屋敷に到着!

 「おおー! ここが領主の家かー」


 俺は思った以上の家で感動しているとシエラが俺に向かって言った。


「ショウ、領主様には敬語で話しなさいよね」

「わかってる。流石に目上の人には敬語で話すよ」

「そう、ならいいわ」


 シエラがそう返すと、マールがシエラに注意した。


「シエラも大丈夫だと思うけど気をつけてよね」


 そう言われたシエラは驚いたように


「わ、私!?」


 と返した。


「そうだよ。たまにタメ口になるじゃん」

「領主様相手には流石に大丈夫だって」

「信用してるよ」

「うん、全然大丈夫よ。信用してもらって」


 そんな会話が終わり俺たちは屋敷の中に入った。


 入ってすぐに受付の人らしいお姉さんに呼び止められた。


「ようこそいらっしゃいました。物作り大会の参加者でしょうか?」

「はい、そうです」

「では、ここから右にまっすぐ行き曲がり角を左に曲がってください。参加者の控え室がありますので」

「はい、分かりました。ありがとうございます」


 俺たちはお姉さんにお礼を言ってから言われた通りに向かった。

 そして曲がり角を曲がった時だった。


「うわっ!」

「きゃっ!」


 俺は女の人とぶつかった。俺はすぐに立ち上がりぶつかった女の人に手を差し伸べた。その時にシエラとマールが何かこそこそ話していたが聞き取れなかった。


「ごめんなさい。大丈夫でしょうか?」


 俺がそう言うと女の人もすぐに立ち上がり謝ってきた。


「私こそ、注意不足で……」


 その女の人は騎士のような格好をしていた。可愛い女の人というより美しい女性って感じの。そんなことを思っていると、


「本当にすみませんでした。もっとちゃんと謝りたいのですが急いでいるもので、すみません」


と、その女性が、申し訳なさそうな顔をしながらもう一度謝ってきた。


(とても礼儀正しい人だな)

と思いながらも俺は彼女を見送った。


「急いでいるのに止めてしまってすみません。どうぞ急いでください」

「ありがとう」


 彼女は一言そう言って走って行った。

 彼女の姿が見えなくなった後俺たちは控え室に向かった。


「ねえ、ショウ?」

「なんだ?」

「さっきの人に見惚れてたでしょー!マールもそう思わない?」

「ま、まぁ見惚れてたとは思うけど……」


 控え室に向かっている途中にそんなことを言われた。


「そんなことないって。ただ……」

「ただ?」

「美しい女性だなぁって思っただけだよ」

「それを見惚れてるって言うんですよ」

「そうよ、こんなに可愛い双子の姉妹が隣に居ながら」


 俺があの女性に見惚れていた事になり、二人を怒らせてしまったようだ。


「ショウ様は鈍感ですね」


 昨日アルルに言われて、気をつけようと思ったところなのに……。


「ご、ごめん。もっと気をつけるよ。……代わりと言ったらなんだけど」


 俺はそう言って二人の頭を撫でた。


「頭撫でられるの嫌じゃないって言ってただろ?」

「い、嫌じゃないけど……。なんでも頭撫でて解決しようとしてるでしょ」

「そんなこと思ってないぞ……」

「ショウさんは本当にダメな人ですね。女性の扱いが上手いのに女心が分かってませんから」


 シエラとマールがそう否定的な意見を言ってきた。俺はその言葉に対抗心が出てきてとある決心をした。


「じゃあ、次はもっといい方法を考えておくから覚悟しておけよ。二人をぎゃふんと言わせてやる」

「次もやるつもりなんだー……」


 俺が決意表明、的なことをするとシエラがニヤニヤしながら言ってきた。その言葉にマールも便乗した。


「ショウさんはひどいです」

「そ、それは言葉の綾ってやつだよ。普通の時でもやるよ。例えば二人を褒めるときとか」


 俺が二人に言われた事を否定すると二人はそれにも否定してきた。


「ショウは褒める基準も低いからね」

「だね。もっと高くしてもらわないと、なんか申し訳ない気持ちになるね」

「だ、大丈夫だって俺そんなに優しくしてるつもりはないし。それなら褒める基準ももっと上げるから」


 俺は驚きながらも二人に提案をした。それにシエラは信じてない感じで返事をした。


「頑張ってねー」


 その返事に落胆していると二人がまた、こそこそ話をし出した。

 それが終わったのか二人はこちらを向いた。


「そろそろ許してあげる。ごめんね」


 いきなりシエラが謝ってきたためびっくりして声が出なかった。それに続いてマールが口を開いた。


「ショウさんが、あの騎士の女性に優しくしていてちょっと心がモヤモヤしたんですよ。それでちょっとからかおう! って事になって……。ごめんなさい!」

「そうだったのか……。じゃあ、あの時にこそこそ話していたのは」

「ええ、ちょっとからかおうって言う作戦を少し話してたの」

「そうか……。まあ良かったよ。二人が本当に怒ってなくて」

「少しはモヤッとしてるんだからね」

「そうですよ」

「ご、ごめん。気をつけるよ」


 嫉妬深い彼女がいたらこんな感じなのかなっと思えるような出来事だった。まあ、俺は結構あの二人のこと好きだし機嫌を損ねないようにしたいと……

 そんなこんなで控え室に着いた。

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