第7話「地雷処理班」
野菜コーヒージュース。
とんとんとん、と小気味いい音が連続する。
200mlの紙パックが三個置かれた音だ。
置いたのは富岡。
やつは笑顔で言った。
「飲め」
「ふざけるな」即答。
「命令口調はよくないぞ」ちょっとずれてる大田。
「説明しろ」
「あーそれはいつもの退屈な日常だった」
「昼休みあと五分だぞ。まとめろ」
「昼飯買いに行ったらコンビニに置いてあったので買った。みんなで飲もうと思って。衝動的に買ってきたが後悔はしていない」
「で、なんだこれ」と言って改めてそのパッケージを見る。
上が野菜の緑やオレンジで下がコーヒーの茶。それらが中心辺りで渦を巻いて混ざっている。それが毒々しい。サイケな感じすらする。
明らかに人の食欲をそぐようなデザイン。
「こういうの見ると飲んでみたくなるのが人情ってもんだろ?」
「お前人情を辞書で引いてこい」富岡はスマホで調べそれを突き付けた。
「とにかく飲もうぜ。時間ないし」
「僕は飲まないぞ」断固拒否の姿勢。
「俺、コーヒーって苦手なんだよな」太田の援護射撃。よし。
「ほら、みんな迷惑してるんだ。これは全部自分で処理しろ」
「えーこういう苦楽を共にするのが真の友情だろ?」
「いいこと言った風に言うな」
「くそぉ。ノリが悪いぞぉ」と言いながら一つ取りストローを刺した。
一口。
「・・・」ずず。
「・・・・・・・」ずず。
「どうなん?」と太田。
「・・・・」
「ほらめちゃまずいんだよ」と僕。
「・・・・教えん」
「は?」
「教えんからなあああ。これが、どんな味なのかああ。まずいのか、意外と結構いける感じなのかとかあああ。絶対教えない。ぜったああああい教えねええ。お前らはこれがどんな味なのかという永遠の謎に悶々としながら死ぬまで苦しめばいい」
「相変わらず大げさだな。全然気にならないから安心しろ」と僕はにこやかに言った。
「ちったあああ気にしろおおお」
「めちゃくちゃな奴だな」と太田。
「おーい」と伊出先生登場。
「どうしたんです。次の授業は現国ですよ」と僕は先生がビニール袋を持っているのに気付いた。
「いやー面白いものがあったからみんなにもおすそ分けしようと思って」
とんとんとん、と小気味いい音が連続する。
野菜コーヒージュース。
「二度ネタ禁止!!」
●了
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます