第11話 作戦会議/図書室
今日春香のクラスの授業がある。
春香に会ったらどうすれば?戦う?(正確には逃げるなのだが)何も無かったかの様に普通に接する?
相手の出方次第だが、先に幾つか対応パターンを決めないと…
泰介は昨日自宅アパートの一室で「教え子に殺されかけた」という異常な体験をしたが、人に話すわけにいかない。
いや、話せば話せる。能力で出すサーベルを言わぬとしても。だが、生徒が殺人未遂したとして警察、学校に話すにはまだ決定的ではない。親御さんにも。
泰介はまだ春香が良くわからなかった。
春香のクラスの授業の時間が来た。
じっと見てくるでなく、視線を合わせないでなく、何も変わらず。
むしろ泰介の方が目をそらせてしまった。
博樹も「多分、学校では何も無かったふりすると思うよ」と言っていた。
この敵の出方を待つ状況に耐えきれず、泰介は体育館にバレー部の練習を見に行った。
運動部特有の掛け声が響き渡る。率先して声を出す春香。
「普通の生徒だよな…どうみても」と泰介は呟く。「篠崎が指示出してるな…部長なのかな」
帰宅後、家にいても何もなく、翌日も学校で何も起こらなかった。
泰介はまた体育館へ行って見たがバレー部は休みだった。
拍子抜けした泰介。
春香のサーベルを、壊れた台所を、半分に割れたiPhoneを思い出して、
「本当にあったんだよなあ」と呟き、抱きつかれた時の感触も思い出して
「そういや、『先生の事好きなのがバレた』とか言ってたけど、あれ、嘘だよなあ」
等ボーッと考えていた。
「先生」
「うおびっくり!」と叫ぶ泰介。相手は博樹だった。
ちょっと作戦会議がしたい、と博樹が言うので泰介は図書室へ連れていった。
図書室は電気はついているが誰もいない。
立ち並んだ本棚、その一つの棚の前で博樹の話を聞きながら本を物色する泰介。
「石碑の欠片、今どこにあるの?」
何も答えない泰介に博樹は続ける。
「篠崎は学校休んでまで先生んちに盗みに行ったし、何処か安全な場所に隠した方がいいんじゃないかと」
棚から取り出した本を捲りながら「そうだな」と泰介。「見てみるか?」
「学校にあったの!?」驚く博樹。
持ってた本を棚にしまい、こっちだ、と泰介は別の本棚に行く。
博樹は図書室の入り口を凝視し、反対側の用具室をちらっと見てから泰介の後を追った。
本棚に並ぶ本と本の奥に箱があった。
蓋に泰介が手をかけた時、春香の声がした。博樹はもう身構えてた。
「先生、それをそいつに渡しちゃ駄目」
図書室の入り口から春香が入って来た。
博樹は「さあ、先生、俺の方が安全だ、俺に渡して」
「先生、そいつは先生を騙してる!私にも渡さなくていいからそいつには渡しちゃ駄目!」
「え?」泰介は動揺した。
隙を見て博樹は箱を奪い、反対側の出入口に走る。
春香が追う、泰介の目の前を通りすぎる。
博樹は床に倒れた。
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