第17話 言語学習
朝日が昇り、ヤンとビリーは起きだしてきた。
ヤンとビリーは伸縮バケツを持ち、川原へ駆け出している。
子供達も起きたらしくて、鹿島の横へ来ると、
「僕たち、ここに叔父さん達といていい?」
「いいけど、アーマートの家族は心配しているだろう?それと、叔父さんではなく、お兄さんと呼びなさい。」
「ほんと!ありがとうお兄さん。ゆうべ、お姉さんと夢の中で、(ガイア様に愛された人)に会い、テレパシーも聞かれた事教えて、一緒にいると言ったよ。」
「夢でも、テレパシーで話せるの?」
「姉弟だから。」
「兄さんの横で寝ていたが、どこから入ったの?」
「壁だったら、何処でも出入りできるよ。」
「猫亜人だから?」
「そうだよ。おにいさん達、ここでの生活はよく知らないでしょう?食べられる草もあるよ。摘んで来て料理手伝うから、このナイフ貰えない?」
「いいよ、上げる。気をつけて使ってくれ。」
鹿島はメモを取り出して、昨夜の豚似の姿かたちを描き出した。
「昨夜、黒い四つ足の、耳がこんなで、鼻がこんなのが来たがこれが魔物なの?」
「違うよ、魔物は見た事ないけど、十五メート位あるらしいよ。すっごく強くて、誰も倒せないらしいよ。」
そこに、妹のマクリーが来くると、
「マクリー、ナイフ貰えるって!(ガイア様に愛された人)をお兄さんと呼んでいいって。」
とアーマートは、マクリーの手を握って振り回した。
「嬉しい~おじさんがお兄さんなら、おねうさんが迎えに来るまで、家族だからずっと一緒に居られるね。」
二人の会話を聞いた鹿島は、会話の内容の深さを悟った。
「あれ、何か話が飛躍しすぎでない。」
取り消そうにも、子供達は既に駆け出していた。
「ま、いいか!」
マーガレットからの無線が入り、
「閣下、今のアーマートとの会話を、コーA.Iが言語学習する為、詳しく知りたいようですが、よろしいですか。」
「構いません。」
「閣下の話した会話のまま詳しく、教えてください。」
「アーマートがここにいたいと言ってきた。」
と、鹿島は順次細かく思い出しながら、
「いいけど、アーマートの家族は心配しているだろう?それと、叔父さんではなく、お兄さんと呼びなさい」
夢の中で姉とテレパシーで話した内容は、俺と一緒だから心配ないと、鹿島は延々と会話内容を伝えた。
「了解しました。次は簡素でも良いように、プログラムを作成します。」
鹿島はコーA.Iとの会話に疲れてそのまま寝そべり、恨めしく思う輸送艦のいるあたりを探している。
「コーA.Iと、容姿端麗、頭脳明晰総司令官は、同一ではないのか?」
と、思えるA'Iの対応は、マーガレットとよく似ている感じを受けた鹿島は、会話後は戦闘状態後並に疲れるようだ。
「通信終わりましたか?」
そう言いながらトーマスが、近づいてきた。
「隊長また一つ、苦手が増えたみたいですね。」
「聴いていた?」
「偵察隊の通信は昨日から、全てオープンになっておりますから。」
「コーA.Iは絶対的に、総司令官の性格をプログラムされている気がする。」
「優秀な人材の航宙軍と我ら脳筋軍では、話が嚙み合わないのが普通ですが、隊長はよくやっています。」
「俺も、脳筋部類か?」
「航宙軍から見たら、バリバリの脳筋でしょう。」
起き上がりながらの二人の大笑いの声に、整列していた隊のみんなは、何事が起きたのだと顔を向けている。
鹿島は皆が揃った所で、子供達に俺を兄さんと呼ばせた為に、俺は兄妹の家族になったらしい事を告げた。
兄さんと呼ばせた為に、兄妹を現地協力者にしてしまった事を告げ、皆は勘違いされない為に、名前で呼ばすよう注意した。
今回の偵察は森の偵察を予定している。
鹿島が前衛、ポールが中、トーマスが後衛を二メートル間隔で注意深く進んで行く。
鹿島の目は、枝木の間に垂れている蔓に注意して、地面の不自然な盛り上がりに注意した。
森の中は薄暗く、空は茂みで見えない、一メートル位のシダ植物が一面覆っているので、足元は常に危うい状態である。
真っ直ぐ上に伸びた杉皮みたいな表皮を付けた二メートル位の大木は、七~八メートル位の間隔で立ちそびえていて、空を枝の茂みで覆っている。
偵察隊は大木の根元で休憩を取り、土壌調査をするとSSSと表示された。
草原はSであったが段違いの土壌であるので、開墾後十年間位は肥料なしでも同一作物の連続収穫が可能であろう。
幅一メートル位の木もあるが所々で立ち枯れているのは、光合成に敗れたのだろう。
広葉樹は三メート位の高さで、葉の大きさは幅広い四十センチはあり、木の影なのに頑張っている。
