エリィ・ゴールデンと悪戯な転換〜ブスでデブでもイケメンエリート〜

四葉夕卜

第1章 エリィという少女

第1話 目覚め①


◯まえがき◯


「エリィ・ゴールデンと悪戯な転換〜ブスでデブでもイケメンエリート〜」


 双葉社より①〜⑧巻が発売中!

 コミカライズ①〜②巻も発売中です!


 2015年からなろうで連載していたものを掲載していく予定です。

 当時のノリをそのままにしているため、読みづらい箇所があるかと思いますが何卒ご了承くださいませ。

 それでは本編をお楽しみください・・・!


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 目を開けると、白いレースの天蓋が風になびいて優しく揺れていた。


 やけに身体が重く感じる。

 ここがどこなのか分からなかった。


 自宅の寝室に天蓋付きベッドなんて置いていないし、こんな豪華な内装の家を持っている友人もいない。


 どうやら、またやってしまったらしい。

 いや、ヤってしまったと言い直したほうがよさそうだ。


 きっとクラブか飲み屋かバーで引っかけたどこぞの女とアレに及んで、しかも泥酔して記憶がない、という最悪パターンだ。そしてここはどこかのホテルだ。ラブホテル。間違いない。


 重い頭を左右に振った。


 隣に見知らぬ女が、と思ったがそんなことはなく、ベッド脇にあるテーブルに清潔そうな白い洗面器が置かれ、同じく清潔そうなタオルがかけられている。品の良い絨毯が敷かれた、十畳ぐらいの部屋だ。


 家具はベッドと高級そうなタンス、あとは椅子がいくつか置いてある。どれも高級そうで、英国風でエレガントなものだった。


 病院?


 いや、それにしては妙に豪華だ。見れば見るほどおかしいと感じる。


 天蓋付きのベッドに、素材が不明のこげ茶色をしたシンプルなカーペット。ベッドの手すりには奇妙な模様が描かれていて、その端にはどこかの知らない神をモチーフにした女性の絵が親指ほどの大きさで彫られていた。家具をよく観察すると、高級そうではあるが、エレガントというよりは作りが大味な気がしないでもない。中世風な演出、ここに極まれり、といった様相だ。


 豪華、というよりは、レトロ、と表現したほうが的確だろう。


 ……ちょっと不安になってきた。


 昨晩、仕事が終わってからのことを反芻する。


 花金だ! と叫んで同僚と六本木に繰り出し、よく行く高級な和食屋で飯を食べ、そのあとバーで飲んでからクラブでVIP席を取って、女の子をとっかえひっかえして何度もシャンパンを乾杯した。


 同僚が昇進した祝いもかねて、しこたま酒を飲んだ。

 ネクタイを振り回して踊りまくった。

 そのあと気に入った女の子二人を引き連れて外に出た。


 ここまでは憶えている。


 そこから先の記憶が、霧がかかったように思い出せなかった。

とてつもなく重要なことで思い出さなければまずいことになる、と本能が警告を始めた。


 思い出そうとすればするほど、心臓の鼓動が速くなり、頭の中が焦燥で破裂しそうになる。嫌な予感が心を駆け巡り、全身から汗が噴き出していた。


 気持ちの悪い冷や汗が、額からだらだらと流れていく。

 俺は、あのあと、何をしたんだっけ?

 どうしてこうなったんだ?


 もう一度思い出そう。


 クラブでVIP席を取ったところまでは記憶がはっきりしている。そして三番目にナンパした女の子の足が綺麗で、ずっと触っていた。色白できめ細かい肌で、あれは気持ちが良かった。


 いやちがうちがう、その先だ。

 その子をつかまえ、同僚はギャルみたいな軽そうな女にもたれかかっていた。

 全員酔っ払っていた。


 そして店を出て、飲み直そうということになり……。

 そうだ、タクシーを呼んだんだ。


 そこまで思い出し、強烈な事実に、ぞわりと全身が震えた。


 そうだ……。

 あのあと俺は……。



――暴走してきた黒塗りの高級車に、轢かれたんだ。


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