弟のチ○コが喋り出したんだけどどうしたらいい?

シロクマKun

第1話 チ○コ大地に勃つ


『ねぇちゃん、大変なんだ。チ○コがヌケた』


 そう弟から着信があったのは、とある放課後の事だった。


 因みに弟くんは中二、あたしは高二の姉弟で、あたしにとってこの弟くんは見た目的にも性格的にも、可愛い愛玩動物的存在なんだけど、彼にはひとつ大きな問題があった。


 弟はちょっとバカだった。


 いや、姉の贔屓目があるから「ちょっと」とか言ってるけど、世間的にみたら大層バカなんだと思う。


そんな弟の武勇伝をひとつ。


 彼が幼稚園児だった頃、ご近所さんに、背中に立派な龍の彫物をしたちょっとコワい系のおっちゃんが住んでたんだけど、弟はその龍の彫物を初めて見た時、「うおおおおおおお」と叫びつつ何処かへ走って行き、暫くして戻って来たかと思ったら、何処から集めてきた七つのビー玉をおっちゃんに渡し、背中の龍に向かってパンパンと柏手を打ちながら

「ギャルのパンティおくれ」

と言い放った。

 その時、あたしも側にいて爆笑してたんだけど、周りの大人は顔が引き攣っていたのが忘れられない。

 因みに翌日、ウチのポストにどう見ても使用済みの、女もののパンツが入ってたんだけど、誰が入れたかは未だに不明だ。弟は大喜びで暫くその、ギャルにしてはバカでかいパンツをかぶって遊んでたけど、止めなかった周りもバカばっかだったのかもしれない。


 あと、弟の尊敬する人物は某バスケマンガの安西先生で、

「バスケと商売を両立させてるのが凄い」というのが、彼の口癖だ。

 弟はカー○ル・サン○ースと安西先生を本気で間違えていた。


 ◇


『ねぇちゃん、大変だ。チ○コがヌケた』


 思わずスマホ落としそうになったんだけど。

 ってかコイツ、一応うら若き乙女になんてことを言うんだ。


「アンタさあ、そんな事いちいち報告しなくていいから。それとも何?赤飯でも炊いて欲しいわけ?」


 まあ、愛すべき我が弟の成長は姉としても嬉しけれど。一歩間違えたらセクハラだよ?


『は?赤飯?なんで赤飯なんだよ?』


「そりゃアンタ、大人になったからでしょう?」


 中二で精通だと遅いのかな?

 でも「ヌケた」って言ったから、自ら発電したって事だよね?

 多分、精通したのはもっと前なんだろうね。

 ……つか、今思ったんだけど、女の子の初めては赤飯だけど、男の初めては白米でいいんじゃないの?色的に。


『違うよ、抜けたの!チ○コが』


「だから、抜いたんだよね?」

 うん、話が微妙に噛み合わない。


『抜くつもりなかったんだよ。さっきシャワー浴びてて、何気な〜くチ○コを逆手で持ったの。わかる?逆手?』

 

 えーと、男ってシャワー浴びながら何気なく握ったりするもんなの?

 それとも思春期だからかな?

 つか、なんだよ?逆手って。


「添えるように持つんじゃなくて、サムライが刀抜く時みたいな持ち方って事?」


『そう!まさにそれ!さすがねぇちゃん、例えが上手い。そこに痺れる憧れるぅ』


 弟はジョ○ョを人生のバイブルとしていた。


『そんで、あっこれ刀みたいに抜けるんじゃね?って思ったらホントに抜けたんだよ』


 ……ごめん、ちょっと何言ってるかわかんない。

 ってかなんでチ○コ抜けると思ったんだ、弟よ?


「とりあえずアンタ、一回寝なさい。起きた時にはチ○コ生えてるから」


『え、チ○コって抜いても生えるの?』


「世の男はみんな自分で抜いてるからね。生えるんじゃない?」

 抜く意味が違うけど。どうせコイツも何か大きく勘違いしてるだけだろうしね。


『そーなの?知らなかったんだけど。じゃあ、抜いたヤツはどうしたらいいの?』


「そんなの、テッシュに丸めてゴミ箱に捨てときなさいよ」


『え、捨てていいの?ってか、テッシュで包める大きさじゃないんだけど?』

 

 コイツ、どんだけ抜いたんだろ? よっぽど溜まってたんだね。

 ってなに言わせんのよ?


「捨てていいよ。逆に捨てなきゃどうすんのよ?」


『ゴミの日に出しちゃっていいの?チ○コだよ?』


「生ゴミの日でいいんじゃない?」

 チ○コチ○コ連発するから、なんかアタシまでゴミ置き場に並んでるチ○コ、想像しちゃったじゃない。うーん、イカくさそう。


『ちょっと待ってよ。チ○コさんが捨てないでくれって言ってるし』


 ……はあ?

