第22話 寵愛の小づちLevel 1

 その男は大工だった。その大工には妻がいた。その妻は息子を愛していた。ゆえに女は誰にも奪われるものかと周りに住む若い娘たちを一人、また一人と殺して回っていた。

 それはまるで自分の獲物を奪われてなるものかと周りすべてのものを敵視する飢餓状態の獣のようだった。

 目は黒く濁り、口からは力みすぎたのか朱の混じった唾液が垂れている。

 夜な夜な夫の仕事道具を引きずり徘徊するその姿は、息子を愛するが儘の狂気だった。

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