日照り乞い

 今日は風鈴でなくててるてる坊主をぶら下げた。音はしない。当たり前か。


 なかなかスッキリしない天気。いきなり夕立が来て雷と共に雨を降らす空。


 明日は学校で運動会があるから雨は降らないで欲しい。

 途中で振られる雨ほど困るものはない。


 どうかてるてる坊主、雨を降らさないでくれ。せめて降ろうとしても運動会終わってからにしておくれ。

 子供の頃はよく作ってお願いしていたが大人になってからもてるてる坊主に頼るとはな。


 僕は視線を感じる。振り返ると李仁が笑いながら見ていた。

「何笑ってんだよ」

「ん? だってミナくん、すっごくてるてる坊主に真剣にお祈りしてるから可愛いなぁって」

 見られてたか、いやわかってたけどさ。李仁もてるてる坊主を作ってくれたようだ。頼んだわけじゃないけど、可愛いやつを作ってくれた。僕の作った不格好なてるてる坊主の横に吊るしてくれた。


「天気になりますように、ミナくんのお願い聞いてやってね」

 手を組んでお祈りする李仁。わざとか? 

「そんなふうに僕お祈りしてた?」

「さぁね」

 二つ寄り添う、てるてる坊主。仲良しな感じ。

「でも雨だとおやすみなんだよね? わたしもお休みだから一緒にいられるのにー、なんてね」

「てことは李仁は雨降って欲しくないの?」

「うん」

「雨降っても家にしかいられないじゃん」

「いいの、それで」

「よくないよ。晴れて欲しい」

「じゃあ、晴れてもいいから……そのかわり今夜は」

 と僕に抱きつく李仁。だめだ、今夜セックスしたら明日に響く。明日が本番。今夜は本番でない。


 でもチュッチュと舌を絡めて何度もキスをしてくる李仁。


 しょうがないな。



 てるてる坊主の効果か、次の日めっちゃ晴れた。


 快晴の中、運動会の前夜祭のせいで100%の力を出しきれなかったのは言うまでもない。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る