第7話 チ○コファイター脱出せよ



   【カスミver】


 

『あ、カスミ?ヤバいんだけど。なんか、今おっぱいが喋ってんだよね』



 モモ姉さんからそんなふざけた連絡受けたのは、とっても良く晴れた、気持ちいい平日の午後でした。


 あ、あたし、カスミって言います。某大学の2回生、花のJDです、宜しくお願いします。

 え、最近は「花の」って言わないんですか?言い回しが古い?すいません、あたし、流行り言葉に疎くて。


 実はですね、ごく最近まで、とある辺境の地でバイトしてたんです。

「ブラックサタンのうり」って、悪の秘密組織なんですけどね、そこで幹部やってました。

 え?、つめじゃないです、瓜です、うり。


 ああ、そりゃ誰でもなんで爪じゃなくて瓜なんだ?って思いますよね。


 あたしも気になったんで、面接の時に聞いてみたんですよ。

 そう、悪の組織にも面接ってあるんですね。もっとも、その時はまだ悪の組織だなんて知らなかったんですよ。そりゃそうでしょ?知ってたら受けませんよ、そんな怪しいトコ。でも、あたし、タウ○ワーク見て応募したんですよ?普通、タウン○ークに悪の組織が募集かけてるって思います?思わないですよね?


 で、話戻しますけど、面接の時に総統に聞いたんです。

「なんでツメじゃなくてうりなんですか?」って。

 そしたら総統が、

「はあ?ツメだけど?なに?ウリって」

 っておっしゃられて。あ、これ本気で間違っておられるなって思ったので、

「この字だと、ツメじゃなくてうりですよ?」

 って教えて差し上げたら、総統が1分ほど固まりまして、その後おもむろに


「よし、気がついたか。君合格だ。おめでとう」

 とか言って誤魔化しはじめましたので、あ、これ本気で恥ずかしいやつだな、と。あんなに目が泳いでた人、その時初めて見ました。相当焦ってたんでしょうね、総統だけに。あ、ごめんなさい。ちよっと言いたくなってしまいました。


 そんな感じでですね、強引に採用されちゃいまして、すぐにユニホーム渡されまして。それがボンテージって言うんですか?すっごくエロいヤツで、どこのSMクラブですかって感じのヤツを着ろと。すぐ着ろと。

 すっごい嫌だったんですけど、あたしどうも押しに弱くて。押し切られて結局着ちゃいました。そりゃもう、エロかったですね。なんか総統が、「それじゃ記念に写真撮るよ〜」とか言って撮ったヤツをインスタに上げちゃいまして、イイねがあっという間につきましたね。

 

 そんな感じで始めたバイトだったんですけど、ホント、ブラックでしたね。

そこは、名前の通りでした。だって、時給800円で散々こき使われましたから。悪の組織の女幹部が、ですよ?なんて世知辛い世の中なんでしょうか。


 まあ、結局、悪の組織は正義の戦隊に潰されちゃいましたけどね。それであたしは今、やっと女子大生っぽい生活にもどれた訳です。


 ああ、そうだ。モモ姉さんっていうのは、その戦隊のメンバーだった女の人です。いろいろあって、結構仲良くさせてもらってます。


 っていうか、モモ姉さんはいわゆる干物女?って属性の人で、あたしが支えてあげないと、ホント駄目駄目なんです。


 


 で、冒頭の通話に戻る訳ですが、おっぱいが喋る?

 はっきり言って意味わかりません。というか、酔っ払ってるのはいつもの事ですから、またですか?って感じです。股じゃないですよ?股は喋りません。

それを言うと、おっぱいも喋りませんが。


「モモ姉さん、どれくらい飲んでます?」


『ん?ビールと日本酒と焼酎を少々』


「三種類飲んでる時点で少々じゃないですよね?」


『あーん、酔っ払って幻覚見てるとか思ってる?この程度で酔う訳ないじゃん?』


「どの程度か知りませんけど、普通おっぱいは喋りません」

 

『だよねー。でも実際、喋ってるから困ってる』


「因みに、なんて言ってます?」


『うーん、お前は何ダラダラしてるんだ、とか、立ち上がれ、とか?』


「それ、モモ姉さんの心の声じゃないですか?自堕落な生活してるの、潜在的に駄目だって認識してるんですよ」


『そーゆーんじゃないんだけどなぁ。取り敢えず来てくんない?』


「まあ、行きますけど」


『あ、おつまみも買ってきてね、じゃ』


 全く、これじゃ、ブラック組織でバイトしてた頃と変わんないじゃないですか。





   【水希ver】



 ふう、なんとかコンビニに来れたよ。


 図書室で小野さんと別れた後、午後の授業が始まるまでトイレに籠って、授業が始まってすぐ教室に戻ってカバンと着替えゲット(僕らのクラスは体育館で体育中)、そのまま裏口から抜け出してコンビニに←今ココ


 お腹減ってるけど、お小遣い的におにぎり2個くらいが限度かなぁ?

