月暦3 誤解を招く言い方に気をつけて
「今日のニュース見た!?」
登校中、会って早々宮浜が話を振ってきた。
世凪は何のニュースの話をするのか大体予想はついていた。
「この間の電車のニュースでしょ?」
「そうそう!」
先日、映画に行った帰りの電車でトラブルがあったあれだ。
「結局、何をやりたかったのか分からないからなあ。」
防犯カメラの映像や、不審な男の目撃情報によってすぐに特定されたらしい。
だが、その捕まった人間は黙秘しており、動機が一切不明なのだ。
「まあ、捕まっただけありがたいよ☆
ちなみにみなっちゃん、今日の実習の自信の程はいかに??」
「うーん…昨日久しぶりに夜更かししたからなぁ…」
「テスト前でもないのに!?」
「ちょっとテレビ通話してたのね」
「だれと??」
「「「男」」」」
"男"と発したのは世凪ではない、別の誰かだった。この時間にこの声、もうあの人らしかいないだろう。
「若倉、星合、山岸、余計なこと言ったから、こはくのテンションが上がるよ。」
「うわっ、それは勘弁して」
若倉の一言。
「授業までひきずらないでくれ…」
星合の一言。
「俺言ってない」
山岸のしらばっくれ。
「みなっちゃん、男いるの!?」
宮浜のハイなテンション。
「こりゃだめだ。」
諦める世凪。
* * *
世凪が案じた通り、宮浜は教室で情報発信活動をしていた。彼女の情報拡散力、発信力ときたらTwitter並みだ。
世凪は別に困らないことはないけどさ、と諦める選択をした。
「桜都まだ来てないの??また、朝からいちゃこらしてんでしょー☆」
松風は基本的に遅刻なんかはしない性格なのだが、これまた手のかかる者を連れているためいつもギリギリなわけだ。
「間に合った〜!」
身長152センチの松風の後ろに立つ、身長184センチの男、彼が松風の彼氏だ。
ワイシャツは第二ボタンまで開け、ネクタイを緩ませ、髪はボサボサなのか、いじっているのかわからないが赤い髪を持ち、顔つきは良く、右下の顎にほくろがある。色気を感じる容姿だ。松風とは真逆と説明したら分かりやすいだろうか。
このカップルの評判はというと、
「松風さん、あんな奴の面倒見てるとか本当にかわいそう。」
「なんであの月影が松風と付き合ってるのか未だにわかんねぇ。」
この通りだ。教室に入ってきた教師、担任の小早川先生も何度か注意をしてきた。
「松風さん、あなたの学校生活に支障をきたさないようにね。」
「支障をきたしたことは、一度もありません。」
松風の強い反論に担任の小早川も「まあいいわ…」と会話を流した。
小早川の汚いところは、月影には警告しないというところだ。彼は恐れられている。人が寄り付かず、距離を取られ、扱いには配慮される。それには理由があるからだ。
「桜都、今日もギリギリだったねー!」
「うんうん!朝から走っちゃったよ〜」
世凪と松風は隣同士であり、前には山岸と星合、後ろには若倉と宮浜が座っている。
「今日はなんで遅かったんだ、月影?」
美少年、いや、美少女にも間違われそうな色白の少年が後ろを振り返り月影に話しかける。
「大后、嫉妬するなよ?どっかの松風さんが俺のベッドに入ってきたせいで二度寝した。」
「…えっ、そうなの?」
松風の通路を挟んだ隣、大后武仁(たけひと)という唯一月影に気安く話しかける男子がいる。彼は松風に春に一度告白したが振られ、いまだに未練たらたらな訳だ。そのため、月影の発言にかなり動揺していた。
大后は松風を見て問いかけるが、本人は話を聞いていなかったため、頭にはてなマークが付いているような顔で目を合わせた。
「おい、月影。俺をからかったんだろ。」
「正解。」
「まあ、からかわれてもいいさ。松風と俺のほうがお前よりつり合ってるからな。」
周りの男女共にうなずく。大后が松風に告白をしたのは学校中で騒がれた。なぜなら二人の容姿ときたら付き合ってほしいペアだと前々から言われていたのだ。結局、その頃にはすでに松風と月影はできていたため大后が入る隙などなかった。
月影は大后の顔を見て楽しそうに、エピソードを追加する。
「へぇ〜、まあ良いけどさ。松風とは色んなことしたから言えるんだけど、その辺やさしくしてやんないと嫌われるぞ?」
と、性格が悪そうに口角を上げて松風を見る。
「つっきー!!余計なこと言わないの///」
「えっ、それ肯定してんの?えっ?」
大后がまたも動揺する。月影はクスッと笑い、真っ赤な顔をしている松風に話を振る。
「松風も楽しそうにしてたじゃん、一昨日の夜。なに?俺とやるのそんなに嫌だった?」
「嫌じゃない…嫌じゃないけど!もっとやさしくしてほしい…だって意地悪なんだもん///」
松風は顔を真っ赤にして照れている。その様子を見て大后が月影の胸ぐらを掴み、キレ出す。
「てめぇ、ふざけんなよ?俺の松風泣かしたりなんかしたらタダじゃ済まされねぇから、いや、もういっそのこと一発殴って良いか?おい。」
月影は更に笑い出す。
「松風ー、今日も…やる?」
「やるやる!家でやって上手くなったんだよ〜!!バイOハザード」
「えっ…」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます