の後に、酒を飲んで終わりに出来る人も当然沢山いるが、娼館直行組は、やはり多いのだそうだ。命がけだと、それだけストレスになるからね。それでも辞められないのが、冒険者なのだろう。
迷宮に潜ると良く分かる。迷路になっていて出口が分からずストレスが溜まっていく、探している間中、魔物が出て来て戦闘になりながら、ストレスを溜めていく、そうして、目的地に辿り着いた、或は目的の物を入手したとなれば、その達成感たるや何物にも代え難い物だろう。
達成感を味わいながらも、溜めたストレス分だけ、興奮もまた持ち帰ってしまうのだ。そうしてみると、男にとって女性とは偉大なのである。感謝して生きていきたい物だと思う。
俺には、13人。これから増える3人も入れたら、16人もの偉大な伴侶がいるのである。有難い事だよね、こういった魔物が闊歩する、命の値段が安い世界での、一夫多妻は理に適っているかもしれないな。
昨日の痴態の後、直ぐに寝てしまった為、めっちゃ早起きをしてしまい、手持無沙汰のマサキなのだが、そんな事を考えていた。今日は、起きても誰も隣にいなかった。気を遣ってくれたのだろう。
今日は、10階層からスタート出来そうだし、朝一から行ってみるかな。迷宮を攻略しないと、大森林に取り掛かれないからな。
ボケボケしていただけだが、やる事も無いので、せっかくある温泉に浸かる事にした。若干硫黄の臭いがするので、火山性の温泉なのだろう、何れにしても気持ちがいい。風呂場まで静かに来たのだが、誰か起こしてしまっただろうか、脱衣所の方で物音がする。まあ、入って来るなら来ればいい。
ユイとルミエールだった。温泉が気持ちいいので、早朝、仕事前にいつも入る様にしているのだそうだ。肌の調子が良いのだそうだ。旦那様が入っているのに申し訳ないと言うので、気にする必要はないと言っておいた。2人とも手を付けてしまったのだし、言わば愛人なのだ。
屋敷に於いて、執事やメイドが主を呼ぶときは、旦那様が正解なのだそうだ。全然知らなかったんだけど、そういう物らしい。ご主人様ではないんだと。まあ、俺がご主人様などと呼ばせる事はないんだけど、なんかの読み過ぎかもしれん。あ、メイド喫茶がそんな感じだったかもしれないな。
2人の裸を満足いくまで鑑賞したので、先に上がる事にした。浴衣を着て脱衣所を出ると、霧がもう起きて朝の支度をしている様だ。ちゃんと睡眠とらないと早死にする未来しか見えないんだがなぁ。と思ったら、くノ一3人娘は全員起きて何かしていた。
これは、1度ルールを決めた方が良いかもな。彼女達は命令と言う形で強制しないと楽をしてくれないのだ。頭が下がる思いなのだが、もう少し手を抜いて欲しい、体の為にもね。
見なかったフリをして寝室へ上がり、装備に着替え再び1階へと降りて行った。霧にお茶を一杯頼んだ。嬉しそうにお茶を運んできた霧を、ちょっと俺の方に抵抗があったが、腰を捕まえて膝の上に座らせた。
「霧。ちゃんと寝ているか?」
「寝ていますよ?」
「昨日は夜、いつ頃寝た?」
「昨日はそうですねぇ、上様がお休みになった後、朝の下拵えだけしてから寝ましたよ?」
(下拵えに1時間として4時間しか寝てないな。弥助といつしてるって言うんだ?)
「それは、寝たとは言わない。そんなんじゃ、弥助とイチャイチャする時間もとれないだろ?」
「まあ、そこは上手くやっていますよ。」
「寝る時間を削ってな。」
「…………はい。」
「睡眠時間と言うのは、後々になって体に響いて来るものなんだ。今が大丈夫だとしても、5年後、10年後に病気になったり、倒れたり、と出てきちゃうんだぞ?