暫く進んで行くと、空が見える明るいとこに出た。
そこでは五十メート四方、全ての樹が無残になぎ倒されている。
シダ類も広葉樹も踏みつぶされて、薙ぎ払われたように根もむき出しになり、一メートル位の立木は切り折られ、二メートルの大木は一メートル位爪先でえぐられた様に、無残にも倒れている。
何者かが暴れたとしか考えられない。
三人は周りを手分けして調査すると、一メートル位の三つ爪足跡をかなり広範囲に発見していた。
鹿島は、これは魔物の仕業かもしれないと想い、見たい気持ちと会いたくない気持ちに揺れた。
三人はその場を離れて草原に出だしたとき、ヤンから無線が入った。
鹿島は一瞬緊張したが、
「子供達が川原の水溜まりに、水路を作って遊んでいると思っていたら、残りの肉をそこへ投げこみ、魚を水溜まりへ誘い、水溜りから一メートル位の魚を捕らえて、魚の身をもって来た。」
と報告してきたが、ヤンの報告は此方が本題であろう。
「子供達が魚の骨と野草でスープを作っているのですが、何かを欲しいと言っているようですが、よく分かりません。マクリーと変わります。」
鹿島は塩ではないのか?と思いながら、
「マクリーどうした。」
「お塩が欲しい」
「ヤン、塩と胡椒をマクリーに、渡してくれ。」
鹿島は投げやりに返事した後、コーA.Iに無線をして、
「塩が欲しいと、行ってきた。」
コーA.Iからは、言語理解の了解返事をもらった。
三人は森沿いにしばらく歩いていくと、一メートル位のやぎに似た一角獣が猛突進して来たので、ポールが角の下をレーザーガンで撃つと、一角獣は勢いついたまま鹿島のまえで倒れた。
「今日のおかずだ。」
鹿島は後ろ足をポールと引きながら歩くと、一角獣は丸々太っているが余りにも軽くて、ポールも持ち上げているだけのようだ。
三人はキャンプ場に意気揚々で帰ると、シートの上には皮を剥がして、三枚に下ろした魚の身が山盛りに積んである。
「この大量の魚の身は?」
「アーマートと妹のマクリーが、川で捕らえて、身と骨だけ持ってきました。まだ、いけすには、三匹程います。」
川の方を見ると、水路を引いた水溜まりが見えて、二~三匹の魚が泳いでいる。
アーマートは一角獣を見つけると、ポールに魚を焼いていたトングを渡し、一角獣の腹を裂き内蔵をシートに包んだまま川の方へ駆け出して行くと、水溜まりにシートを投げ入れた。
マクリーは上手に、残った一角獣の皮と肉とを分けている。
帰って来たアーマートは、マクリーの剥した皮を再び水溜まりに投げ入れると、そのままにして帰って来た。
「何で、皮を川に残してきたの?」
「皮に残った肉と、毛の中にいる虫を食べてもらうためだよ。」
鹿島はまた、このやり取りもコーA.Iに知らせた。
網の上には魚の片身が載せられていて、身の上に野草と思われる根と葉が散りばめられている。
皆は皿を用意すると、魚の片身を皿に乗る位の大きさにカットして皿に盛り、コップの野草スープをも飲み始めた。
香りに誘われたのか、誰もが我先に相伴にあずかる状態になった。
スープは香りよく、身は生臭くないし、ほのかに甘味もあるが鹿島には少し塩味と胡椒が足りないようだが、しかしながら美味しいのか、。
「マクリー、美味しいよ。」
と、コップを持ち上げた。
「お姉ちゃんの作り方の方が、おいしいよ。」
とマクリーは、はにかみながら返してきた。
マクリーの足元に、ナイフがむき出しで置いてあるのに気が付いた鹿島は、ベルトから空鞘を外してマクリーに手渡した。
トーマスは先ほど、アーマートがナイフを手で持ち歩いているので、既に渡したと声をかけてきて、
「機器類置き場から、予備のナイフを出しておきます。」
と、付けくわえた。
鹿島はポットにチョコレートを置いてあるのを思い出してポットに行き、
「美味しかったから、今日のご褒美。」
マクリーとアーマートにチョコレートを一個ずつ渡した。
梱包材がよく分からなさそうな顔を兄妹はしているので、鹿島は銀紙を破いて中のチョコレートを取り出してあげると、
「食べてみて。」
と、勧めた。
「土の塊みたいだね。」
と言って、アーマートは遠慮気に口に運んだ。
アーマートは歯の先で少し齧ると、満面の笑顔でアーマートに向き直した。
そして、二人は草をかき分けながら、周り中を走り始めた。
喜んでいる二人を見ている鹿島は、こんなことで喜んでくれることに、子供を使用人みたいに便利がっている事に、後ろめたさを感じていた。
「アーマート、聞きたい事がある。」
