京都の珈琲の店の本

 旅先で街歩きをするのが好きです。

 本屋さん、雑貨屋さん、ギャラリーをぶらりとのぞいて、水辺の道で涼をとって、歩き疲れたらカフェで一服。

 ゴージャスな仕掛けはいりません。

 ただ、ふらっとしたいだけです。

 本を持って。

 本を求めて。

 時に距離を飛び越えて。

 そんな街歩きの日々がもどってくるのを、切に願っています。


 さて、本と街歩きといえば、心地よいひと休み処も欠かせません。

 文学館や作家記念館のミュージアムカフェは、企画展とのコラボメニューがあったりして、少し得した気分で楽しめます。

 本絡みの街歩きの時は、コーヒーを味わえるところがしっくりきます。

 時を刻む佇まいと、低く流れる音楽と、少しの喧騒と、眠気をはらうふくよかに薫りくる珈琲。

 京都を訪れると、そんなカフェで、足を休めています。

 とは言いましても、ここしばらくは、ご無沙汰です。

 そんな日々を過ごす中、京都のとある珈琲店の歴史を綴った本を読みました。

 


 『喫茶の一族 京都・六曜社三代記』京阪神エルマガジン社編集部著 京阪神エルマガジン社刊 2020.8.31刊行

 この本は、長く愛されてきた京都の珈琲店の一つ、三条河原町の「六曜社」の開店から現在に至るまでの三代半世紀の記録です。

 六曜社は、戦後満州で屋台コーヒー売りとして出発し、現在の店舗で開業し、一階のコーヒーの店と夜はバーになる地下の店とで、家族経営をしてきました。

 豆を卸しで仕入れていたのを自家焙煎へと移行させ、店のこだわりを形にしていった道のりも、興味深かったです。

 以前地下店を訪れた時は、コーヒーと共に名物のドーナツをいただきました。

 コーヒーの香りが時間を引き伸ばしていくような心地よい空間、新聞を広げ一杯のコーヒーでくつろぐ常連さんとおぼしき方々の醸し出す落ち着いた雰囲気を、堪能しました。


 『京都・東京 甘い架け橋 お菓子で綴る12か月の往復書簡』甲斐みのり・奥野美穂子著 淡交社 2010.2.7刊行

 この本は、六曜社のグッズ製作に携わった文筆家の甲斐みのりさんと六曜社でウエイトレスをして働く二代目の奥様の奥野美穂子さんとの間で交わされたスイーツ交換便をまとめた一冊です。

 東京とその周りのお気に入りお菓子、京都とその周りのお気に入りお菓子、それらが、こだわりの紙ものに記された手紙と共にやり取りされたものです。

 書き手の気持ちが、おすすめしたいといううれしさの息吹が、すっと伝わってくる素敵な本でした。

 共同製作したという「六曜社ペーパー」。

 ドーナツ柄、マッチ棒柄、コーヒー豆柄、いずれもモダンでおしゃれなデザインで、ブックカバーに良さそうです。かなり以前のものらしいのですが、何処かで手に入らないかな。



 では、皆さま、今日はこの辺で。





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