キッチン

 気球

 トマト

 カッター



 ※BL表現あり※

 ◆◆◆


 湊音は届いた段ボールをカッターで開ける。出てきたのは野菜や卵、楽々調理キット(必要な具材がカットされていて短時間で調理できるモノ)。


 李仁はどれどれと覗き込む。ネットの広告で新鮮な野菜や珍しい野菜を、注文できるという野菜宅配便というものがずっと気になっていてようやく頼んだのだ。


「お試し便の割にはたくさん入っているのね」

「このトマト、色もしっかりしているし美味しそう」

「楽々調理セットもいいわね。本当にお互い忙しい時にこのキットを頼めばチャチャって作って食べれる感じ?」

 調理手順も書いてある。料理が好きな李仁はとても興味深々であるが、パンフレットを見るといつものスーパーに比べて割高である。


「美味しい、を取るか……安いを取るか。なんか試されているわね」

「お試しなだけに?」

 と二人見つめあって笑う。


「まぁ、いつものスーパーでも安いけど美味しいし、かといって、お届け便もこれ食べたら他のものは食べられないぞと誘惑してくる……」

「うううむ……」

 と二人は悩む。


 湊音は野菜宅配便のサイトをスマホで確認する。届いたらチェックを押すのである。

 すると画面に気球に乗った野菜のキャラクターたちが出てきた。


『お試し便を頼んだ方に限り、一ヶ月送料無料!!』

 という旗を出してきたのだ。


「あらぁ、そうなの。お得じゃん」

 と李仁。しかし湊音は首を横に振る。


「よく見て、この下のところ!『5000円以上頼んだ場合送料無料』だって」

「あら、よく見てる!さすが、我が家の大蔵大臣♡」

「李仁はざる勘定だからね!」

「領収書とかしっかりしてるんだけどぉ」

「しっかりしてもらわないと困ります!」

「もぉ、ミナ君。怒らないの……」

「むーっ」

「可愛い♡」

「可愛くないっ」

「食べちゃいたい……」

「……」

「お願い♡」

「少しだけだよ」

「ふふっ、いただきまーす♡」




「少しだけっていったじゃん……」

「ふふふ♡」



 終

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る