と、声を掛けた。
二人は、口をもごもごさせながら鹿島の前に来た。
「アーマートとマクリーの家は、何処?」
「川の側を上に行った所。」
「ここから、どの位。」
「僕たち、一日掛かったよ」。
「アーマートとマクリーの住んでいる所には、猫亜人はどの位居るの?」
「いっぱい居るよ。」
「どうして、ここにいたの?」
「空の花畑から、花が落ちて来るのを見たよ。それでマクリーと、空から落ちてくる花を探しに来たの。」
「どんな花?」
「十個の白い大きな白い花と、桃色や橙色の花だったよ。でも花を見つけることはできなかったが、代わりにガイア様を見たよ。」
「どうして、石の中にいたの?」
「人種が近づいてきたから。」
「人種は、怖いの?」
「怖いよ、僕たちを捕まえて、奴隷にして、悪い事させるから。」
「私は人間だけど、怖くないの?」
「お兄ちゃんは、僕たちを守ろうとしてくれたし、(ガイア様に愛された人)だからいい人だよ、それに家族になったよ。」
「家に帰らなくていいの?」
「お姉ちゃんが迎えに来るまで、お兄ちゃんと居てもいいと言われたよ。」
「お父さんとお母さんは?」
「お父さんもお母さんも、病気で死んだよ。」
鹿島はまたコーA.Iに言語の学習の為、子供達との会話を報告した。
そして、川沿いの一番近い集落までの距離を尋ねたら、三・五キロメートルあると伝えてきた。
鹿島としては、アーマートとマクリーを姉の所へ送りたいが、しかしながらキャンプ場班と送り班で隊を分散させると、両班とも少人数過ぎるので、今の状況では無理がある。
鹿島はマーガレットに、残りの陸戦隊全員を降下させたいと伝えると、総司令官から相談があると言われた。
「陸戦隊全員での基地確保よりも、輸送艦の残り燃料を監視衛星の為に残したいので、
司令本部を直ぐに地上に移したいと思うのですが?」
総司令官マーガレットの作戦変更理由は、早く輸送艦定着地を確保したい希望であった。
生活基盤に必要な防護壁を造る工事を進める為の、工事用機器類だけを先に降下させる計画を前倒しにして、監視衛星は余裕の燃料もあまりないとのことで、輸送艦の早期着陸は燃料節約する為だと連絡された。
魔獣?や外敵に備えて、半径一キロ位の円形に幅二メートル木材を杭打ち工事を行い、早急に、輸送艦に必要な防護壁を造る。
杭打ち工事後、一辺三キロメートル四方の石の防護壁を造り、十万人の住民を確保する。
これが次の戦略担当マーガレット総司令官の作戦計画らしいので、提督代理の許可を頂きたいと鹿島は通知された。
鹿島は、戦略作戦は全て総司令官に譲渡して有る事と再度念を押して、防護壁工事作戦を許可した。
鹿島は、壮大なマーガレットの戦略に、自分には戦略的な眺望は、土台無理なようであると思い知らされた
輸送艦の降下着陸は、明日の夜、日が昇る二時間前と決めていたようで、
理由はアーマートとマクリーがポットを目撃した事で、空の花と誤解したことは、現地の人々の誤解と動揺を避ける為に、その時刻を選んだそうである。
通信がオープンなので、あちらこちらで歓声が聞かれた。
鹿島はアーマートと妹のマクリーを呼び、
「お姉さんに夢の中でお話が出来るのなら、アーマートと妹のマクリーを守ってあげるから暫くここに居て欲しい、とお兄さんに言われたと伝えてほしい。」
「寝る前にお姉さんと話がしたいと思うと出来るから、伝えるね。」
「ダメと言われたら、お兄さんが送ってくれるとも、言ってほしい」
鹿島はアーマートと、マクリーを送るつもりが、違う予定になり少し戸惑うが、送るのは延期した。
鹿島はバーベキュー場で声がするので行ってみると、四人がかりで網の上に一角獣の肉を丸ごと載せている。
「まだ食い足りないのか?」
「お兄さん、火を強くして!」
「まだ食べるの。」
「違うよ、焦がさないと、蟲が出るよ。明日食べる肉でしょう。」
アーマートは鹿島に理由を説明して、炭素固材の追加を求めた。
ビリーが炭素固材を持って来ると、アーマートは更に網の下へ炭素固材を入れていく。
一角獣の肉は炭が浮き出るぐらいに焼き、アーマートは
「シートにくるんでも、外に置いておくと野獣が来るよ。」
と言って、鹿島のポットへ運ぼうと言ったが、鹿島のポットの中は子供達とでは狭すぎるので、四人の抽選を提案した。
ビリーが手を挙げて、
「夜齧りたい。」と言ったので、肉の置き場問題はすんなりと解決した。
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