女が転生したら百合ハーレムになりました

猫本クロ

第1話 いきなり死亡!?



変だな……私は遊園地でバンジージャンプをしていただけのはずなのに。



ガクンと一瞬だけ身体が揺れたと思えば真っ暗な場所へと立っていた。上下左右どこを見ても漆黒に包まれているここは一体何処だろう。辺りを見渡しても光一つさえ無い。




───暗くて怖い。そんな場所で私は一人。





「さて、お仕事お仕事。」




恐らく真上から聞こえたのは女性だろうか、ホンワカしているようなゆるい声。誰だろう。




「誰ですか!あと、ここは何処ですか!?」




聞こえた声の主へ届くように叫ぶ。数秒もかからずに返事が帰ってくる。




「私は世界と世界をつなぐ案内人。神様の付き人みたいなものかな。そして、ここは世界と世界を繋ぐ通り道。」



「通り道……なんで私はこんな所へ?」



「それはね……驚かないで聞いて欲しい。……貴女は自分が元々いた世界で命を落としてしまったの。」



「死んだってことですか……?」



「端的に言えば。詳細を説明させてもらえば、貴女はバンジージャンプに挑戦したよね。その時、運悪く体を繋いでいたワイヤーが切れてしまったの。もちろん貴女の身体は地面に叩きつけられて即死。……ってワケ。」



「そんな……」




とてもじゃないが信じられない。どうか夢であって欲しい。お願い。



全身の力が抜けて身体が地面へ崩れ落ち、自然と涙が零れ落ちる。




「ごめんね。これは本当の事なんだ。……それで、これが本題。」



「本題……?」



「若くして死んでしまった人には、今まで生きていた世界ではもう生きられないんだけどね……他の世界に転生してもう一度人生をやり直す権利があるんだ。」



「他の世界……」



「そう、どんな世界かは決められないんだけど。……やってみる?」




もう一度。ここで何も出来ずに人生を終えるぐらいなら違う世界でも生きてみたい。




「はい。」




立ち上がって案内人さんに叫ぶ。




「よし!わかった。それじゃあ、目を閉じて……私とはここでお別れ……のハズ。頑張ってね。」




優しい声で私を送り出してくれる案内人さん。その瞬間、私の体が宙に浮いて吸い込まれるように意識を飛ばして行った。










突然身体の感覚が蘇って、お尻に激痛。辺りを見渡してみるとさっきの真っ暗な空間とは別物。



空は清々しいほど真っ青な青空、そして地面は青々とした草原。空気が澄んでいて美味しい。





───それはともかく一体ここは何処だろう。





服装は私が覚えている直前までの格好。黒いパーカーに至って普通の濃紺のデニムパンツ。靴は某スポーツメーカーのスニーカー。いわゆる陰キャと呼ばれる者がよく着ている服装。




「どう見ても私だよね……」




頭から脱げていたパーカーのフードを被り直して立ち上がる。痛みに襲われる尻を擦りながら付いた土を落とした。




「さてと……」




ここからどうすればいいんだろう。案内人さんにコツを聞いておくんだった。



私にはサバイバル能力は皆無。ここで、しかもこの服装で野宿は流石にしんどいのではないか。



取り敢えず勘で歩いてみる。地面を踏みしめた感触は現実世界と同じ物。



しかし、私の現実世界には転生出来ないと言われているので、あっちの世界での常識がこっちの世界で通用するかどうか。



見渡しながら歩いていると整備された道を発見。整備されたと言っても草が一切生えていないだけの土で出来た道。



コンクリートなどはもちろん無い。でもこの道なりに歩いて行けば、人が住んでいる場所へと到達出来るのではないか。




───右と左どっちへ進もうかな。




勘を信じて左へ。適当に道を歩いていく。傾斜はほとんど見当たらなく、比較的楽に歩くことが出来た。



夕方までには人がいる場所へたどり着ければいいな。










「つ、着いたぁ……」




さすがに疲れた。歩き始めたのが、太陽が真上にあった時なので十二時位だろうか。



そして、今は夕暮れ時。単純に計算しても六時間歩きっぱなし。疲れるのも無理は無い。



目の前に見える門の様なところには門番さんらしき人が二人。




「こ、こんばんは。」



「はい、こんばんは。ここはロウナの街だ。旅人さん。入りなさい、もうそろそろ魔物が闊歩する時間だ。」





言葉が通じなかったらどうしようと思ったけどそんなことも無さそうだ。簡単に街へと入ることが出来た。



街並みは間違いなく私が住んでいた世界ではない。先程の門番さんの話によると、この世界は魔物が存在するみたいだ。



魔物といえば、私が好んでいたRPGゲームではお馴染みのもの。そんなものが存在するならこの街には武器が売っているはずだ。



それよりも今晩の宿はどうしようか。最悪、この街で野宿ということになるのかな。





地面以外に眠れる所、希望を言えばベンチでもないかと思い、道路の淵を探す。すると街の端に木製のベンチの様なものが。今日はここで寝ようか。



幸いにも気温はそう低くなく、パーカー一枚の私にも問題なく寝ることが出来そうだった。早速横になって夜を明かそう。










「あ、あのー……」



「は、はい……」




やはりダメだったか。この街では野宿は禁止されているのか。謝ろうと体を起こすと、目の前の声を掛けてきた女性は更に言葉を足した。




「泊まるところが無いんですか……?」




見た目は短髪で赤髪の女性。表情は大人しそうな雰囲気。




「はい……情けないことですが、金が無くて。」



「良ければ私の家に来ませんか?」



「え……?」




こんな都合のいい事が有るのだろうか。ゲームじゃあるまいし。ここは素直に止まらせてもらうか、それとも断るべきか。




「あっ……怪しい者じゃありません!ただ……」



「ただ……?」



「私の家の前のベンチで寝ていたので気になっちゃって……」



「……あ!すみません!」




後ろを振り返ると確かに民家がある。ここはお店では無かったのか。慌てて立ち上がろうとすると、両手を振って静止される。




「あっ!大丈夫です。」



「お言葉に甘えたい所ですが……いいんですか、怪しい者かもしれないですよ。」




わざと警戒心を強めてもらう為に、低い声で言う。するとニッコリと微笑んであはは、と笑い出した。




「大丈夫です。もし、盗賊さんだとしてもやっつける程の実力はあります。これでもギルドの公認戦士なんですから!……それに、貴方は悪い人では無さそうですし。」



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