 ごめん、やっぱりなに言ってるのかわからない。


「アンタ、ホントに頭大丈夫?変なウイルスもらった?」


『だからー、もう、変わるね』

そう弟が言うとスマホの向こうで、なにかガチャガチャやってる気配がした。


『どうも、はじめまして』

 スマホからあんまり聞いたことがない、やけに落ち着いた声が聞こえてきた。


「誰?水希みずきのトモダチ?」


 言い忘れてたけど弟の名前は上城水希うえしろ みずき

 アタシは上城葉月うえしろ はづきという。


『いえ、わたくし、水希くんのチ○コですが』


 ……あぁ、またバカが増えた。どこの世界にスマホで通話してくるチ○コがいるんだよ?


「ちょっと、いい加減にしてよね?あたしをからかって遊んでるわけ?」

 

 あたしとて、そんなに暇じゃないんだけど。今から陸上部の見学に行って、エースの桃香ちゃんのふくらはぎを拝ませてもらおうと思ってたのに。因みにわたし、ちょっと百合が入ってます。


『すいません。からかってる訳じゃないんですが。ワタシもついさっき自我が目覚めたばかりでして』


 はぁ?チ○コの癖に自我持ってどーすんだよ?普通、下半身に理性は存在しないんだよ。ドッキリにしても設定無理やりだな。


『電話変わった。とにかく早く帰ってきてよ、ねーちゃん。マジ、頼む』

  

 いつものほほんと悩みの欠片もない顔で暮らしてる弟にしては、結構テンパった声だったのが気になるっちゃあ、気になる。

  ああもう。仕方ない、桃香ちゃんのふくらはぎは明日のお楽しみにしよう。






 通話終わってから20分後くらいに我が家に到着した。

 ウチは築30年ほどの一軒家で、家族構成は母、あたし、弟の三人家族だ。

 父親はいない。なんでいないのかは良く知らない。かーさんが言わないから、あたし等も聞かないだけだし。

 そのかーさんはフリーカメラマンで、世界中を飛び回ってて、今も海外で仕事中だ。

 




「ただいまー。水希、入るよ?」


 そう声掛けながら、弟の部屋のドアを開ける。頼むから自家発電とかやってないでね、と思いながら。

 でも、部屋の中にはパンツを降ろした弟より、もっと衝撃的なものがいるとはこの時点で知る由もなかった。


 弟のベッドの上にいたもの、それは裸にバスタオル巻いただけの、どエロい少女だった。


 サラッサラのやや茶色掛かった髪に潤んだ瞳。

 ぷりっとした唇はしっとり濡れていて、驚くほどちっちゃな顔に凶悪サイズのオッパイという反則技。バスタオルから伸びる手足はスベスベで輝くような白さだった。

 

 うっ、こらあかん。


 思わず鼻血が出そうになった。

 なんというドストライク。

 あたしの理想とする形がそこにあった。


「ねぇちゃん!チ○コ抜けたんだよ」

 

 その少女がそう言いながらあたしに抱きついてきた。

 ムッチリとした柔らかい感触をもろに受ける。

 ヤバい。

 これは死ねる。

 


 って……は?


 少女の顔をマジマジと見て、卒倒しそうになった。


「アンタ……水希?」


「そーだよ。チ○コ抜けたら女の子になっちゃった。どーしよ?」


 我が弟のDカップはあろう胸の弾力を感じながら、あたしはへなへなとその場に座り込んだのだった。







 美少女はホントに我が弟の水希だった。


 いや、前々から我が弟ながら可愛らしい顔してるな、とは思ってたけど。

 まさか、ここまで美少女になるとはね。

 女としての嫉妬を感じるより、思わず一目惚れしちゃったってのは姉としてどうなんだろ?


「いいじゃん、チ○コ取れたって。ねぇちゃんは嬉しい」


 あ、ヤバい、本音でちゃった。


「ええ?僕困るんだけど。立ってオ○ッコできないとか、めんどくさいし」


 いや、面倒なの、それだけじゃないと思うけどね?我が妹よ。


「ってかさぁ、ホントにチ○コ取れちゃったの?今どんな感じになってる訳?」

  

 あたしがそう言うと突然、水希はあたしの前で仁王立ちになり、身体に巻いていたバスタオルをはだけて見せた。


「ぶはっ」


 床に座り込んだあたしの目の前に、神々しいまでの観音様が出現し、あたしは思わず拝みそうになった。

 一歩間違えたら変質者のような前をはだけた格好も、後光が差して見えたから不思議だ。

 

 水希は紛れもなく、女の子になっていた。


「どう?」

 水希が何の恥じらいもなく聞いてくる。

 今頃気付いたけど、声まで可愛らしい。


「か、隠して、早く。理性が飛ぶから」

 あたしは息も絶え絶えに言った。 

 弟に、つか妹に欲情するなんて、流石に自分でも引くわ。


「はぁはぁ……そう言えば、取れたチ○コどこに行ったの?」

 まさか、ホントにティッシュにくるんで捨てちゃった、なんて事ないよね?