俺は、霧にいつまでも美しく健康でいて欲しいと思う。それ故、しっかりと寝て欲しいんだ。分かるか?」
「でも……。上様のお食事は、せめて私がご用意させて頂きたくて。」
「何故だ?桜達だって出来るだろ?俺だって自分で出来るんだし。」
「桜ちゃん達は、上様に抱いてもらえるじゃないですか。私は、上様に頂くばかりで、何もお返し出来ていません。ですから、せめてお食事のお世話だけは、私がしたいのです。」
「うーむ、霧は充分に働いてくれていると、俺は思っている。どうして、それを解ってはくれないのか。」
「上様は狡いです。私達を慈しむように大切にして下さるのに、どうして私の心は受け取って頂けないのですか?」
「ならば霧、俺はどうしてやればいい?どうしたら、ちゃんと寝てくれる?」
霧が少しだけ溜息を吐き、呆れた顔をして、
「上様は、そんな事を気にしなくて良いのです。私達もちゃんと体の事は考えています。昼間の上様のいない時間に昼寝をしたり、桜ちゃんや椿ちゃんと仕事を交代したり、体はしっかり休めていますよ。
上様は、もっと私達を信用して下さい。本当に心配性なんですから。そんなに心配なら、私を抱いて一緒に寝てくれても良いんですよ?」
と、霧は悪戯っぽく笑ってキッチンへ戻って行った。
マサキは、そんな霧の後姿を見て、気をまわしすぎたかと少し自嘲しながら、霧が用意してくれた朝飯を食べた。やはり女性には勝てないなと、男と言うのは無力なんだなぁと思ってしまうのである。まあ、霧に関しては、弥助の仕事だわな、俺が出しゃばるべきではないのだろう。
食事も済ませたので、迷宮までゲートを開こうかと思ったが、昨日の事もあったので、ギルドに顔を出してみる事にした。
ギルドに着くと、早朝にも関わらず、掲示板の前には沢山の冒険者が立っていた。あ、掲示板だと早い者勝ちになっちゃうから、みんな早いんだな。と、独りで納得して、窓口へ向かった。アンナに聞いたところだと、昨日の女性4人パーティは、元々は3人パーティだったんだそうだ。迷宮に行くのに、Bランクの女が1人、どうしても入れて欲しいと言う事で、急遽一緒に行く事になったんだそうだ。
それが、何も考えず突っ込んで早々に死んだ女らしい。Bランクまで上がるのもかなり強引な手段を使っていたらしいが、何を考えているのかは、誰も分からなかった様だ。そう、Bランクまでは、ポイントで上がって行くから、討伐パーティに無理矢理紛れ込んだりして、ソロでは出来ない依頼をこなしていたとか。
その1人を入れたが為に、もう1人が死んでしまったと言うので、残った2人は怒りのやり場に困っていたそうだ。へぇ、強いんだな、ショックを受けるんじゃなくて、怒るんだなぁと感心してしまった。Bランクまで上がったのは伊達ではないのだろう。
そんな話を聞いて、特に規制などは今のところないと言うので、迷宮に向かう事にした。ギルドを出て屋敷の敷地に戻ると、迷宮の入口の裏手に【
入場ゲートを入る前に、昨日入手した、証と言う奴を取り出し、手に持って入場してみた。だが、普通に1階層だったので、どこかに触るのかと周りを見ると、石碑があったので、そこまで行って触ってみた。そうしたら、転移魔法陣が現れたので、乗ってみた。視界が歪み転移した様だ。
10階層の石碑の横に出たので、そこから11階層の入口を降りて行った。が、文字通り巨大迷路の様だ。入口から見ただけで、進行方向は3方向ある。ここからは罠も有りそうだ。入口の兵士が言っていた迷うと言うのは、これの事だろうと思った。これで、20階層まで行くのは、野営も必要かもしれないな。
考えても仕方ないので、魔力を広げて様子を探りながら行く事にした。うーむ、魔力感知が使えれば、これ迷わないんじゃないかなぁ。正解の道筋が見えるんだよねぇ、罠も。進んで行きながら、魔力をぶつけて罠を発動させて見る。エゲツナイ、これが印象。だって即死級の罠なんだもん。落とし穴は、底が見えないし、槍が天井から降って来るんだぜ?そもそも、この槍はどこから持ってきたんだと、小一時間問い詰めたいわ。
