短編45話  数あるめちゃくちゃべたべたきゃぴるんるん

帝王Tsuyamasama

短編45話  数あるめちゃくちゃべたべたきゃぴるんるん

 今日も元気に登校してる俺、真柴ましば 弧雪このゆき! 半そでカッターシャツに黒ズボンを身にまとう元気な元気な中学三年生だ! こゆきじゃないぞ、このゆきだぞっ。

 廊下ですれ違うやつらとも軽くおはようとかよぉっとかしてる俺。ああ、なんて今日も平和な一日なのだろうかっ。

 今は七月。今日は金曜日、天気晴れ! もう期末テストも終わったから、明日あさっての土日を優雅に過ごし、来週一週間を乗り切れば、お待ちかねの夏休みというわけだ!

 さあーて夏休み目前! 今日も平和に過ごすぞー! おぉーっ!

「こーのちーんっ!」

「どわー!」

 はい背中からの騒音と衝撃で平和な一日終了ー。

「おはよぉーこのちーん!」

「おはーじゃねぇよ! ここ廊下だろ! 今朝だろ! 周り見ろ! どうしてそうも毎日毎日俺の背中へ奇襲攻撃を仕掛けるという発想にいたるのか俺には到底理解ができんな!」

 俺は振り返り毎日似たり寄ったりな反応を今日もげた箱付近の廊下で繰り広げてしまっていた。そう。周りのやつらから「あらあら朝からお熱いわねぇ」「なんであいつなんだろう」「オレにも突進してくる彼女くれよー」「あんたは無理よ」「あー今日も朝が始まったなー」「昨日のバックギャモンの続きしよーぜー」などなどとぼそぼそ言われながらな!

「えぇー。これしないと元気出ないもーん。私倒れて救急車で運ばれちゃってもいいんだー」

 女子指定である白色長そでカッターシャツ青リボン紺スカート装備で俺を見上げながらしゃべってくるこいつは斉琳寺さいりんじ 佳桜美かおみだ。幼稚園入る前から遊んできた超幼なじみだ。

 身長はかなり小さく頭は俺の肩にも届かない。髪は肩付近でちょっとくるくるしてる。本人はくせっ毛で特に朝困ってると言っている。上靴の先端が青くネームプレートに青いラインが入っているのが俺たち三年生の証拠だぞっ。体操服もあちこち青いぞっ。

 声はやや高めで表情豊か。小さい身長と相まって友達は男女問わず多い。これでテストもなかなかいい点数取ってんだから、密かに男子からの人気もある……のーだーがーっ。

 毎朝この突進攻撃である。まったく。おかげで男子からうらやましがられてしまうこともあるが、もはやそれを通り越して朝の風物詩として見ているやつも結構いるという。まったくまったく。

 ちなみに夏服はこうして男女ともにカッターシャツ装備だが、長そで半そではどっちでもいい。体操服もそうだな。

「んじゃ直接的にも間接的にも元気吸い取られる俺は毎日病院送りだな!」

「このちんは丈夫だから大丈夫! 私はか弱き乙女だもーん」

「おうおうか弱い割にはずいぶん腰の入ったタックルだったなぁおいっ」

「このちんなら私を受け止めてくれるもん!」

「いっぺん回避して倒れこむ佳桜美を眺めてげらげら笑ってやろうかこんにゃろ!」

「このちんはそんなひどいことしないもんっ」

「はい」

 あーあ今日も佳桜美は満開笑顔を披露してくれているのであったとさ。

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