宝石箱に届いた手紙 二通目

ひきだしの向こうの君へ


 お返事ありがとうございます。ちゃんと届いてて、ホッとしたし、お返事もらえて嬉しいです。

 送ってから、一日の間に何回もひきだしの中を確認しちゃった。いくらなんでもそんなにすぐにお返事が来るはずないっていうのは分かってたんだけど、待ちきれなくて。だから、薄藍色の可愛い封筒を見つけて、すっごく嬉しかったです。

 しかも、同い年の女の子! すごいすごい! 運命感じちゃった。

 文通友達として、仲良くして欲しいなと思います。いっぱいお手紙送り合いたいです。よろしくね。


 それと、君からの手紙を読んで驚いたのが、君の世界には魔法が無いんだね。この世界には当たり前にあるから、魔法の無い世界とか考えられない。それってすごく不便そう。例えば、遠くの人とのやりとりは全部手紙? 遠くに行く時はどうするの? 動物とかに乗るのかな? この世界も、昔魔道具があまり発達してなかった時、魔力を直接使うのが苦手な人とかはそうしてたらしんだけど。

 良かったら、そちらの世界で魔法も使わずにどうやって暮らしているのか、教えて欲しいです。


 それで、魔法についてですね。

 魔法は、世界に溢れる魔力を利用する技術です。基本的には魔力を自分の体に入れて、それを自分の体の中で練って、使いたい作用を生み出す力に変えて、体から出す技術。例えば空を飛びたい時は、必要な分の魔力を取り入れて、体の中で浮力に変えて、放出すると空が飛べる。

 体の中で魔力を練る時は、呪文を唱える方がやりやすい人や、唱えずにイメージする方がやりやすい人っていう風に個人差があるの。私は黙ってイメージする方がやりやすいな。

 これは魔力を直接使うやり方で、昔はこの方法しかなかったらしいんだけど、苦手な人もいて、今は昔よりそういう人が増えてるらしいんだけど(ちなみに私はそんなに苦手じゃない)、そういう人たちでも魔法が使える様にって、魔道具が使われるようになったの。

 魔道具っていうのは、魔力を体の中で練らずにそのまま流し込むと、設定されている魔法が使える道具。魔力を自分で練らなくて良いから、魔力を直接使うのが苦手な人でも魔法が使えるようになるの。でも逆に、直接使うのが得意な人の中には、魔道具使うのがまどろっこしく感じて、苦手な人もいるみたい。私は便利だと思うな。後、お年寄りとかだと新しいタイプの魔道具が使いこなせなくて、意地でも旧式使っている人とかもいるな。まあ、旧式は旧式で味があるから好きって人もいるんだけど。

 とりあえずこんな感じかな。他にも気になることがあったら、質問してね。


 君が持ってるのは宝石箱なんだね。どんなのなんだろう、装飾とかはついてるのかな?

 私の机は木でできていて、結構シンプルなんだけど、魔法のひきだしだけ模様が彫ってあるの。何かを模してる感じじゃない、不思議な模様が。

 後は、薄いひきだしの下に棚があって、今はここに教科書とか置いてます。

 ひきだしは魔法のひきだしだけだから、筆記用具とか入れられないのがなんだけど、手触りよくて、お気に入り。今もこの机でこの手紙を書いてます。

 私も、君とはたっくさんお手紙交換したいです! よろしくね。


 学校制度!

 そうだよね、同じ世界でも国が違うと違ったりするもんね。

 うちの学校制度は、十才から五年間の基礎学校が義務教育です。その上に十六才から五年の上級学校があります。あ、上級学校じゃなくて三年間の短期上級学校に行く子もいます。

 六才から勉強なんてすごいな。もちろんその頃から勉強してきた子もいるけど、六才で学校行かなきゃいけないなんて大変! 君ももちろん六才で学校通ったんだよね、すごいすごい、多分私無理だ、授業中座ってられないや。


 君も本を読むの好きなんだね! 物語が好きなんだ。

 私は物語も読むけど、学術書…というかそれの入門書が好き。色んな知識を得られるのが楽しくて、色々手広く読んでます。浅く広くだね。

 例えば歴史の本とかは結構好き。本によって書いてあることが違うことがあるんだけど、それを比べるのとか楽しい。


 おっと、気付いたら前のお手紙より大分長くなっちゃった。

 やっぱり、明確に相手のいるお手紙のが書いてて楽しい。前のは誰に宛ててるのかも分からずに書いてたから。

 色々他にも書きたいことはあるけど、一回に全部書いちゃうのももったいないよね。今後のお楽しみにとっておこうと思います。だから、またお返事ください。


 それでは、今回はこの辺で。

ひきだしのこちらから

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る