夢の中へ
お風呂から上がって寝室に行くと、ベッドの上で李仁は本を持ったままうたた寝をしていた。
ベッドのサイドデスクには食べかけの僕の作ったアップルパイ。
きっと僕を待っていたのだろう、疲れてるんだね。起こすのもなんだけど……せめておやすみは言って眠りたい。
部屋の中は花の香りが充満する。僕の誕生日に彼が僕の年齢と同じ本数のバラをプレゼントしてくれて。
40本なんてすごい数だ。玄関と寝室に半分ずつ飾ることにした。
ペアの花瓶。たまたま二人でそれぞれ選んだら対の花瓶であることを作家さんに言われたときはびっくりしたもんだ。趣味も性格も僕らは全く違うのにこうやって合わさり、互いに足りないところを補う、たまにこうして気が合う時もある。面白い。
起こすか否か悩んでとりあえず彼に布団をかけて一緒に入る。僕は李仁がお土産でくれたパグのぬいぐるみを抱き、横になると
「起きてるわよ……ミナくん」
と、少し寝ぼけた顔で李仁は僕を見る。
「起こしちゃった?」
「狸寝入りしてた」
「嘘だ、完全に寝てた。口開いてたし」
李仁は笑ったからやはり図星だ。そしておやすみ、というとそっと抱きしめてくれた。左のうなじ、タトゥーを切開して縫い合わせた跡がまだ痛々しい。優しく口づけをする。
「おやすみ、また明日」
「うん、おやすみなさい……」
僕らは深い眠りに落ちた。夢の世界へ僕らは向かう。
終
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