憑つうらうら
ひなた
第1話
狗。
いぬだ。
犬ではない。
暗闇に浮かぶ、あれは狗。
黒銀の毛並みが暗黒の中にゆらゆらと揺れている。同じ色なのに分かるのは、青い炎の様なものが狗の体の周りから噴き出ているからだ。
大きいのか小さいのか、狗との距離感が分からない。
分かるのは、立ち上がった狗がゆっくり速度を上げて此方へと向かって来ることだけ。
怖い。
逃げようとするのに体が動かない。竦んでいる訳ではない、身体自体がない。
身体がない。
ああ、夢か。此れはきっと夢なのだ。夢なら早く醒めてくれ。
狗はもう目の前に迫っている。
青い眼、真っ赤な口を大きく開けて、真っ白な鋭い牙が剥き出しになった。
あと三歩で届いてしまう、だが足が動かない。
二歩、不思議なほどに空気が冷たく感じる。
一歩、狗の炎が指先に触れる。
逃げられない。
高く跳躍した狗が、細く白い頸筋にずぶりと深く噛み付いた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます