僕たちの桜
セロテープ 携帯電話 空
◆◆◆
「ミナくん、セロテープあるぅ?」
李仁がリビングにやってきた。僕はここでの仕事が落ち着く。李仁は自室に篭ってリモートワーク。
僕は使っていたセロテープを渡した。
「ありがとう」
ちょっと疲れてるね、李仁……。無理しないで欲しいな。
「はい、じゃあストレッチしよ」
「え?エッチ?」
「違う、ストレッチ」
「なーんだ、いいわよ」
互いに家に引きこもることが多いから定期的にストレッチをするようにしている。
「ちょっと歩く?桜見るついでに」
「あーそっちがいいかも」
二人ラフな格好だけどまぁいいかとマスクをして外を出る。車は通るが人は少ない。
桜並木、綺麗だ。心が荒んでいる時に見る桜は美しい。携帯電話を取り出して写真を撮る。
「空も写るように撮るといいのよ」
李仁の方が背が高いから僕と見る景色は少し違うのかな。
「ミナくんも一緒に」
彼の長い腕で自撮り。その時だけマスクを下ろして撮影した。
「さぁお家戻ろう」
「そうだね」
李仁の写真が綺麗だったから家帰ってからプリンターで印刷して部屋に飾ってみた。自撮りしたやつも。
「早速飾ってくれたんだ、ありがとう」
「家の中でもこの景色見ると気持ちいいね」
「そうね。お部屋のお花も買いに行けないし、しばらくこれで我慢かしら」
「うん……」
李仁は軽くおでこにキスをしてくれた。もう、余計なことしないで。気持ちが揺らぐ。
「そんな顔しないで。夜にたっぷり甘えさせてあげるから」
「うん、わかった……」
バレてた。恥ずかしい。
そういえば思い出した。李仁の下半身のタトゥーに桜があることを。股を開いて内側に。全体的に黒のタトゥーだけど桜だけピンクの色が入っている。この桜を発見した時にすごく興奮したっけ。
「愛する人にしか見れないし、見せない桜よ」
と見せてくれた。
今夜も見せてもらおうか、李仁の桜を。気分が暗い中、僕だけの桜。キスをたくさんしてあげよう。愛でよう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます