第2話「あれが......新商品だったんですか......?」

START BY ??? -Kタワーの悲劇-




「"カメ"くん、準備はいい?」

「いつでもいいですよお、"マイコ"さん」


 救急車のサイレンが鳴り響く歩道に立ち、マイクを構える。

『ここでKタワー大量失神事件の最新速報が届きました! 現場のマイコさーん?』

スタジオからの連絡を聞き、カメくんの構えるカメラを見つめる。


「はい! 今、私は現場のKタワーの前に来ております! ここで十分前に突然空が発光し、歩いていた人々が突然失神してしまうという事件が発生しました! 建物や車両の中にいた人は影響がありませんでしたが、二輪車に乗っていた人は影響を受け、事故が多発しており、今ようやく救急車がやって来たところです!」


『マイコさん、建物の中にいた人は無事だと言うことでしたが、目撃情報はありませんでしたか?』


 すぐさまメモ用紙を取り出す。そこには先ほどまで聞き込みを行った内容の中で特に伝えるべき言葉を書き殴っている。

「はい! 建物の中にいた人の多くが、突然空に2つの何かがぶつかりあったと話していましたが、それが何なのかはまだ不明です。また......」

そこまで言って躓いてしまった。次話す内容は、信頼性が少し薄いからだ。


 何を戸惑っているのよ......すべて話さないと......駄目じゃない......


「......失神している人たちの中で、立っている人間が一人目撃したという情報があります。性別は不明、ただ、その人物は白い帽子を手に取っていたとされています......」




NEXT TO ??? -ビルの中でニュースを聞く者-




 少し力を入れてテレビの電源を消した。

「なんだ白い帽子とは......まったく関係ないじゃないか」

イライラするあまり独り言が出てしまう。まったく......このK市の偉大なる知事、"コブトリ ケイ"が人生の中でこうもイライラしたことがあろうか?

 そのきっかけは、この服のシミのせいかもしれない。騒ぎで中止になったKタワー完成記念パーティー......そこのトイレに入ろうとした時に、が水しぶきを飛ばしてきたのだ。

 先ほどのアナウンサーが白い帽子の話をして、あの光景が思い浮かぶ。あの青年は無礼なことに私のスーツを汚していった。せっかくの選んだスーツだというのに......!


コンコン


「......誰だ?」

「私ですよ。コブトリ知事」

扉を開けたのは、あの人......この街の発展に協力してくださった大企業"クロザワグループ"の代表......"クロザワ カオン"さんだ。今日も女性的な黒髪が美しい......

「ク......クロザワさん!? 今日は一体どんな要件で......?」

「ええ......先ほどの騒動の事についてお話が......」




 クロザワさんの話を聞いて、私は冷や汗をかいた。

「あれが......だったんですか......?」

「はい。私の会社が裏で軍事産業を手掛けているのはご存知ですよね? 我が社の新商品は、人間を一時的に失神させることが出来ます。今回の騒動もそれが原因かと」

「その新商品を運んでいた飛行機が事故を起こし、中の新商品が爆発......でも、その飛行機の残骸は?」

「それがまだ調査中でして......すみません、今回も隠蔽よろしくお願いできますか?」


「......わかりました。やってみましょう」




 クロザワさんが立ち去った後、私はポケットから一枚のハガキを取り出した。


"エザ シロト 様"


 あの白帽子の青年の招待状であろう。彼の名前だけでなく、住所などの個人情報が乗っていた。

 私の性格を言葉で表すと、根に持つタイプだろう。今まで都市の発展に勤しんでくれた恩人には最大限の協力を、礼儀を知らない不届き者には最大限の制裁を。


 失神しなかった者があの青年である必要はない。共通する部分があれば十分だ。




NEXT TO ギンホ [銀髪のヒューメリアン] -Kタワー離れの街道にて-




 あの光はなんだったのだろうか。そんなことを考えている暇があるのなら、足を速めなければ。白い帽子を手に、嫌な予感から逃げるように......




 空が発光した瞬間、周りの人々が次々に倒れ、数台のバイクが転倒した。私は辺りを見渡したのち、建物の中からの視線を感じてその場から離れた。

 私は小さいころから嫌な予感がよく当たっていた。ひどい時には、その原因がハッキリすることもあった。

 だけど、先ほどの予感は何か桁外れだった。何かが大きく変わってしまうような......だが、その何かはわからない......




「ギィーンーホォーちゃーん?」


 !! 

 別の嫌な予感と共に、後ろから聞こえた声に反応して振り向く。

「どうしたんだい? そんな暗い顔をして」

「......なんなんですか? "ライタ"さん」

この男......ライタはフリーライターだ。

「ヴぇえぇへへ......何か嫌な事があればいつでも僕に相談してもいいんだよ?」

「ストーカーに相談したくないです。あと、肩を掴んで頬擦りは止めてください」

「そんな事言わないでくれよ......君とは7年の付き合い、僕に取って君は妹のようなもんだ。兄さんは妹の悲しみを受け止める義務があるんだよ?」

「赤の他人の腰に触わっているあなたを訴えていいですか?」

「相変わらず冷たいねえ......」

脇に手を駆けようとしていたライタはようやく手を話した。


「そういえば、5日後は君の誕生日だろ?」

「......またプレゼントがあるとか言わないでくださいよ?」

「そうしたいところだが、ちょっと用事があってね......だが、僕が祝う必要はない。その日こそが君に取って大切な誕生日プレゼントだから」

「......?」

珍しく、ライタが自分で帰って行った......今日は何度嫌な予感をすればいいのだろうか。


 そう思いながら、私はふと街道テレビに目を向けた。




『建物の中にいた人の多くが、突然空に2つの何かがぶつかりあったと話していましたが、それが何なのかはまだ不明です。また......失神している人たちの中で、立っている人間が一人目撃したという情報があります。性別は不明、ただ、その人物は白い帽子を手に取っていたとされています......』




TO BE CONTINUED

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