第21話 メイド服姿を見せられて……

………その時は意外なタイミングでやってきた。


 ポスター担当の山口が、コウのところにUSBを持ってきた。


「おい、コウ。俺今手が離せないから、ポスターのプリントやってくれないか」

「ああ、このUSBに入ってるんだ。いいよ」


 それを聞いていた真由がいった。


「あたしも一緒に見てみたい。いいよね」

「そうしてくれると助かるなあ。真由も一緒に見てくれた方が安心だ」

「よし一緒にパソコン室へ行こう」


 コウと真由は二人そろってパソコン室の鍵を借り、上の階にある部屋へ行った。コウたちの普通教室は三階に並んでいたが、四階にはパソコン室が四教室と特別教室がある。四階は下の階の喧騒とは打って変わって、静かだった。人影もほとんどなかった。

 パソコン室の一つへ入って行き、コウは自分のパスワードを入力し、パソコンを起動させた。USBを差し込みポスターの絵柄を画面上に表示した。メイド姿の女の子がポーズをとり微笑んでいる絵柄が現れた。背景にはストライプの壁紙デザインが描かれている。

 誰をモデルにしたわけでもなさそうだし、真由が身に着けているメイド服とはデザインも色も違う。自分の好きなイメージで描いたのだろう。


「うわーっ、上手ねえ!」

「プロ顔負けのイラストレーターが描いたみたい」

「山口、凄い趣味があったんだね。しょっちゅう描いてるだけの事はある」

「これならインパクトあるし、相当目立つ」

「さあ、プリントアウトしてみよう」

「よし!」


 コウは、プリンターにカーソルを合わせクリックした。プリンターが音を立て一枚の紙を吐き出した。真由が取りに行き絵を見た瞬間歓声を上げた。


「わあーっ、凄い! 綺麗!」


 うきうきと足早に駆け寄り見せた。


「いいねえ。最高!」


 コウは真由とハイタッチした。いつものブラウスだと体の線はほとんどわからないが、メイド服を着ていると、ウエストから上がぴったりと体にフィットして、胸からウエストまでのラインがくっきりと分かる。立っていると太もものあたりから下が丸見えだ。


――こんな立ち姿でうれしそうにこちらを見つめて……罪だよ……。


 真由は、パソコンの前に座っているコウの後ろへ回り、背中から抱き着いてきた。背中に胸のふくらみを押し付け、腕をコウの頭の後ろから延ばして抱きしめているのだ。パソコン室には、ラッキーなことに他の生徒はいなかった。他の部屋にいるのか、この時間たまたまプリンターを使う生徒がいないのかはわからなかったが……。


 真由が、コウの胸の前にある腕をほどいた。コウは丸椅子をくるりと回転させ、真由の方を向いた。丁度目の前に胸のふくらみがもろに見えた。


――こんなことって……。


 何もしないほうが無理だ。コウは両手を延ばして、まゆの腰を引き寄せてしまった。当然胸がコウの顔に当たった。真由はどう思っただろうか。気になって腕を離して顔を見た。とても可愛い顔をしていた。


「あんっ、コウったら胸が……」


 そんな声を出すなんて、反則だ……。もっとって言われてるようなもんじゃないか。


「真由ううう……」


 コウの目の前には二つのふくらみがあるのだ。


 もう一度抱きしめて、顔を押しつけると、柔らかく弾力があり跳ね返してくるようだ。真由の両手がコウの髪の毛を撫でている。


「ふ~ん。コウってカワイイ」


 うん? 可愛いのが好きなのか。胸の間に顔が深く埋まってしまっている。誰もいない、まだ大丈夫だ。ここは、扉が開かなければみんなの目からは完全な死角だ。


 コウは力を込めて真由の体を自分の方へ引き寄せた。真由のあまりの可愛さにどさくさに紛れて胸にキスをした。立ち上がりながら、胸から首筋に、最後には唇にキスした。


「あ、またキスしちゃった。こんなところで」


――そんなこと言われても、謝るわけにいかない。


 だって可愛かったからとか言えない。


――恥ずかしい……。


 だが勇気を出していってしまった。


「全部カワイイからキスしちゃった」

「見つかったらまずいよ」


 そうだ。突然誰かが入ってきたら見つかってしまう。コウは、真由の体を掴み座らせた。


「これで見えない」

「何をするの? ここでへんなことしないでよ」

「しない。ちょっとこれだけ」


 机と机の間に座り込んで、真由を今度は後ろから抱きしめながら、お腹から胸を撫でた。


「そんな、こと、ここで……はあ、ダメよお」


――なんて可愛い声なんだ! 


 まだ見つからない。首筋にキスをすると、髪の毛のいい香りがする。これはレモンの香りのシャンプーの匂い。


「いい匂い。レモンみたいな匂いがする。う~ん、美味しそうな匂い」

「くすぐったいなあ。もう終わりよ」


 ずっと座ってもいられない。


「ああ、残念だけど立とう」

「うん」


 立ち上がってドアの方を見たが、まだ物音ひとつしない。


「こっちに来て。ほら手を繋いで」

「今度は何をするの?」


 コウは、鍵のかかった方のドアの方に真由を引っ張っていった。くりくりとした目が、驚いたように丸くなっている。そんなにかわいい顔をしないでくれよ。あと一度だけ。


「こっち……」

「もう、どうしたのよそんなに慌てて」

「黙ってて」


 ドアに真由の体を押しつけて、真由のウエストに手を置いてぐっと自分の体の方に引き寄せた。


「もう、ダメだよ、コウ。どうしちゃったの?」

「いいから、あと少しだけ。俺ずっと真由の事が好きで……」


 コウは、真由の体を強く自分の体に密着させたまま、キュウっと唇を吸った。目の前がくらくらしてくる。真由の目は驚いたように、ぱっちりと開いたままだ。


「ふう、苦しい」


 コウはようやく真由から体を離した。やっと現実に戻った。これはまずい、大変なことをしていた。しかも下半身が……下半身が……


「ああ、真由俺ちょっとトイレに行ってくる」

「あら、どうしちゃったの。じゃあ、あたしポスター持っていくね!」

「ああ、先行ってて!」


 コウは慌ててトイレの個室に駆け込んだ。この階の男子トイレに人がいなかったのは幸いだった。下半身のほてりが鎮まるまで、真由との事を思い出しながら個室の中に籠もっていた。そして頭を抱えてため息をついていた。


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