 シャケとツナマヨのおにぎり持ってレジへ行こうとしたら、ほぼ同時にカゴにいろいろ詰めたお姉さんと鉢合わせした。僕の方が遠慮しよーかと思ったけど、どう見てもお姉さんの方が量多いし、「お先にどうぞ?」って言ってくれたから、「ありがとう」と返事して、先にレジ済ませたんだよね。


 外のベンチで早速食べ始めたら、ポコさん(仮)が、ひょいと出てきた。


「さっきの女性なんですが……」


「ん?丸メガネでポニテのお姉さん?」

 レジ譲ってくれたお姉さんだ。


「ワタシのセンサーにビビっときました」

 うわっ、表現ふるっ。昔のアイドル?


「なにそれ?」


「あれは脱いだら意外とすごいですね」

 うーん、このチ○コだんだん正体表して来たなあ。


「それ聞いて、僕にどうリアクションしろと?」


「ですよねー」




 おにぎり2個はあっという間に消えたけど、お腹はちょっとマシになったかな。

「それにしてもこんな場面、ねぇちゃんに知られたら大問題だよ」


「ああ、抜くなと言われて抜いちゃったし、それで学校サボってコンビニで買い食いしてますからねぇ」


「ポコさん(仮)、絶対ねぇちゃんに言っちゃだめだよ?」


「言わないですよ」


「ホントに絶対だよ?」


 なに?(。・_・。)←こんな顔してるけど、ホントにわかってんのかな?


 まあ、これだけ念を押したら大丈夫だよね?







    【葉月ver】



 ふわあ〜。午後の授業って、なんでこんなに眠いんだろ?

 いや、まあ、午前中も眠いんんだけどさ。こんなに眠いのはアイツのせいなんだよね。 

 昨日の事思い出したら、ちょっとニヤケちゃうんだけどさ。なんかね、いい夢見たよ、うん。別にヤバい事はしてないよ?夜中に多少イタズラはしたけどさ。まあ、その辺はゴニョゴニョ言っておく。決して深く追求しないよーに。まあ、実際途中で寝落ちしちゃったからなぁ。お楽しみはまだまだ続くからいいけどさ。


 あ、でっかいアクビしてたら、担任にめっちゃ睨まれてるよ。せめて大口開けずに噛み殺せって顔してるな。うーん、前の娘のブラが透けてる背中でもガン見して集中するか。

 それにしても、アイツちゃんと約束守ってるかなぁ?アイツ、馬鹿だからめっちゃ心配なんだよね。あれだけ約束したからさ、まさか学校で抜いたりしてないよね。ただアイツの場合、と取り違えてないかが不安だったりするんだけど。


 ん?スマホがブルってる。メッセージ来たらしい。

 誰だよ?こんな昼間に。


 メッセージアプリ開いたら、見慣れないアイコンがあった。


「ぶほっ」 

 それ見た瞬間、思わずむせてしまった。


「上城〜、いい加減にしろ」

 担任がめっちゃ冷めた目で見てるよ


「……スンマセン」

 とりあえず謝っといたけどさ、こんなの見たら誰だってむせるよ?


 だってその見慣れないアイコン、ω←んな感じのチ○コマークなんだもん。


 どこの馬鹿だよ?こんなアイコン使うヤツ?

 ひとり、ってか1匹思いあたるヤツがいるけどさ。








ω「ども、ワタシです」



       「はぁ?誰だよ?」葉



ω「ポコさん(仮)です」



       「自分でさん付け

        すんなよ」   葉

 

ω「すいません

  (´ω`)」         



       「誰のスマホから

        おくってんの?」葉



ω「ワタシWiFiと繋がり

 ますから」



       「はあ?チ○コの

        分際で生意気だな」葉



ω「報告です。抜いちゃい

  ました」



      「あの馬鹿なにやって

       んのヽ(`Д´)ノプンプン」葉



ω「ではそういう事で

  \(^o^)/」





 

「上城〜」


「はあ?ナニ⁉」

 

 あ、やべ、担任がすぐ横で見下ろしてた。


「チ○コがなんだって?」

 すっげえ冷ややかな目で見られてるなぁ。人って、こんなにも冷たい目つきできるんだね。


「ヤダなぁ、センセ〜。あたしがチ○コなんて口に出来る訳ないじゃないですか」


「今、しっかり言ったよな?」




くっ、あいつ等、帰ったら覚えてろ。









  【チ○コver】



 はい、送信OKです。

 いや~、頑張ったらWi-Fiでメッセージが送れるまでに成長しちゃいましたよ。我ながら大したもんです。もっとも、このコンビニのフリーWi-Fiがあればこそですけど。


「ポコさん(仮)、ねぇ、さっきから呼んでるんだけど?」


 あ、メッセージに集中してて、気付きませんでした。


「はい、なんですか、水希くん?」


「だからさ、ほんっとにねぇちゃんに言わないでねっていってんの。わかってる?」


「わかってますって、大丈夫です」


「なら安心だけどさ」


 勿論、充分心得てますよ。


 ってシステムでしょ?









  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る