第14話 チ○コよ、止まれ
【カスミver】
何かすごくいい匂いが漂ってきて、私は目覚めました。眠い目を擦りながら起きてみると、なにやらちゃぶ台の上に美味しそうな朝食が並んでます。
「あ、起きた?御飯食べるでしょ?」
綺麗に盛り付けられた料理に唖然としていると、モモ姉さんが食器を運んできて並べ始めます。いったいどういう風の吹き回しでしょうか?あのものぐさの塊みたいな人が料理するなんて。天変地異か何かの前触れでしょうか?とても不気味です。
そのモモ姉さんはすっぽんぽんにエプロンを付けただけの、いわゆる裸エプロンってヤツなんですけど、そんな姿にはすでに違和感を感じなくなってしまった自分が怖いです。てかむしろ、モモ姉さんの裸エプロンより、モモ姉さんの料理の方が違和感バリバリだったりするのですが。
「これモモ姉さんが作ったんですか?」
「うんまあ、なんか気がついたらさあ、作ってたんだよね」
なにか寝ぼけて作ったみたいに言ってますが、普段全く料理しない人がこんなちゃんとした料理作れるもんでしょうか?それとも小人の妖精さんがコッソリ現れたのでしょうか?
私は取り敢えずゴソゴソとベッドから出ます。と、そういえば、まだ私全裸のままでした。下着は洗って干して、まだ乾いてないのです。
「姉さん、服貸してくれません?私、まだ裸です」
「うーん、みんなまとめて洗っちゃったからなぁ。エプロンでいい?」
「いや、なんで二人して裸エプロンなんですか。絵面がおかしいです」
裸エプロンって、後ろから眺めてムラムラする事に趣きがあるのではないでしょうか。二人して裸エプロンでちゃぶ台囲んでたらそれはコントです。
「だって、今着れそーなの、エプロンしかないし」
「逆になんでエプロンだけあるんですか?家事とかしないクセに」
「さあ、なんでだろーね?」
疑問を疑問で返さないで欲しいです。
「いいです、エプロン着ます。すっぽんぽんよりはマシです」
私はごくシンプルな白いエプロンを身に着けました。正面から鏡を見ると可愛らしいエプロン姿なんですが、くるりと後ろを見ると背中からお尻まで丸見えです。まるでびんぼっちゃまのような姿に不覚にも笑ってしまいました。
「何笑ってんのよ?」
モモ姉さんが訝しげに覗き込んできます。その姿もやっぱり、びんぼっちゃまに見えてしまいます。
「ともだチ○コってヤツですね」
って言ったら
「はぁ?」
と、ドン引かれてしまいました。
◇
「これ、すっごく美味しいです」
料理は本当にどれもびっくりするほど美味しかったです。
「だよねー、あたしってやれば出来る子だったんだねー」
モモ姉さんは自分でもひどく驚いてるようでした。このまましっかり家事をやってくれたら私はもう来る必要ないかもしれません。それもちょっと寂しい事ですが。
そういう風な事をモモ姉さんに伝えると、
「いやいやいや、アンタはまだ来てもらわなくちゃいけないから」
ときっぱりそう言われました。
「そんなに来て欲しいですか?」
私はモモ姉さんにそんなに求められているのでしょうか?
「欲しいってか、来てくれないと困るんだよね」
モモ姉さんは心なしか熱く潤んだ目で私を見つめてきます。
えっ、それは彼女としてでしょうか?
それとも愛人?
ヒモ……はないですよね?
「それってどういう意味ですか?」
「だってアンタ、あたしの大事なパートナーだし?」
えっ、えっ、それって人生におけるパートナーって事ですかっ⁉
プロポーズですか?
なんかサラッと言いましたけどっ!け、結婚してくれって事ですか⁉
私、昨日まで全然ノーマルだったんですけど⁉
ってか今もノーマルだかなんだかわかんなくなっちゃいましたけどっ⁉
「そうそう、まず名前決めないとね?」
はあ⁉名前って赤ちゃんの名前ですか⁉
もう決めちゃうんですかっ⁉ってか女同士で赤ちゃん出来ないですけど。
あ、養子とか?体外受精とか?
「な、名前って、どんなのです⁉」
「ん?なに興奮してんのよ?うーん、名前ねぇ?アンタ、どんなのがいい?」
「わ、私ですか?私だったら、「愛」とか、「
「はあ?アンタどんなセンスしてんのよ?」
「え?普通だと思いますよ?だったらモモ姉さんはどんな名前がいいんです?」
この人もしかしてキラキラネームが好きなのでしょうか?それはちょっと困ります。
「そーだなぁ、あたし結構ホラーとか好きだから、『666』とか?」
「……」
モモ姉さんのネーミングが予想の斜め上過ぎて、思わず固まってしまいました。この人、愛しい我が子になんてキラキラネームを付けようとしてるんでしょうか。いや、もはやキラキラネームですらないです。
「だめです、絶対ダメです、そんなの!我が子の将来を考えてないんですか⁉」
「はあ?我が子、って。まあ我が子みたいなもんか。でも将来とかどーでも良くない?どうせすぐ飽きそーだしさ?」
飽きる⁉この人は子育てをたまごっちかなにかだと思ってるんでしょうか?
「いい加減にして下さい!子供が可哀想です。あなたにはとても任せておけません。私が育てます!」
「は?アンタいったい何の話してんの?」
「だから、私達の子供の話です」
「ごめん、ちょっと何言ってるかわからないんだけど?」
モモ姉さん、何か本気で困惑してるみたいです。話が噛み合いません。どこかでズレたみたいです。
「あの……、モモ姉さんは何の話してます?」
「だから、世界征服の為の組織の話」
「あ〜………………」
「なに?」
「……あるけど、使う?」
モモ姉さんがエプロンの下の方をペロンとめくります。
ドンっ!!
私、思わず手に持ってたフォークをちゃぶ台に突き立ててしまいました。
見事に刺さったフォークを握り締めつつ、呟きます。
「そういうボケはいいです」
目を剥いてたモモ姉さんがひどく印象的でした。
【モモ香ver】
意味わかんない。今、目の前のちゃぶ台にフォークが刺さってんだけど。
まあ、カスミがなんか勝手にパニックってブチ切れたのだけはわかった。つか、コイツたまにとんでもないキレ方するよね。さっきもベッドで巴投げ食らったしさ?取り敢えず、コイツ怒らすのは自滅がヤバイ。強くキレる理由を知ったわ。
「何回も言いましたよね?世界征服なんか協力しないって?」
カスミの目が奈良の大仏くらい座ってるよ、いや言ってて自分でも意味不だけどさ。
「いいじゃん、別に減るもんじゃないしさ?ほんの先っちょだけ体験してみるとか?」
「それ絶対先っちょだけじゃ済まないパターンですよね?てかしれっと下ネタ入れてこないで下さい!」
「絶対だめ?」
「絶対ダメです」
「……ふう、仕方ない。この手は使いたくなかったんだけどな〜」
「な、なんですかっ⁉」
アタシはスマホの画像をカスミに見せた。
「……‼⁉」
はっきり言ってAVのパッケージより卑猥なカスミの痴態のオンパレードがそこにあった。もうとてつもないどエロい画像集だ。
「なっ、なっなっ」
カスミは顔面引きつってワナワナしてる。
「動画もあるんだよね〜見る?」
ほんの触りだけ再生してやった。悩ましげなカスミの喘ぎ声が部屋中に響く。
うっ、これはスゴイ。マジで鼻血が出そうなくらいの猥褻物だわ。
と思ってたら、いきなり
ひゅんっ
耳元を高速でなにかが掠めていった。
皮膚がチリチリと焦げるような気がする。
目の前にだらりと両手を下げたノーガードの初号機みたいなカスミがいた。
「な、なんちゅうパンチ⁉」
もう完全に暴走モードに入ったカスミが見えないスピードの高速パンチを連続で繰り出してくる。
「た、たんま、たんま!落ち着けっ!現実から逃げちゃ駄目だ!」
「絶対ゆるしませんっ」
「ネットに流さないから。個人的に楽しむだけだから、ね?」
「信用できません!ってかそれ普通にキモいです!」
「だって、アタシの裸もバッチリ写ってるしさ?こんなのアップできないって」
「はぁ⁉そんなのいつ撮ったんですか⁉」
「昨日の夜に決まってるじゃん?」
あ、なんかガックリきてるよ。恨みのこもった目でこっち見てくるけど。
「私、もうお嫁に行けないです。責任とって下さい」
うーん、そんなすがるよーな目で見つめられても困るなぁ。でもやっぱり可愛いんだよね、コイツ。
「うん、考えとく」
何が正解だかわかんないんで、取り敢えずぎゅっと抱きしめた。
あ、ヤバイ、アタシもカスミも暴れたからエプロンめくり上がって、ほぼ裸状態だよ。うーん、ちょっとムラムラしてきちゃった。でもこのまま押し倒したらまた巴投げ食らわんか?
カスミが潤んだ目で見つめてくるしね。これくらいならいいかな?
アタシはカスミをアゴをクイッと上げ、自分の顔を近づけていく。
ゆっくり目を閉じるカスミ。
甘い吐息を感じるくらい接近した時、
『あーおっほん、我がパイはおっぱいであ……あれ?』
アタシのおっぱいから声が聞こえた。
「……こんのクソチクビ!」
思いっきりつまみあげる。
『ちっと早か……いででででででででっ』
いや、こっちもいろいろ痛いわ。
【友里奈ver】
昼休み、友達とお弁当を食べながらも、あたしは心ココにあらずだった。
小野さんと上城くんがお弁当持って仲良く出て行ったから。たぶん今頃、中庭辺りでお弁当食べてるんだろうなぁ。うぅ、あたしも混じりたい。でも今ノコノコ行ったら、完全にお邪魔虫だよね?
いったいどんな会話してるんだろ、あの二人。とても想像つかないよ。
もしかして、アーンとかしてないよね?いやいや、それじゃバカップルじゃん。さすがにそれはないか。
でも、あの可憐な小野さんが上城くんなんかと仲良くなっちゃうなんて、とても信じられない。だってあの上城くんだよ?
ケン○ッキーの前の人形に本気で挨拶しちゃうよーな人だよ?
学校前の小林さん家のフレンチブルドックと本気で掴み合いのケンカしちゃったよーな人だよ?もっとも、今じゃその犬と親友みたいになってるけどさ。
うーん、でもやっぱり小野さんに接近するのには、上城くんをうまく使うのが大事だよね。何か話掛けるいいネタないかなぁ?
「ねーねー聞いた?体操着荒らしの犯人、わかったらしいよ?」
仲間のしーちゃんがそう言いながら、あたしらのトコに来た。
体操着荒らし、そういえば最近、女子の体操着が失くなるって被害が相次いでいるらしい。
「ホントに?で、犯人誰だったの?」
仲間の1人が聞く。
「それがさ、三年のあの怖い人いるじゃん?金髪モヒカンの」
「えっ、あの人!?」
あの人、確か上城くんに纏わりついてた人じゃない?
「どうもそうらしいよ?今、生徒会の人が問い詰めてるみたい」
「へぇ、なんかいかにもやりそうだよね」
「だねー」
「怖いよねぇ」
みんな口々に毒づいてる。
これ、上城くん知ってるのかな?
もしかして、話掛けるネタに使える?
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