「ああ、あそこにいるよ」

 と、水希が勉強机を指さした。


 恐る恐る、その勉強机の上を見ると……。


 いた。


 それは水希のスマホを一心不乱にいじっていた。

 そしてあたしの視線に気付いたのか、ソイツは顔(?)を上げた。

 

 ソイツと


 そう、目が合った、つまりソイツに目がついていたのだ。


「あ、先ほどはどーも」

 と、チ○コが言う。


 よく考えたら、すでにスマホ越しにコイツと会話してたんだっけ。


 でも……チ○コだよ?


フレンドリーに会話していいもんなの?

人間としての尊厳とかどうなんだろ。


「改めてはじめまして。自己紹介したいのですが、わたし、まだ名もなく、記憶もさだかではありませんので。なんせ、ついさっき、自我に目覚めたものですから」

 そうスラスラとしゃべるチ○コ。


「あんたチ○コだよね?その見た目はなんなの?」

 見た目で言うと、今はチ○コと言うより、肌色のちっちゃなアザラシ?といった風体だった。ちゃんとちっちゃな手もあるし、身体に対してはでかい足も付いている。

 あの足って位置的に陰嚢じゃね?

 つまり、亀の頭の部分に顔があって、胴体から手が生えてて、タマタマが足になった、そんな感じ。


「わたし、ある程度変態できますので。流石に男性性器のままの外見ですと、色々問題ありそうなのでね」


 ああ、色んな意味で変態なんだ? 

 

「でも、なんでアザラシっぽいのよ?」


「それは先ほど検索したんですが、この地域では男性性器をアザラシに置き換えて表現する技法があるようなので、はい」


 おぅ、まさかの「やる気○んまん」だったとは。

 そんなマニアックなマンガ、誰が知ってるんだよ?

 どうでもいいけど、チ○コの癖に硬いな、コイツのしゃべり方。いや、チ○コなんだから、むしろ硬くて結構なんだろうけどさ?


「あんたさあ、そのしゃべり方、どうにかならない訳?」

 そう言うと、水希も割り込んできた。


「あ、それ僕も思ってたんだ。君、ポコ○ンなんだから、ちゃんと語尾にポコとか、チンとか付けないと」


 あ、そっちかよ。

 弟は女体化してとびきりの外見を手に入れたけど、中身はやっぱり残念なままだった。

 だめだコイツ。早くなんとかしないと。

  でも、悲しいかな僕っ娘に激しく萌えるあたしがいた。


「えっと、こんな感じですかチン?」


「却下」

 即座にダメ出しする。


「えーっなんで?可愛いじゃん。キャラも立つし」


「チ○コキャラ立たせてどーすのよ?ってか、喋るチ○コって時点で充分過ぎるくらい勃ってるわ」


 いったい何の会話してるんだろ、あたし達。


「じゃあさ、名前決めてあげようよ?」


「まあ、そうだね。いちいち伏せ字にするの面倒だし」


「宜しくお願いします」

 と言いながらチ○コが中折する。あっ、お辞儀か。


「水希、アンタは何がいいと思う?」

 一応、振ってみる。


「やっぱりさ、チンさんでいいんじゃない?」


 ……水希のネーミングセンスに期待したあたしがバカだった。

 なに、その中華の鉄人みたいな名前?


「却下」


「えーっ、じゃあねぇちゃん何かある?」


 言われて少し考える。


「うーん、……ダンコン?」


「ナンダバカヤロー」

 すかさず、某レジェンド漫才師のようにツッコまれた。

 妹よ、頼むからその綺麗な顔でコマネチしないで欲しい。

 股を開くから、また丸見えだ。

 あ、鼻血が……。





 結局、いろえろあって、「ポコさん(仮)」に落ち着いた。

 

「ポコさん(仮)ですね。ありがとうございます。これから宜しくお願いします」


 ポコさん(仮)も気に入ったようだし?


「宜しくね、ポコさん(仮)」


「まあ、あんまり宜しくしたくないけど、宜しく」


 水希がポコさん(仮)をヒョイと掴んで手の上に乗せた。

 輝くような笑顔で、まるでペットのように接してるけど、元は自分のチ○コだって自覚してるんだろうか?


 あたしが考え込んでると、


「ねぇちゃん、ねぇちゃん、ちょっとこっち来て」


 鏡の前にいる水希に呼ばれた。


 仲良く並ぶ美人姉妹。

 そうとしか言えない、姿が鏡に写ってる。

 一応あたしも水希と血が繋がってるんだし、良く見れば雰囲気は似ていた。


(なんか、いいじゃん?)


 鏡の二人に見とれていると、突然水希が手に持ってたポコさん(仮)をあたしの頭の上に乗せた。




「ちょんまげ」



「あははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははっ


……チ○コ乗せんなっ!」



 思わず振り払うと、ポコさん(仮)がすっ飛んていき、壁に激突した。


「ふぎゃっ」


「ぎゃはははははははははははははははははははははははははっ」


 


天使の顔で下品に爆笑する水希。


 


 ああ、これは早急に教育が必要だ。





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