美しきもの。

フランスの有名な詩人、ジャン・コクトーが1936年に来日した時に

感動したものが、大きくわけると3つあったそうです。

ひとつは相撲。もうひとつは歌舞伎、あともうひとつは・・・

なんと日本海軍の重巡洋艦。神戸で日本海軍の重巡洋艦、 

【妙高】を見たコクトーはこう言ったそうです。

『なんという美しさであろう。是ほどの芸術品が他にあろうか?』


私は知る人ぞ知る歴史オタクですが、その中でも各国のお城、

軍艦という物は非常にに面白いと思います。

軍艦、特に巡洋艦などの大型艦は、ある意味浮かぶお城と言って良い。

お城も軍艦も基本的には軍事施設ですので、重要な事は、敵の攻撃に

耐えるだけの十分な防御力と、攻撃して来た敵を撃破出来るだけの

攻撃力をバランス良く持っている事。

また長期に渡る戦いに対応できるか等になります。

これらに要求される要素は各国ともほぼ似たりよったりだと言えるでしょう。

こうした純軍事的要素以外にあるのは、いわゆる国力の象徴としての存在感。

お城も軍艦も大変高価なものですから、そもそも持つだけで大変な事なのですが、

その姿が敵から見て恐ろしく、味方から見て頼もしい事も重要です。

ですから、各国ともそのデザインにはそれこそ全知全能を傾けました。

そして、その姿は実にお国柄を反映した物になっています。


ヨーロッパの軍艦は、なるほど、中世のヨーロッパのお城をそのまま船にした

様な独特の味わいがあります。フランスやイタリアの船は文字通りデザインや

芸術の国らしく、実に優雅で芸術的なラインを持っています。

ドイツの軍艦はまさにゲルマンのお城その物。直線と曲線を使った質実剛健な

中世ドイツ(プロイセン)のお城みたいな感じですね。

アメリカの軍艦は、いかにも新興国アメリカの合理主義に則っており、徹底して

直線的です。やたらと優美な曲線なんかを使うと作るのに手間がかかるし、

壊れたら修理が大変なので、ブロックを積み上げた様な作りをしています。

戦いなんだから勝てば良い。見栄えよりも量産性重視(笑)。


さて、我が日本国はというと・・・

日本の軍艦は、日本風の鎧(甲冑と兜)で身を固めた、戦国時代の武将の様です。

また、その姿からは日本のお城も連想できます。

貧乏でそんなに沢山の軍艦をはなから作れない日本は、

特に戦艦と巡洋艦において、日本的な『美』に拘りました。

その為、日本以外では何処の国にもない、

複雑で、それでも独特なバランスを持つ美を作り上げました。


パゴダマストと言われる何層にも積重ねられた大きな艦橋を持つ、

旧日本海軍の戦艦【扶桑】や【金剛】【長門】などはその代表例です。

巡洋艦では高雄級、妙高級、古鷹級等。

この様なスタイルを作り上げたのは、後にも先ににも日本海軍だけで

あり、世界的に見ても大勢のファンがいます。ネットで検索すると

すぐ画像が出て来ますので、興味のある方はググってみて下さい。


ちなみに、船の代名詞は『She』です。

船は船乗りを癒す存在であり、故に古来より女性に例えられました。

日本の戦艦は、甲冑に身を固めた、大和撫子なのです。

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