再会

文月 香奈

第1話

扉を開けると、心地良いドアベルが鳴った。


都内で人気のインドカレー屋。

お昼時は行列になることもあるらしいので、その時間帯を避けて、14時半頃店に着くようにした。

店内には3組ほどの客がいる。

テーブル席には若い女性の2人組と、カラフルな服を着た年配の男性1人、カウンター席には、常連だろうか厨房のコックとと親しげに話す男女。


「空いている席にどうぞ。」

厨房の洗い場にいる男性がちらっと入口の私を見て言った。

私は日当たりの良さそうな窓際のテーブルに腰を下ろした。


店内は静かにジャズが流れている。オーナーがインドで買い付けたというインテリアの数々。雑多だけれど、なぜか調和が取れていて、居心地がいい。甘い香りと、スパイスの香りが混じり合い、目を閉じると異国いるような気分になる。

窓からは通ってきた路地が見えた。懐かしさと不安で何度も進むのを躊躇いながら歩いてきた道。


「おまたせしました。」

先程洗い場にいた男性が水とおしぼりとメニューをテーブルに置いた。

「今日のランチはあいにく完売してしまって。でも、カレーも各種ありますし、アラカルトやデザートもあるので、ご注文が決まったら呼んでください。」

「はい…。」

私は俯いたまま、そう答えるのが精一杯だった。

男性は厨房へ戻っていく。

(よかった。私のことなんて覚えてないよね。)

安堵と同時に、少しだけ寂しさも感じて、自分で可笑しくなり、口元を押さえた。

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