流石に危険だし、時間も掛かり過ぎるので、【
だが、罠ばっかりで魔物がいない。つまらんなぁと思っていたら、12階層の入口まで来てしまった。まだ、先は長いと思い、そのまま進んだ。12階層に降りると、11階層と何が違うのか、分からない位同じ景色だった。まあ、岩の壁しか見えない訳だが。
この階層は、罠がありながらスケルトンが出て来ると言う、なかなかシュールな階層だった。スケルトンを殴るのが気持ちいい。殴ると、気持ち良く骨がバラバラになるのだ。復活しちゃうんだけどね。それも、殴りながら魔石を抜けば良いだけみたいなので、問題にならなかった。しかも、罠を発動させると罠にハマっていくのよね。楽しいわ。
13階層は、臭い。ゾンビエリアの様だ。兎に角、ゲロ吐きそうな位臭いので、全部避けて走った。触りたくないし。しかし、50体位のゾンビが14階層への通路を塞いでいたので、余りの臭さにどうしようかと思ったが、高熱の【
光属性なんて使うところなかったから、忘れてたよママン。14階層は、また臭いのだ。ちょっと気持ち悪すぎだろ、しかも迷路だし。この臭い試練を【
ここで衣服に【
この階層は、レイスばっかりで、魔法がバンバン飛んでくるが、通路が狭いので、避ける訳にもいかず、【
16階層に降りると、広大なドームになっていて、骸骨がひしめき合っていた。走り抜ける隙間もないので、入口で魔力を練り上げ、【
17階層から19階層は、14階層~16階層までと同じ繰り返しだった。つまらん。そして20階層のボス部屋手前で、少し休憩をした。膨大な魔力を持ってはいるのだが、使い過ぎると疲れるのだ。パンに串肉を挟んで串を抜き、そのままパンにかぶりついた。ん~、醤油味とパンもなかなか合う。
ここまで、死霊シリーズだったが、ボスはなんだろうなぁ、臭くないのが良いなぁ。まあ、行くかと立ち上がり、スマホを取り出して、電源を入れカメラを起動した。そのまま、大扉を押して中に入ると、扉が閉まった。スマホの画面を見ていたら、敵が現れた。
スケルトンナイトが4体に、スケルトンキングだそうだ。スケルトンキングは身長が3m位ある、そして何故か4本腕なんだよ……しかも4刀流。元人間の骨とかじゃないのね。刀を抜いて正眼に構えたものの、どう戦うかイメージが湧かない。どうした物かと考えていたら、スケルトンナイトが切り掛かって来たので、体を捌きながら、首を切り落としたが、当然復活するので、そのまま頭蓋骨を踏みつけて、砕いてやった。中から魔石が出て来たので、蹴り飛ばして、1か所に集めておいた。
問題は、キングなんだよなぁ、4本の剣を1本の刀で捌く。出来なくもないか、やってみよう。本来、剣術家は刀と刀をぶつける様な事は滅多にしない。折れるか曲がるかしてしまうからだ。鍔迫り合いとは文字通り、鍔と鍔を合わせた状態若しくは、刀を鍔で受けた状態なのだ。
だが、そこは神様印の破壊不能の刀なので、受け流しながら、1本ずつ腕を落としていく事にした。スケルトンキングの懐に飛び込むと、下段右腕を切り飛ばし、返す刀で下段左腕を切り飛ばした。一旦、飛び退り間合いを開けると、スケルトンキングは2刀を大きく振り上げ、交互に振り下ろして来た。一刀目を避けると、二刀目を刀で受け流しながら懐に入り込み、胴体を横一文字に切り裂いた。
崩れて来た、スケルトンキングを一刀両断にして、頭蓋骨の中から魔石を抜いた。意外に面倒だったなぁ。あ、重力魔法使えば楽だったかもと思ったが、もう遅い。刀での戦いに熱くなっちゃったね。
大き目の魔石を4個と、握り拳位の大きさの魔石を1つを手に入れて、また箱が出て来た。10階より少し大きい箱だったが、中身はやはり金貨が詰まっていた。箱さら異空間に仕舞って、出口の扉を出ると、石碑に足を進めた。やはり証なる物があり、また20階層からスタート出来る様だ。
