第13話 最下位、チ○コよ
【キタローver】
うぉう、そろそろ足が痺れてきたぜ。
あのバカいつまで待たせんだよ?せっかくこの俺が朝も早よから校門で待ってやってんのによ?
待ってんのは葉月さんの弟なんだけどよ、アイツから例のおっぱいちゃんの事聞き出してやろーと思ったんだわ。どうもアイツらの親戚らしいからよ、当然アイツも知ってんだろ?ただ、葉月さんには知られないよーにしねぇとな。また腹殴られるしよ?いや、腹殴られるぐらいじゃ、済まない感じだったよなぁ、昨日の様子だと。鬼か悪魔みたいな顔してたからなぁ。マジ怖さパネェわ。
あぁ、そーいや昨日ちょっと興奮してついウチのじいちゃんに「すっげー可愛い娘見つけた」ってメッセージ送っちまったよ。あのじいちゃん色ボケしてっからなぁ。変な食い付きしてなきゃいいけど。
おっ、やっと来たか。
「おーっ、待ってたぞ、弟」
手ぇ降ってやったら気がついたみたいだわ。
「おはよーキタローくん。じゃあね」
「いや、まてまてまてまて、またんかーい」
コイツ、なに素通りしよーとしてんだよ?俺が咄嗟に立ち上がれないのをいい事によ。コイツ、毎回お約束みたいにコレやってくんだよなーっ。ホント、フザケたヤツだわ。コントやってんじゃねーんだよ。
「何、キタローくん?あ、先に行っといていーよ?」
弟のやつ、連れを先に行かせてやっと止まったわ。
「おう、弟。まあ、座れや?」
って言ったら、明らかに変な顔してやがる。
「ここ邪魔だよ?移動しようよ?」
「そうか、うん」
まあ、確かに邪魔だわな。人が通りまくるしな、うん。
「……」
「……」
「……いや、何してんの?」
おいおい、んな呆れた顔するんじゃねぇよ。
つか、ヤンキー座りやっぱ、パネェわ。
【水希ver】
キタローくんに体育館裏に連れて来られたよ。なんか似合うなぁ、こーゆー場所。それに早速ヤンキー座りしてるけどさ、それいい加減疲れない?
「おう、お前の親戚のおっぱいちゃんだけどよ?」
「おっぱいちゃん?」
うわぁ、この人の辞書にセクハラなんて言葉ないんだろうなぁ。って最初から辞書なんて持たないだろうけど。
「とぼけんなよ?葉月さん似のおっぱいのデケェ娘いたろ?」
うーん、どこまで言うべきだろ?ねぇちゃんには何も言うなって口止めされてるけどさ、流石に完全拒否は無理があるよね?
「優月の事だよね?上城
「おう、ゆづきってのか?そんでどこ住んでんだ?」
「それが僕もねぇちゃんもよく知らないんだよね。遠い親戚らしくて。連絡先とわかんないし、そもそも付き合いがないから」
「あぁん、マジか?ウソじゃねぇだろーな?」
キタローくんがおでこにシワ寄せて凄んでくる。
「嘘じゃないって。ねぇちゃんに確認してくれてもいいよ?」
「い、いや、葉月さんに聞くまでもねぇよ」
ねぇちゃんの事出したら、途端に弱気になるキタローくん。これも計算の内だけどね。
「付き合いはないけどさ、一応親戚だからね?下手に手出したらねぇちゃんが黙ってないと思うよ?」
さっとキタローくんの顔が青くなった。
悪いけど、トドメも差しとかないとね。これで諦めてくれるといいんだけどなぁ?
けど、この人どんだけねぇちゃんの事が怖いんだろ?
つか、ねぇちゃんいったいこの人に何やらかしたんだろね?
◇
「おお水希、大丈夫だったか?
教室に入ると
「ああ、全然大丈夫だよ」
そう言えば、優月狙ってるのキタローくんだけじゃなくて、大窪と
あっそうだ。小野さんに昨日のお礼と今後の予定も聞いとこう。
小野さんは廊下側の真ん中辺りの席に座って本読んでた。相変わらずミステリアスな雰囲気で、周りの人達もチラチラ見て気になってる感じ。でも誰も話かけないんだよね。完成された美術作品みたいな雰囲気だもの、話かけずらいんだろうな。
「小野さん、おはよー」
近付いて声掛けたら、小野さんが本から顔を、上げて微笑んだ。
「おはよう、水希くん」
あれ、なんか教室がザワザワしてる気がする。みんな興味津々でチラ見してくる感じ?そっか、小野さんに気安く話掛けたの、たぶん僕が初めてだからかな。
「昨日ありがとうね。そんでさ、今日も昼は図書室にいるの?」
「今日は当番じゃないよ?だいたい1日置きだから」
小野さんがちょっと首をかしげながら言う。何やっても可愛いらしいんだよね、この人。
「あっそっか、言ってたね。今日はいないのかぁ」
僕が本気で残念そうにしてると、小野さんは妖しく笑いながら僕を見上げた。
「お弁当多めに作ってきたけど。一緒に食べる?」
「いいの?すっげーありがたいなー。じゃどこで食べよっか?」
「……屋上とか?」
うーん、屋上はキタローくんが昼寝してそうな気がする。
「中庭の方がいいんじゃないかな?」
って提案したら、小野さんも頷いた。
「いいよ」
「じゃ、また昼休みに」
「うん」
あれ?教室内ザワザワしてたのに、なんか静まり返ってる気がする。
と、思ってたらいきなり中八木に首をがっちり固められて、隅の方に連れて行かれた。
「ちょ、おま、いつの間に小野さんと仲良くなったんだよ?」
「なに抜け駆けしてんだよお前。みんな密かに小野さん狙ってたのに」
教室のカーテンの裏に引っ張り込まれて、大窪と中八木に小声で猛烈に抗議された。
はあ?お前ら、優月狙いじゃなかったの?
「痛いって、もう。別にそんなんじゃないから。だいたい小野さんは対象外みたいな事言ってたじゃん?」
「バッカ、お前。小野さんは見てるだけで癒やされる存在なんだよ」
「そう、手に届かないからいいんだよ。その辺の女とは訳が違うの」
なんだよ、その勝手な理屈?
「あのさあ、小野さんは普通の女の子なんだから、そんな扱いする方がどうかと思うよ?」
って言ったら、二人は顔を見合わせた。
「そりゃ俺らだって見てるだけより仲良くなりてぇよ?でもそれ難しいだろが?」
「まずお前が仲良くなって、俺らも仲間に入れてくれるってんなら、スゲぇ嬉しいけど」
ああなるほど。グループになった方が楽しそうだね。
「いいよ?グループ作るの面白そうだし」
そう言うと二人の目がめっちゃ輝きだした。
「マジ⁉小野さんと親しくなれるとか夢みたいじゃん⁉」
「じゃぁバランス的に女の子後二人欲しいな」
大窪のヤツ、なに調子こいて贅沢な事言ってんだよ?
「あの赤ジャージの娘は?あの娘入ったら最高すぎるんだけどな」
って中八木が言ったけど、うん、絶対無理だね、それ。
「あのさ、小野さんの意見とかもあるんだから、ちょっとずつ決めたらいいんじゃない?」
僕のその言葉にようやく二人は納得したみたいだ。
「そうだよな、うん。じゃぁまずお前が小野さんと上手くやってくれ。俺ら応援すっから」
と、大窪。
「あんま仲良くし過ぎんなよ?ちゃんと俺らの分も残しとけよ?」
と、中八木。ってなんだよ俺らの分て?
でもホントにそんなグループが出来たら楽しいだろーな。
小野さん、そういうのあんまり得意そうじゃない感じだけど、大丈夫かな?
チャイムが鳴ったんで席に付いたら、隣の席の平山さんが声掛けてきた。
「ねぇねぇ上城くんってさ、小野さんと仲いいんだね?」
ショートボブの平山さんはちょっと小さくて元気いっぱいの女の子なんだよね。イメージ的にはリスみたいな小動物系の雰囲気だったり。
「いいってゆーか、これから仲良くなる感じかなぁ?」
「きゃーっそーなの?」
あれ?平山さん、なんか顔赤くなってるけど、どういう風にとらえたんだろ?
【平山友理奈ver】
あたし、平山
そう、あの小野さんみたいな人に。
このクラスになって初めて小野さんみた時、この人みたいになりたいってめちゃくちゃ憧れた。スラッとした身体はちゃんと女性らしい丸みがあって、おっぱいも大きくて、肩まである黒髪はツヤツヤで、 いつも背をシャンと伸ばしてて。見た目だけじゃなくて雰囲気もそう。いつも落ち着いた感じてフワフワしてるトコがなくて、しっかり自分の世界を持ってるみたいで。
この人と友達になりたい、話掛けたいっていつも思うんだけど、なかなか勇気が出ないんだよね。それ、たぶん他の人達も思ってるはずなんだ。小野さんって、ミステリアスな雰囲気で、気軽に話掛けれる感じじゃないもの。
だから小野さんはいつも1人で読書してる事が多い。それがまためちゃくちゃ絵になってるから余計話掛けずらいのよね。
それがついさっき、上城くんが平気な顔で気軽に声掛けてたからびっくりしちゃった。それに上城くんと話てる時の小野さんの笑顔、あんなの初めて見たよ〜。あの人、あんな風に優しく笑うんだ?関係ないあたしがキュンキュンしちゃった。
上城くんってさ、中性的であんまり計算とかしない(できない)タイプだから(てかちょっとおバカ)、小野さんも受け入れ安いのかな?
あ〜、あたしも小野さんとあんな感じで喋りたいなぁ。上城くん経由で友達になったりできないかな?
上城くんともっと仲良くなったら自然に小野さんとも仲良くなれるんじゃない?あ、それすごくいいかも。
よし、じゃあまず上城くんに積極的に近付こう。
早速行動開始!
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