霊能力者紅倉美姫21 赤いドレスの花嫁
岳石祭人
第1話 染まるウエディングドレス
日曜の穏やかな午後だった。
湖のほとりの結婚式場で一組のカップルの結婚式が行われていた。
空は青く晴れ渡り、折しも、十字を掲げた聖堂の二階にある扉が開かれ、永遠の誓いを交わした新郎新婦が腕を取って現れた。
「おめでとー」
「ヒューヒュー」
階段の下の緑の庭園で待ち構えていた親戚、友人たちが拍手と共に嬉しさ弾む祝いの言葉を投げかけ、記念の瞬間を逃すまいと多くのカメラがシャッターを切られた。
若い二人は嬉しさの隠しきれない笑みを満面に浮かべ、花嫁は白とピンクの薔薇のブーケを持ち、友人たちの待つ地上へ息を合わせて階段を降りだした。一段、二段、三段、
その時、
風が吹いた。
強い風ではなかったが、妙な風だった。
風は空からざっと舞い降り、ふと立ち止まった花嫁向かってクルクル巻いた。
竜巻、と言うには大げさな、ちょっとしたつむじ風だった。
しかしその風を見上げた花嫁は、ギョッと顔を青く強張らせ、迫ってきた風に体を巻かれ、ひどくうろたえたように両手をさまよわせた。
ポツ、ポツ、ポツ、と、
花嫁の純白のドレスに異変が起こった。
ポツポツと、小さな赤い斑点が現れだしたのだ。
小さなそれは全身に現れ、ポツポツポツと、見る間に数を増し、急速に面積を広げていった。
「い、いや、なにこれ」
花嫁はうろたえ、手でドレスを払うようにしたが、ポツポツと、赤い色は白い布をまっ赤に染めて広がっていった。
「なんだこれ」
新郎も驚き花嫁をかばって肩に手をやり抱きしめた。
新郎の白いタキシードにも赤い斑点は付いた。しかし花嫁のそれに比べるとずっと少ない。
見上げる親戚友人たちもざわめき、新郎の友人の男性が見るに見かねて二人三人階段を駆け上がり、
「中へ!」
と二人を守って聖堂に戻そうとした。
「きゃあーーーーっ」
若い悲鳴が大きく上がり、新郎友人たちが慌てる中で花嫁はずるずると階段に崩れ落ちた。
「ほのみ!、ほのみっ!」
気を失い、花婿に抱きかかえられた花嫁のドレスは、純白のパールに輝いていたウエディングドレスは、隙間なくまっ赤に染まっていた。
鮮やかに、心臓から噴き出たばかりの血のような赤色だった。
式場は騒然となった。
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