今日は、魔法使い過ぎて疲れたので、帰る事にした。魔法陣に入ると1階に転移したので、出口に向かった。出たところで、兵士に挨拶をして歩いて、街道方面に足を進め、どこでゲートを開こうかと考えていたら、話し掛けられた。
「あの、昨日はどうもありがとうございました。」
「ん?」
と振り向くと、昨日の魔法使い姉ちゃんと神官服姉ちゃんだった。
「昨日の今日でもう、潜るのか?」
「いえ、前衛なしでは無理なので、当分は入りませんよ。ただ、借りを作りっぱなしなのも気持ち的に落ち着かないので、何かご要望があればと。」
「ん~とさ。迷宮から出て来た時って、苦戦していなくても、体が興奮状態になっているから、そういう事を言われると、困るんだよね~。襲ってしまいそうになるからさ。それに、貸しだとは思っていないぞ。」
神官娘が首を捻った。
「どうしてですか?混乱していた私達を、ギルドまでも送って頂いたのに。」
「Sランクも俺は主席だからさ。大人が子供に貸しだとは言わないだろ?それと同じ理屈だよ。冒険者の頂点にいる俺が、他の冒険者に手を貸したって、貸しとは言えないだろ?」
「主席?」
「ああ、名乗ってなかったな。Sランク冒険者主席マサキ・タチバナだ。よろしくね。俺の依頼料は高いんだ。だから、金には困っていないし、手が欲しい時は、依頼を出すさ。」
そう言うと、マサキは背を向けて手を振った。2人は呆然と見送っていた。
迷宮入口の裏へ行くと、【
ギルドの買い取り窓口へ行って、
「迷宮で手に入れた魔石を売りたいのだが。」
と言うと、テーブルの上に出せと言うが、乗る訳がないので、
「いや、ここじゃ場所が足りない。」
と言ってやった。
そうしたら、カウンターの内側の、床に出してくれと言うので、出してやった。800個位。文字通り足の踏み場もなくなった。ギルド職員達は、慌てて拾いながら数を数え始めた。一定数毎に袋に詰めて行き、最終的には、830個あった様だった。
「では、全て買取りで宜しいですか?」
「うん、構わない。」
「計算致しますので、少々お待ちください。」
そう言って、買取り職員は計算を始めた。
「全部で、166万リルとなりますが、宜しいですか?」
「いいよ。カードに入金してくれ。」
と言って、ギルドカードを渡した。
職員は、カードを見てギョッとしていたが、入金してくれた様だ。今日は臭かったからなぁ、さっさと風呂入って一発やるかぁと思っていたら、迷宮の情報をくれと言うが、まだ20階層までしか行ってないぞ。と言って、また今度なと言って措いた。
「ちょっとお待ちください。今、20階層と仰いましたよね?」
「ああ、昨日10階層まで行って、今日は、10階層から20階層まで行って来た。27階層までは攻略済みなんだろ?」
「お一人で、2日で20階層ですか……。さすが、主席様ですね。では、頃合いを見計らって。情報提供頂けますか?」
「ああ、それは構わないぞ。少しはギルドに貢献しておかないとな。」
「ありがとうございます。」
ギルドから外へ出ると、夕方前、時間で言うと午後の3時と言ったところかな。早く行ったのが良かったな。このペースなら嫁ズを心配させる事もないだろう。
結局、この日は屋敷に帰って、即行で風呂に入った。早い時間にも関わらず、みんなが入って来た。気を遣い過ぎだろうと思うが、なんか勝てない気がしたので、何も言わなかった。
この後、軽く酒を飲んで晩飯前に少し寝ようと思ったが、体が興奮状態なので、寝が冴えてしまい、寝付けなかったので、ユイとルミエールを1回戦ずつしてたら、晩飯になってしまったので、1階に降りた。
ちょっと残ってしまっていたので、激しくても大丈夫そうな、メイリーナの部屋へ行って、3回戦して、メイリーナのベッドでそのまま寝た。
あ、迷宮内でゲートが開けるか、実験するの忘れた。明日でいいか。
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