嫌いな私を切り裂いて、切って繋いで継ぎ接いで

@himagari

嫌いな私を切り裂いて

「あなたの事が好きでした」 


 思いを込めた私の告白。


「俺、髪が短いほうが好きなんだよね」

 

 あなたがそう言って私をふったので私は翌日髪を切りました。


「あなたの事が好きでした」

「俺、頭が良い子が好きなんだよね」


 あなたがそう言って私をふったので私は塾に通い始めました。


「俺眼鏡の子ってタイプじゃないんだよね」


 あなたがそう言って私をふったので私は眼鏡をやめてコンタクトレンズに変えました。


「俺肌が白い子が好きなんだよね」


 あなたがそう言って私をふったので私は美白を求めて肌の手入れを始めました。


「俺背が高い子のほうが好きなんだよね」


 あなたがそう言って私をふったので私はたくさん牛乳を飲んで早く眠って厚底の靴を履きました。


「俺銀髪の子が好きなんだよね」


 あなたがそう言って私をふったので私は髪を染めました。


「俺、ピアスしてる子が好きなんだよね」


 あなたがそう言って私をふったので私はピアスの穴を開けました。


「俺、胸が大きい子が好きなんだよね」


 あなたがそう言って私をふったので私は豊胸手術を受けました。


「俺、芸能人の✕✕みたいな顔が好きなんだよね」


 あなたがそう言って私をふったので私は✕✕の顔に整形しました。


「俺、隣のクラスの○○みたいな優しい性格の子が好きなんだよね」 


 あなたがそう言って私をふったので私は○○さんと仲良くなって優しい性格を作りました。


「俺――」

「俺――」

「俺――」


 あなたは何度も私をふって私はその度に貴方の好みに近づきました。



――――――それなのに。


「俺、あの娘のことが好きなんだ」


 そう言ってあなたが指差したあの子は髪が長くて頭も良くなくて眼鏡を掛けてて背も低くて黒髪でピアスはしてなくて胸も小さくて✕✕になんて似てなくて○○さんみたいに優しくない。


「お前に嘘をついてたわけじゃないんだ。お前の見た目も性格も凄く好みなんだけど、俺はあの娘が好きなんだ」


 あなたが嘘をついてくれていたなら良かったのに。だって嘘ならまた私を作り直せばいいんだから。でも見た目と性格が好みならもう好かれようがない。


 じゃあ私とあの娘は何が違うんだろう?

 あの娘は彼のことを好きじゃないのに。

 見た目も性格も好みであなたを愛している私より、あの娘を選ぶ理由は何なんだろう?


………………私だから、なのかな?


 あ、そっか。私じゃ駄目なんだ。



 あなたが私じゃ駄目だと言ったから、私はあの娘の見た目になって一月ほど生活した。


「んんん!〜〜ん!!」

「もう、暴れないでよ△△さん。殺したりなんてしないから」


 私は拉致した少女に笑いかける。私じゃ駄目ならもうこうするしかないよね。


 手に持ったナイフを振りかざし、私は△△さんに向かって――





 二人の少女が失踪した事件から数週間後、彼は一人だけ帰ってきた少女に呼び出されていた。




「あなたを好きになりました」

「△△さんがいなくなったからかな。俺も今の君が好きで好きでたまらないんだ」


 体中に傷のある少女は虚ろな目で微笑んだ。

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